【西村寿雄 20170814】
●「野生のチューリップ」前嶋昭著、福音館書店たくさんのふしぎ2017年5月号
多様な栽培種にあふれているチューリップの原産地を求めて、著者は中央アジアの高地に出向いた。標高900mの砂漠地帯、岩場の斜面に野生のチューリップが見える。これが野生種かと思えるほどカラフルな大輪が咲いている。もちろんタンポポと見間違えそうな小さな花の種もある。著者はさらに天山山脈の西へ向かう。なんと乾燥しきった荒れ地に鮮やかな赤や黄色の花園が出迎える。現地でのチューリップは種ができても花を咲かせる球根に育つのに10年以上はかかるという。1000万年余の命を受け継ぎ、今も荒野の寒冷地でたくましく育つチューリップ、10年の歳月をかけて太陽エネルギーを蓄えてきた野生植物の美しさと力強さに感服させられる。
お薦め度:★★★★ 対象:野生植物の力を感じたい人