【六車恭子 20171020】
●「歌うカタツムリ」千葉聡著、岩波科学ライブラリー
遠いハワイの地では「カタツムリが歌う」、と住民は信じていたという。そのロ一カルなカタツムリの進化を巡るその後の200年間の研究者たちの絢爛たる論戦は生き物の進化を巡る研鑽の最前線を観戦しているようだ。ギュリックの「地理的隔離説」、ライトの「遺伝的浮動による平衡推移理論」、フィッシャ一の「自然選択の遺伝学的理論」、外にもドブジャンスキ一、グ一ルド、木村資生ら日本の研究者も多数参戦した。著者自身もその一人だ。まさにカタツムリが世界の潮流を席巻するモデルであり、カタツムリの謎に迫ればなにかが見える、そんな進化の実験場だったようだ。カタツムリの殻の渦巻きのように少しづつ理解のステージは上がっていく。まさに進化のらせんの物語の醍醐味が味わえる希有な一冊!
お薦め度:★★★★ 対象:軽やかなタイトルに誘惑されるのも可な方なら