ブナの木と菌類の不思議で絶妙なバランス関係にはびっくりさせられます。これまでも菌類が、森の中で、何らかの役割を果たしているであろうという事は漠然と感じていましたが、この本では、寄生菌、共生菌、内生菌、外生菌根菌というように1つ1つの菌の役割を研究結果をふまえて、解かり易く紹介してくれてます。又、ブナアオシャチホコのさなぎでサナギタケを釣り出すという話も、とても楽しくて、研究って面白いな、という気にさせます。各章の終わりの用語解説も丁寧で親切です。菌類の入門書として超おすすめ。生物の多様性に興味のある人にも楽しんでもらえそう。菌に興味のない人にも、こういう世界もあるのだと知ってもらいたいですね。
お薦め度:★★★★ 対象:中学生以上どなたでも
生態系は生物間相互の複雑かつ精巧なネットワークの上になりたっている。地球上に150万種もの菌類が棲息しているらしいが、いまだにその5%、6900種が知られているにすぎない。この書は未だに未踏ともいえる分野の研究者が後に続く情熱ある研究者を待ち望む篤いメッセージが感じられる。
極相林として知られるブナ林も100年〜300年で森全体が世代交代するらしい。森の苗床ともいわれるギャップ形成に一本の木には「病気」を齎す腐朽菌だが森全体から見れば「健全な営み」にもどす「共生的な」功労者なのだ。森林の大地を緊密に繋いでいるのも外生菌根菌の菌糸のネットワークの働きによるのだ。小さな菌類がリン酸化合物の運び屋であったり、時に異常発生する寄生者を駆逐するのももっと小さな寄生者である菌類の活躍によるらしい。日々林床や樹洞で循環の営みを続ける小さな菌類の大きな働きの解明は興味が尽きないようだ。
お薦め度:★★ 対象:森林や菌類に関心があり、そこに情熱を注ぎたい人に
最新の菌類生態学のテーマが紹介される本。マツの葉の中に菌類がいるとか、林の地面の下には菌根菌のネットワークが張り巡らされているとか、サナギタケがブナアオシャチホコの個体数をコントロールするとか、おもしろい話題がもりだくさん。
学校でならったところによれば、菌類は分解者。落ち葉や死体を分解して、物質循環に貢献。いやいや菌類の働きはそれだけじゃない!と生態学の立場から、ブナ林をはじめとする森林生態系での菌類の役割を主張。ただし、研究はまだまだこれからで、推測が語られているだけの部分も多い。この本を読んで、興味を持ったらぜひ研究者になってね、ということらしい。
お薦め度:★★ 対象:キノコ狩りだけではなく菌類の生態に多少でも興味のある人、あるいは群集生態学に興味のある人