■貝班とは

 大和川水系の水の中にすむ二枚貝と巻貝の分布を調べます.それをもとに,今ではたいへん少なくなってしまった在来種の貝と,最近増えている外来種の貝が,それぞれどんなところにすんでいるか,考えてみます.あわせて,水路以外にすむ有肺類やマイマイなどの巻貝についても資料を集めます.


■大和川水系で見られる貝
●スクミリンゴガイ(じゃんぼたにし)



 南米原産の巻貝で,西日本を中心に,用水路などを通じて水田地帯に広がっている.大和川水系でも,すでに広い範囲に生息しているものと思われる.
 はじめ食用のための養殖用に移入されたが,放棄されたものが広がった.葉っぱをたべるので,田植えをしたばかりの若い稲の害になる.標本は奈良県広陵町で採集.
 貝殻はタニシより丸みが強く,一回り大きくなり,温州ミカンぐらいの大きさになる.そして殻は巻き上がって平巻の貝に近くなる.触角はタニシより細く長い.水路の壁面などに濃いピンク色の卵塊を産み付けるので,貝の姿は見えなくてもいることがわかる.タニシのなかまに似ているが,タニシは子どもの貝を産むので,まったく違うなかま.
 この貝を採集しても別のところに生きたまま放さないでください.

写真下:スクミリンゴガイ(じゃんぼたにし)の卵塊
本物のタニシは胎生で稚貝を産み,卵はうみつけない
□大和川水系のスクミリンゴガイの分布状況□
卵塊の確認情報に基づく(2005年8月12日現在)

●ヒメタニシ
 日本にいるタニシのなかまでは,一番小型で殻高3cm前後.汚れた水中にも強い.やや細長い外形で,表面はなめらかな個体から巻いている筋(螺肋)がはっきりしたもの,殻皮が毛のようになったものまで変化にとむ.マルタニシより膨らみ(丸み)が弱いので区別できる.
 標本は奈良県広陵町で採集.

●マルタニシ
 水田などにふつうに見られたタニシで,食用にされていた.日本にいるタニシのなかまでは,一番丸みが強い.秋から冬にかけて水田の水を抜いた後,蓋を閉じて土中に半ばもぐって,ある程度の乾燥にたえる.
 現在では,市街地の水路や水田には見られず,山里の棚田や小川などに限られる.マルタニシがいるかどうかは,日本在来の生物が健在かどうかの目安になる.
 標本は奈良県桜井市で採集.

●カワニナ
 細長い巻貝で,比較的水のきれいな砂礫底に多い.表面は滑らかで,細い螺肋がある.タニシと同じように胎生で,小さい稚貝を直接水中に産み出す.ゲンジボタルの幼虫のえさになることから,ホタルを楽しむためにカワニナを飼育することが多いが,産地のわからないカワニナを自然の川に放すのは問題が多い.
 標本は奈良県桜井市で採集.

●マシジミ
 淡水にすむシジミで湖,池,川などにすむ.日本にはこのほか,汽水域にすむヤマトシジミや琵琶湖水系だけにすむセタシジミが居る.近年,タイワンシジミが急激に増加し,日本在来のシジミに置き換わっている.
 この標本は,奈良県桜井市で採集.
問い合わせ:第四紀研究室の石井久夫 ishiihi@omnh.jp まで
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