【萩野哲 20151224】
●「クモを利用する策士、クモヒメバチ」高須賀圭三著、東海大学出版部
寄生蜂は植物食性のハチの中なら偶然生じたとされており、その後の進化過程で膨大な種を擁する群となった。本書はそれらの1群であるヒメバチの中でも、クモという危険な動物を寄主として選択したクモヒメバチの仲間の研究課程をまとめたものである。クモヒメバチは、同じくクモを狩るベッコウバチと違って、華奢な体つきであり、いきなりクモを襲うことなく、例えば餌を装うなどの戦術をとる必要があるのが特徴である。また、クモの側から見ると、彼らの網は餌をとる一面のみならず、これらの危険な敵であるハチから身を守る面もあることが、本書を読んであらためて理解できた。研究課程を著した本で興味を引くのは、様々な観察上の工夫であると思う。本書でも、野外で観察機会が限られているクモの屋内への導入や、クモの糸の強度を測定する方法など、それらの工夫は随所に示されている。
お薦め度:★★★ 対象:
生物の研究過程に興味がある人