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本の紹介「裏山の奇人」
「裏山の奇人 野にたゆたう博物学」小松貴著、東海大学出版会、2014年8月、ISBN978-4-486-01994-7、2000円+税
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【森住奈穂 20141217】
●「裏山の奇人」小松貴著、東海大学出版会
「わからないことを、わかりたい」から始まり、「わかったところで、別になんにもならないし、誰も得をしないことなのだが」で締めくくる裏山の奇人。自嘲気味の文章もご愛嬌。幼いころの遊びは「生きものとの逢瀬」。そこで培われた観察眼。長じて凡人にはただのハエが奇人には擬人化され美少女戦士に見えてしまったりする。何だかよくわからないが楽しそうだ。とにかく、それほどに愛している生きものたち。一挙手一投足が愛おしい。息をつめて見つめていたい。けれども現実は厳しい。辛抱心棒けちん坊。手垢だって粗末にはしない。裏山に身を置き、世界を見つめる奇人は生きものを上にも下にも見ない。ただ奇人のやり方で愛しているのだ。
お薦め度:★★★★ 対象:奇人の愛をのぞいてみたいひと
【和田岳 20141024】
●「裏山の奇人」小松貴著、東海大学出版会
それにしても意味の分からないタイトル。なんでこんなタイトルにしたんだろう?と思ったけど、読み終わってみると内容にぴったりのタイトルであることは納得する。でも、それは読み終わってるからで、これじゃあ誰も買わないんじゃないか?と他人事ながら心配になる。
子どもの頃から現在にいたる。裏山を中心にした(海外も裏山の延長っぽい)発見話が、つらつらと続く。著者の主な研究対象はアリヅカコオロギなのだが、あまりにナチュラリストな著者の興味は昆虫の枠すらはみだして、ネズミでもコウモリでもカラスでもカエルでも、何でも観察して、いろいろ見つけてしまう。どこかの自然史系博物館の学芸員になれたら、最強っぽい。
というわけで、面白い話題がてんこ盛り。スズメバチをコオロギで餌付けして遊んだり(刺される恐れもあるので、よい子は真似しないように)、アブラコウモリを後ろから捕虫網で捕まえたり(鳥獣保護法違反です!)、ベッコウバチからクモを取り上げてもう一度刺すところを見たり(こっちが刺されるらしい)、オジロワシの格好でカラスの群れに混じったり(これは楽しそう、でも寒そう)、アリグモのオスを対決させたり(これは楽しそう)。裏山での悪い遊びが満載の一冊でもある。
お薦め度:★★★★ 対象:裏山の自然に興味がない人に是非
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