ゾウの寿命とネズミの寿命は異なる。けれど、心拍数や呼吸数はどんな大きさであれ一定。大きな動物には大きな動物の、小さな動物には小さな動物の、それぞれのペースに合わせた時を刻んでいる。
進化が進むと大きくなる傾向があるが、大きいことは本当にいいことなのか?サイズはエネルギー代謝や食物摂取量、行動範囲などと比率関係を持つ。人間の「サイズ」はどんなものなのだろうか。
小さな生物たちと大きな生物たちの持つ、それぞれの互いに異なった巧妙な仕組み。早く動く動物、動かない動物、ちょっとだけ動く動物のそれぞれの洗練されたデザイン。
サイズを通して生物を知る。彼らの世界を知る。
式と数字が出てきます。数学アレルギーさんはちょっと辛いかも。でも、目からウロコはいっぱいです。ヒトデの生き方が偉大だ、なんて思いもしませんでした。世界観が広がります。
「心臓拍動を時計として考えるならば、ゾウとネズミは全く同じだけ生きて死ぬ」というのは驚きであった。標準代謝量は体重の0.751乗に比例する。昆虫のクチクラの外骨格は、軽くて乾燥に強い昆虫の成功の秘密である。気管、呼吸器、脱皮など、昆虫の生理に注意を引かれた。気管と脱皮の困難さが、昆虫のサイズを制限している。昆虫が、幼虫の間は草を多量に食べ、飛ぶようになったら蜜や樹液を食べるのは賢い生き方である。
動物も植物も、長い間の進化で、それぞれに、賢く生きている。
人間は、これから生物の生き方に学べることがあるのだろうか?人間は、サイズにふさわしい生き方から、その制限のハードルを乗り越えるのに、外からエネルギーその他多くの手段を利用しているが。
お薦め度:★★★ 対象:高校生以上
副題の「サイズの生物学」の通り、動物の大きさが違えば、何が違い何が同じなのかを、いろいろと紹介してくれる。
サイズを切り口に、形態学・生理学・生態学を横断しての議論は、とても興味深い。残念ながら、後半はサイズという切り口がややもすれば不明確になり、さまざまな生物のデザインを説明する方向になっていく。最後の2章にいたっては、サイズはほとんど関係してこない。
大きなゾウは寿命が長く、心臓の鼓動のスピードは遅い。小さなネズミは、寿命が短く、心臓の鼓動のスピードは遅い。大きさによってこんな違いはあるけれど、一生の間の心臓の鼓動の数はほぼ同じ。これが、タイトルの由来となっていて、インパクトがある。つかみとしては完璧。でも最後まで読むのは辛いかもしれない。
お薦め度:★★ 対象:何となく生物学に興味のある人、高校生以上