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本の紹介「ユーラシア動物紀行」
「ユーラシア動物紀行」増田隆一著、岩波新書、2019年1月、ISBN978-4-00-431757-9、960円+税
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【萩野哲 20190410】【公開用】
●「ユーラシア動物紀行」増田隆一著、岩波新書
“動物地理学って何ですか?”と自分の専門を尋ねられた著者の回答書ともいえる。第1章にその研究手法の概要がまとめてあり、第2〜8章に著者がかかわった具体的な事例が各地を回った紀行文として語られ、そして終章に、動物地理学の目的、視点(マクロとミクロ)、今までの技術に加えて新手法の導入、国際&学際交流の重要性、種の保全への貢献などがまとめられている。出てくる動物群はバッタから哺乳類にわたっており、個々の動物をより詳しく知りたい人には少し物足りないであろうが、小さな本では限界があるだろう。動物地理学の入門書としてはコンパクトで図も多いので良いと思うが、より深く知りたい人のために、本書の引用文献のみならずより深く基本文献のリストも挙げてあればよかったと思う。
お薦め度:★★★ 対象:動物地理学が何か知りたい人
【森住奈穂 20190225】【公開用】
●「ユーラシア動物紀行」増田隆一著、岩波新書
ヨーロッパからアジアにまたがる広大なユーラシア地域に生息する動物の進化や多様性、起源地や渡来の経路を探る研究を行っているという著者。さぞかし血湧き肉躍る冒険なのかと思いきや、フィールド調査よりも現地の研究機関や街の紹介が多い印象。化石や剥製も対象になるから?何より、私の大好きなバイカルアザラシが骨しか出てこない!聞きなれない地名(バルグジンとか)にはロマンが漂うけれど、マトリョーシュカは可愛いけれど、登場する動物たちは散発的で集中して読むのが難しかった。
お薦め度:★★ 対象:動物地理学について知りたいひと
【西本由佳 20190421】
●「ユーラシア動物紀行」増田隆一著、岩波新書
著者はフィンランド、ロシア、日本に生息する生物たちの過去の移動や現在の分布について研究している。各地の自然や食べ物、鉄道や大学の様子などについて紹介する紀行文のなかに、骨の形態や遺伝子分析などの成果の話が混ざる。ヒグマはユーラシアと北米であわせて8つの系統があるというが、北海道にはそのうち3つが分布するという。広大な大陸で8つのものが、それに比べると狭い北海道で3つも分かれているというのは驚きだった。系統の分布の話では、シマフクロウも取り上げている。いろんな系統のなかで遺伝子の多様性が低下すると絶滅の危機が迫るという。動物地理ではそういった分布と遺伝子から、生物の保全に寄与することのできる研究がなされている。
お薦め度:★★★ 対象:生きものたちの移動の歴史について知りたい人
【和田岳 20190423】
●「ユーラシア動物紀行」増田隆一著、岩波新書
ユーラシア大陸に分布する哺乳類を中心に、動物系統地理学的研究をしている著者が、西はフィンランドから、ロシアを横切って、北海道まで、西から東に向かって経験談などを書き綴る。アナグマやヒグマの系統の話は面白いけど、ちらっと出てくるだけ。ユーラシア大陸の哺乳類相の歴史を熱く語ってる訳でもない。動物の画像よりも、名所や、フィンランドやロシアでお世話になった研究者の画像が多め。なぜか明治初期に書かれた榎本武揚の『シベリア紀行』などが随所に引用される。かと思うと、突然生物学的な解説が挿入される。思いつくままに書いたようにしか読めない。面白げな情報もたくさんあるのに、残念ながら楽しく読めない。
お薦め度:★ 対象:フィンランドとロシアのことを少し知りたい人
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