友の会読書サークルBooks

本の紹介「ゾンビ・パラサイト」

「ゾンビ・パラサイト ホストを操る寄生生物」小澤祥司著、岩波科学ライブラリー、2016年12月、ISBN978-4-00-029656-4、1200円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【森住奈穂 20170616】【公開用】
●「ゾンビ・パラサイト」小澤祥司著、岩波科学ライブラリー

 パラサイトとは、他の生物の体内または体表を生活の場とする生き物である。そんなパラサイトの能力の1つが、ホストを操りゾンビ化する「パラサイト・マニピュレーション」。パラサイトが宿主を乗り換えるために、現在暮らしている中間宿主の行動を操るのだ。本書ではそうしたゾンビ・パラサイトたちが続々と紹介される。ホストとなるのは昆虫であることが多い。が、私たち人間だって。知らないうちに。ねぇ?ネコが感染源のトキソプラズマは、全人類の3割に寄生しているらしい。果たしてトキソプラズマは、ゾンビ・パラサイトなのか?いまだ知られていないパラサイトだって大勢いるかも。今日のランチをどうするか、決めたのは自分じゃないかも知れない!

 お薦め度:★★★  対象:自信を持って決断しているひと、または、なかなか決断できぬひと


【萩野哲 20170609】
●「ゾンビ・パラサイト」小澤祥司著、岩波科学ライブラリー

 寄生生物は栄養やエネルギーを宿主に依存しているのみならず、宿主の行動を思うがままに操るゾンビのようなヤツもいる。その代表がカマキリなどに寄生するハリガネムシで、最後にカマキリが水に飛び込むよう操っている。だが、これは特殊な例ではなく、寄生生物全般に及ぶ能力だったらどうだろうか? 実際に著者は寄生生物が宿主を操るいくつかの例を挙げ、その後人類に係るもしか?を紹介する。ネコを終末宿主とするトキソプラズマは、ネコがヒトにかわいがられた結果、ヒトの約3割に寄生していると見積もられており、その感染は統合失調症、自己攻撃性などとの関連を疑われているらしい。著者はもともとイヌ派であり、ネコはきらいだったが、最近著者の自宅の庭に出入りするネコのせいでネコを苦手に感じなくなってきたらしいが、それも寄生虫の影響だったらどうだろう? 今後ますます寄生虫から目が離せない。

 お薦め度:★★★  対象:寄生虫の驚くべき能力を知りたい人


【和田岳 20170430】
●「ゾンビ・パラサイト」小澤祥司著、岩波科学ライブラリー

 雑誌「科学」に「パラサイトの惑星」として連載したもののうち、パラサイト・マニピュレ−ションにまつわる4回分に加筆した一冊。
 第1章は、麦角菌や冬虫夏草の話からゾンビアリの最後の一噛みの紹介。第2章はハリガネムシの紹介から、カマドウマやカマキリの入水自殺。そしてカワムツの行動を変える吸虫の話。第3章は、セイヨウミツバチの群れ崩壊現象の原因の話からの、ゾンビ蠅。および捕食寄生の紹介からのコマユバチやクモヒメバチの寄主コントロールの話。第5章は、ネコ科動物とトキソプラズマの話を紹介しつつ、トキソプラズマに感染したネズミがネコを恐れなくなる話。そしてトキソプラズマは人間も操る?
 パラサイト・マニピュレ−ションという聞き慣れない言葉が、読み終われば馴染みの言葉に。冬虫夏草やミツバチの群れ崩壊現象についての説明もよくまとまっていて勉強になる。

 お薦め度:★★★★  対象:ゾンビやパラサイトという言葉が気になった人に


[トップページ][本の紹介][会合の記録]