日本自然保護協会の活動を中心に、日本の自然保護の歴史を、実際に現地に足を運んで書いた労作。協会誕生のいきさつ、山と森林の自然保護、川の自然保護、海の自然保護、里山保全、と続いて最後はお約束の自然観察会とエコツーリズムへの模索が描かれる。法律関係の情報が詳しく、地図データも充実しているので、参考書として利用できる。個々の事例は
あっさりしか扱われず、物足りなくはあるが、新書サイズにこれだけの情報を盛り込んだ手腕は見事なもの。気の毒なのは、けなされっぱなしの林野庁を
始めとするお役所筋。この本を読むと、気になる点をもっと調べてみたくなる、そんな1冊だ。
お薦め度:★★ 対象:自然保護関係の資料が必要な人
日本の自然破壊について様々なルポを行ってきた著者が日本の自然破壊について俯瞰的に語った一冊です。
内容としては、日本に環境保護という言葉が定着するまでを扱った一章。それぞれ、山、河、海を扱った二〜四章。そして、アメリカの先例や屋久島の先駆状況を使って語られる今後についての五章というように書かれています。いかに日本の自然が護られて”こなかったか”が蕩々と語られ、人々が何をし、何故そうなったのかが大変よく分かります。しかし、それと共に、行政としての自然の捉え方と、保護側の自然の捉え方を見ることで何の為に、誰の為に自然を護るのかを考える契機になるのではないでしょうか?
お薦め度:★★★ 対象:自然保全に興味のある人
ダム開発が戦後の経済を支えた反面、景観の破壊、故郷を追われた人があった。自然を破壊してきた時代を背景に日本の自然保護気運が芽生え、運動を発展させて来た。
山と森林、川、海の自然保護を北から南迄、現場に踏み込んで取材し、分析したルポである。
健全な山、森林が豊かな川、海を育むとの現実から、自然保護の運動の目的は「自然とともに生きる」という価値観が最も尊重される社会をつくることであるとうったえている。
お薦め度:★★ 対象:自然保護の歴史と現実を知りたい人
自然保護運動の最大の目的である「自然とともに生きる」という価値観が尊重される社会をつくるために半世紀の間に日本で起こったことが書かれている。
「山と森林」・「川」・「海」に分けて、全国各地の自然破壊に対する地域住民の姿などとともに紹介され、これからの日本の自然に対するあるべき姿が述べられている。
お薦め度:★★ 対象:日本の自然保護の歴史に興味のある人
山や森や川の数々の破壊現場をルポしてきた著者が必然的に辿り着く「自然保護」問題ヘの取り組みの歩みを半世紀に渡り概括しようとした力作。そこで「日本自然保護協会」が果たした自然保護運動の歩みを軸に、時代と共に移り変わっていった行政の施策転換が人びとの意識の変容をもたらし、新たな潮流も生まれてきた。戦後高度成長期に日本を蹂躙した開発の波の破綻の象徴のように美しい朝日連峰山麓に荒縄のようにはいつくばる未完の大規模林道のぶざまな俯瞰写真は静かな告発となっている。
21世紀は「自然とともに生きる」という価値観が尊重される社会の実現にある、と著者は痛感している。
お薦め度:★★★ 対象:環境問題の歴史的背景を知りたい人
日本の自然保護運動の歴史と現状を綴った本。第一章で、日本の自然保護運動の原点とも言える尾瀬とともに、最初の自然保護団体でもある日本自然保護協会の成立が紹介される。その後、白神山地を中心に山林、川辺川ダムを中心に川、白保や小笠原空港、諫早湾などの海というように日本各地の自然保護運動が紹介される。第五章では国立公園や自然保護関係の法律の現状とともに、近年の里山の保全運動やエコツーリズムについても紹介している。
日本の自然保護運動の歴史についての記述は詳しく、歴史の浅さがよくわかる。一方で、今日的な里山や水田環境の保全問題や、エコツーリズムの問題、今後の自然保護の方向性についてはあまり詳しく書かれていない。
お薦め度:★★ 対象:日本の自然保護の歴史に興味のある人