【和田岳 20171019】
●「ぼくの村がゾウに襲われるわけ。」岩井雪乃著、合同出版
たいていの人は、テレビでアフリカのサバンナに群れる大型哺乳類の画像をみたことがあるだろう。動物好きなら、セレンゲティやンゴロンゴロという場所は憧れの地。一度は動物を見に行ってみたいと思ったりもするだろう。しかしこうした野生の王国の影で、苦しんでいる人たちがいることは、日本ではほとんど知られていない。
アフリカの野生動物を密猟者から守るために、勇んでアフリカに乗り込んだ若き研究者の卵は、思いもよらなかった事実に直面して、やがて地元の人と野生動物との共存について考えるようになる。
密猟者の村で実際に起きていることは何か。野生の王国は、どのようにつくられたのか。そして、私たちにできることは何か。いろんな事を考えさせられる。
これは、けっしてアフリカだけの出来事ではない。同様のことは北アメリカやオーストラリアでも起きている。人と自然との持続的な暮らしが失われた際に生じる問題という意味では、近年、日本で増加しているシカやサル等による獣害にも通じる。
この本の最後、第8章「わたしたちにできること」には、具体的な提案がいくつかあげられている。何ができるか、よく考えてみたい。
お薦め度:★★★★ 対象:テレビでアフリカのサバンナの動物の映像を見たことがある人