【西本由佳 20170609】
●「雪と氷の世界を旅して」植竹淳著、東海大学出版部
雪と氷といえば、白い世界を思い浮かべるが、この本に出てくるのは黒とか赤とかの汚れて見える氷河だ。この汚れの主は微生物。氷河の上に生きものなんて住めるの?と思うが、夏の融け水を使ってがんばっているらしい。著者はこの微生物を、アイスコアの中で夏の季節を判別するのに使えないかと研究をはじめるが、しだいに微生物の生態そのものに興味を移していく。藻類、バクテリア、アルコール発酵する酵母(ただしお酒にするには弱いらしい)、コオリミミズにはちゃんと腸内細菌までいる。そのすごく小さな生きものたちの世界の違いが、その氷河のおかれた環境を反映している。氷河って死の世界じゃないんだなあと納得。
お薦め度:★★★ 対象:雑然とした世界の好きな人