【森住奈穂 20171020】
●「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」川上和人著、新潮社
ポロンポロンポロン。テンポのよい文章は、まさにそんな感じ。ウソとマコトが入り乱れ、こちらもフンフンフ〜ン、と鼻歌まじりに楽しく読める。内容は、著者の研究フィールドである「島」をめぐる進化の話や外来種の話、鳥類学者の生態や脳内妄想。わたしのお気に入りは、無人島である南硫黄島での調査の章。
有人島の父島から300km以上の海を漁船で超え、最後の100mは泳いで上陸。崖下(唯一の平坦地)でのキャンプのため、寝る時もヘルメット。夜間調査では無数の小バエが呼吸とともに口と鼻から侵入。鳥を解剖した手を洗おうと海に手をひたすと、石の隙間から飛び出してくるエイリアンの口吻(小型ウツボ)。命をかけた調査から無事帰還し、テレビに映った美しい南硫黄島に吃驚仰天、「これは私の知る島じゃない」。体験に勝るものなし。そして、他人の苦労話を自らは安全な場所に置いた上で読む楽しさ(by『菌世界紀行』)!至福。
お薦め度:★★★ 対象:鳥類学者の友人がいない人、いる人