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本の紹介「雪」
「雪」中谷宇吉郎著、岩波文庫、1994年10月、ISBN978-4-00-311242-7、500円+税
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【西村寿雄 20150414】【公開用】
●「雪」中谷宇吉郎著、岩波文庫
寺田寅彦の愛弟子であった中谷宇吉郎は、生粋の物理学者であると同時にすぐれた随筆家でもあった。この本で著者は、今までの雪の研究を整理しながら、厳しい寒さの中で苦労して分類した雪の結晶について紹介し、雪の結晶を人工的に再現する方法を確立して雪の結晶学を科学研究に高めた成果も書いている。この本は、科学の本でありながら「雪と人生」といったことから入り、「雪の結晶は〈天から送られた手紙である〉」という言葉でしめくくるなど、随筆家としての片鱗ものぞかせている。読んでいて楽しい科学書である。中谷宇吉郎は他に「線香花火」、「卵の立つ話(立春の卵)」など多くの随筆も残している。
お薦め度:★★★★ 対象:雪の結晶学および中谷文学を学びたい人
【六車恭子 20150417】
●「雪」中谷宇吉郎著、岩波文庫
北国の人々が雪害に苦しむさまは今も昔も変わらない。その切実な記録からの導入である。しかしここにはその学びが科学的に検証され、天然雪の研究が人工雪の生成へと導かれたのだ。学問が人々の暮らしに反影される視座を失わない「ナカヤ・ダイヤグラム」は雪が「天から送られた手紙」であり、その読み解く序説を披瀝することで、大いなる意思を残してくれたようだ。
お薦め度:★★★★ 対象:小さな文庫本から大いなる意思を読み取りたい人に
【森住奈穂 20150416】
●「雪」中谷宇吉郎著、岩波文庫
雪の結晶といえば、子どものころ、きれいな六角の花の形を探しては息を吹きかけて、一瞬に消してまわっていたっけ。
そんなわたしにとって、花の形以外の結晶は「できそこない」でしかなかったけれど、雪博士の中谷にとっては「雪の結晶は天から送られた手紙」。その暗号を読み解くべく、気象条件でさまざまに変わる形を観察し、分類し、人工的に再現して、結晶の生成条件を明らかにするまでを丁寧な語り口で描く。1938年、岩波新書創刊時の一冊だった本書。およそ80年を経ても、科学への一途な情熱は眩しい
。
お薦め度:★★★ 対象:きらきらしたいひと。探求するひと
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