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本の紹介「超火山〈槍・穂高〉」
「超火山〈槍・穂高〉 地質探偵ハラヤマ/北アルプス誕生の謎を解く」原山智・山本明著、山と渓谷社、2003年6月、ISBN4-635-20101-5、1500円+税
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【西村寿雄 20031220】
●「超火山〈槍・穂高〉」原山智・山本明著、山と渓谷社
最近の北アルプス地学研究の一端を楽しく知ることが出来る。地質探偵こと原山智研究者とふっかけ役のワトソンこと山本明ライターと対話風に話が進んでいくので、ずいぶんと読みやすい。しかも、現地を登山しながらの話になっているので登山気分で読んでいける。
最初に、「穂高が火山だった」とハラヤマ探偵が語り出す。どうして「火口もない穂高が火山だった」と言えるのか、この後二人の謎解きと証拠固めが続く。北アルプス創生の物語など日本列島の誕生とも関連した壮大な地球のドラマを読む思いである。
地質学の素養のある人で山の好きな人なら興味深く読める。地学好きの高校生などにお薦め。この原山氏は北アルプス登頂歴1500回と言う。
お薦め度:★★★ 対象:地学好きの高校生以上
【魚住敏治 20031225】
●「超火山〈槍・穂高〉」原山智・山本明著、山と渓谷社
『話』は、二人の山好きが登山の途中で、ある時は酒場でと、軽妙な会話文で語られていきます。その内容は口調に反比例して、かなりハードなものです。
でも『カルデラ火山』をキーワードとし、地図を片手に、想像力を働かせて読み進めていけば、地球の気候さえも変えてしまったかもしれない槍・穂高を中心とした北アルプスの壮絶な火山活動、傾動現象、その後の浸食の様子をながめることが出来るかもしれません。
お薦め度:★★★ 対象:岩石名を聞いてある程度イメージ出来る方
【瀧端真理子 20031107】
●「超火山〈槍・穂高〉」原山智・山本明著、山と渓谷社
この20年で激的に進歩した北アルプスの地質学。その中心をになった原山教授が地質探偵ハラヤマに扮し、ライター探偵団員山本氏を道連れにアルプスの山々に挑む。と言っても、この2人は高校時代からの山仲間。オヤジギャグと温泉ネタを散りばめながら、むつかしい岩や地層の話を繰り広げる。槍・穂高の正体が「3000mの深さの巨大穴に溜まった火山灰の溶けて固まったヤツ」だの、黒部川花崗岩の中の「玄武岩マグマ発泡浮上説」など、山たちの誕生の秘密が明かされていく。
ハラヤマ探偵による特別講義には思わず息を呑む。20kgの岩石資料を背負った若き日の原山氏は、笠ガ岳尾根で冷たい雨風に急速に体温を奪われていく・・・・。
北アルプスを舞台に繰り広げられる地学講義は、憂き世のうさを嘆くあなたに、天上の夢を運んでくれるだろう。
お薦め度:★★★ 対象:男の友情を味わいたい人に
【寺島久雄 20031220】
●「超火山〈槍・穂高〉」原山智・山本明著、山と渓谷社
北アルプスの山々がマグマの上にポッカリと浮いているという驚くことなどが、次々と記述された本である。
氷河が穂高、槍などの山々をけずり、現在の山容を作り上げている。又、薬師岳、笠ヶ岳が6500万年前、日本列島が大陸に接続していた時に大陸で生まれた山である。と、7ステージもある北アルプスの花崗岩生成史を次々に語り口調で書き上げている。
お薦め度:★★★★ 対象:火山、石の好きな人に
【中条武司 20031029】
●「超火山〈槍・穂高〉」原山智・山本明著、山と渓谷社
地質探偵(=地質学者)原山氏が友人の山本氏と北アルプスを歩きながら、時には真面目に、時にはふざけながら(?)、この日本有数の険しい山々の生い立ちを語っていく。槍・穂高が世界有数のカルデラ火山であったこと、世界一新しい花こう岩が北アルプスにあること、地質と北アルプスの地形が密接に関わってることなどが、二人の掛け合いを通じてわかりやすく語られていく。
しかし、気になる点が2つ。一つはタイトルにある「火山」という言葉。これは正しくなくて、槍・穂高は“元”火山ではあるけど今は火山ではないので、このような言葉を使っていいのだろうかという点。もう一つは男性の視点で書かれている箇所があって、ちょっと女性に失礼な書き方ではないかと思う点。
とはいえ、これから山を登るとき、ちょっといつもと視点を変えて足下の石を見てみようと思わせる一冊。
お薦め度:★★★ 対象:登山をする人、特に北アルプスに登る人
【西村寿雄 20031220】
●「超火山〈槍・穂高〉」原山智・山本明著、山と渓谷社
内容的には,近年明らかにされてきた北アルプスの地質学的な解説書である。他の地質学の本とは違って、地質探偵こと原山智研究者とふっかけ役のワトソンこと山本明ライターと対話風に話が進んでいくので、ずいぶんと読みやすく構成されている。しかも,現地を登山しながらの話になっているので臨場感があり、登山家にも興味が持てる内容ではある。
第1部〈「天空にそびえる巨大カルデラ伝説」を追う〉STAGE1で、いきなり「穂高が火山だった」とハラヤマ探偵が語り出す。どうして「火口もない穂高が火山だった」と言えるのかとワトソン君が異議を唱える。この後二人の謎解きが続く。ハラヤマ探偵は「穂高は厚さ1,500mもの火山灰を降らせた世界でも有数の超火山だった」という。現地の石を見ながら証拠が語られていく。そういえば北穂から見える景色もカルデラに見える。まさに意識ここに無ければ「見れども見えず」の光景である。
STAGE 2 では、その後の北アルプス創生の物語に続く。ここにきて、謎の岩体が出現する。ここの火山性の岩の上に花崗岩や海底砂岩、チャート、結晶片岩などの〈れき岩〉層が出ていたり、日本列島の付加帯の片鱗が見え隠れする。
STAGE 3では、〈槍穂高火山〉を作り上げた「犯人」を追う。その「犯人」は、約140万年前に生成した花崗岩、花崗閃緑岩のマグマだという。難しい話が続くが「失われた梓川の清流物語」でほっと一息付ける。
このあと、第2部〈北アルプス地質迷宮紀行〉では黒部や立山連峰の謎解き、第3部〈名山たちの「出生の秘密」〉では、白馬三山、唐松岳などの名山の解説がある。
地質学の素養のある人で山の好きな人なら興味深く読める。語っている内容はかなり専門的で地学好きの高校生以上の書である。
原山氏は北アルプスを通算で1500回は調査目的で登ったという。通常の体力気力ではできない研究と思う。その迫力には圧倒される。もう少し若ければこの本を片手に北アルプスの山々を再登頂してみたい。
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