SF関係の本の紹介(2005年下半期分)
【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】
●「僕たちの終末」機本伸司、角川春樹事務所、2005年6月、ISBN4-7584-1050-X、1700円+税
20051231 ★
太陽活動が活発化し、強い太陽フレアの発生により、数年後に地球人類が絶滅する危機が訪れる21世紀半ば。助かるために、お金を集めて、突貫工事で宇宙船を造って、他星系に脱出しようとする話。
とにかく、太陽系ないですら月にしか到達してないのに、いきなり恒星間に出ていこうとするのだから無理がある。その上、プロジェクトは政府主導ではなく、民間で立ち上げられ進んでいく。この辺り「第六大陸」を思わせるが、こちらの方は細かい点には目をつぶって、話を進めていく感じ。技術的にどんな無理があるかを説明してくれるけど、なんだかんだで地球を脱出してバーナード星に行ける宇宙船ができてしまうし、技立ちふさがる法的・政治的な壁もなんとなく回避できてしまう。
主人公は驚くほど頼りなく、夢はあっても現実はみない。周りががんばってるのに〜、と終盤までイライラさせてくれる。結末は、ある種、収まるべき所に収まるというハッピーエンド。結局の所、頼りない主人公が成長する話だったのかも。そんな解決法があり得るなら、最初からそれを実行に移したらどうやねん!というのが最初の読後感。
●「ディアスポラ」グレッグ・イーガン、ハヤカワ文庫SF、2005年9月、ISBN4-15-011531-1、900円+税
20051223 ★★
【準備中】
●「デカルトの密室」瀬名秀明、新潮社、2005年8月、ISBN4-10-477801-X、1900円+税
20051219 ★★
ロボット工学研究者の主人公、相棒の女性心理学者、二人が造り育てているアンドロイド。対するは、美貌の若き天才科学者、彼女に瓜二つのアンドロイド達。人間とは何か、意識とは何か、自由とは何か、といった哲学的な問題を、人間にそっくりなロボットを造るというプロセスを通じて検討するといったストーリー。
SFというよりは、小説のスタイルを借りた、科学や哲学の普及書の趣が少なからずある。しかし、ネットワーク知性をはじめとしてSFならではの展開や考察もちりばめられ、何が本当に科学の成果で、何が実際に哲学で議論されているか。現実と虚構の混ざり具合がとてもいい。適度に謎解き的な展開にしているところも成功している。
今まで読んだこの著者の作品では一押し。
●「太陽レンズの彼方へ」チャールズ・シェフィールド、創元SF文庫、2005年10月、ISBN4-488-69304-0、920円+税
20051130 ★
【準備中】
●「悠久の銀河帝国」アーサー・C・クラーク&グレゴリイ・ベンフォード、ハヤカワ文庫SF、2005年9月、ISBN4-15-011530-3、840円+税
20051116 ★
【準備中】
●「啓示空間」アリステア・レナルズ、ハヤカワ文庫SF、2005年10月、ISBN4-15-011533-8、1400円+税
20051114 ★★
【準備中】
●「マジックキングダムで落ちぶれて」コリイ・ドクトロウ、ハヤカワ文庫SF、2005年8月、ISBN4-15-011526-5、660円+税
20050926 ★
【準備中】
●「ヒューマン」ロバート・J・ソウヤー、ハヤカワ文庫SF、2005年6月、ISBN4-15-011520-6、920円+税
20050922 ☆
「ホミニッド」の続き。前作の最後に一度切り離された二つの世界をつないで、改めて交流がはじまる。その中で、前作の最後に引き裂かれた二人の種族を越えた愛はどうなるのか? てな展開。もはや新たな驚きはなく、ただ文化摩擦が描かれ、そして恋の行方が語られるだけ。これを指して蛇足というのだと思う。ちなみに足はもう1本あるらしい。
●「鏡像の敵」神林長平、ハヤカワ文庫JA、2005年8月、ISBN4-15-030810-1、700円+税
20050919 ★
【準備中】
●「老ヴォールの惑星」小川一水、ハヤカワ文庫JA、2005年8月、ISBN4-15-030809-8、720円+税
20050918 ★
【準備中】
●「栄光への飛翔」エリザベス・ムーン、ハヤカワ文庫SF、2005年8月、ISBN4-15-011528-1、980円+税
20050907 ☆
「くらやみの速さはどれくらい」の作者による宇宙を舞台にした話。若き女船長カイの挑戦シリーズの第1弾。この巻では、陥れられて士官学校を退学させられた主人公が、実家の宇宙船の船長になる。で、途中で大事件に遭遇して、なぜか活躍する。
「くらやみの速さはどれくらい」のような作品を期待して読むと、裏切られる。いたって脳天気な、ミリタリーっぽい宇宙冒険活劇。未熟者がなぜか成功するってパターンでしょうか。
●「スラムオンライン」桜坂洋、ハヤカワ文庫JA、2005年6月、ISBN4-15-030800-4、600円+税
20050824 ★
同時に複数の参加者が参加できるオンライン格闘ゲーム。その舞台となる街バーサス・タウン。参加者はバーサス・タウンにログインして、自由にストリートファイトや格闘大会に参加する。
ヴァーチャルな格闘世界と、平凡な日常。両者を微妙に絡ませつつ、主人公の闘いが描かれる。格闘大会の王者、最強のストリートファイター、妙な酒場の主人。展開はわりと普通な感じで、クライマックスはあるものの淡々と進む。
妙にSF色を強めずに、近い将来にすぐにありそうな話にしたのが、小説としてはよかったと思う。
●「400億の星の群れ」ポール・J・マコーリイ、ハヤカワ文庫SF、2005年7月、ISBN4-15-011522-2、780円+税
20050824 ★
【準備中】
●「竜とイルカたち」アン・マキャフリイ、ハヤカワ文庫SF、2005年7月、ISBN4-15-011523-0、820円+税
20050824 ☆
【準備中】
●「UMAハンター馬子 完全版」(1・2)田中啓文、ハヤカワ文庫JA、2005年1-2月、(1)ISBN4-15-030780-6(2)ISBN4-15-030784-9、(1)780円+税(2)900円+税
20050822 ☆
おんびき祭文という一芸をひっさげて、馬子とその弟子が諸国を巡業してまわり、各地でさまざまな未確認動物(UMA)の謎を解明していく。とだけ言えば、聞こえはいいけど、中身はもっと下品で汚い展開に満ち満ちていて、例によって脱力するような駄洒落が飛び交う。馬子は下品な大阪のおばはん設定らしいから、展開も会話も推して知るべし。
出てくるUMAは、ネッシー、ツチノコ、キツネ、雪男、グロブスター、チュパカブラ、クラーケンと盛りだくさん(なんでキツネがUMAやねん!という突っ込みはおいといて)。
最後には人類の存亡をかけて闘うという特撮物のような展開になり、馬子の正体もついに明らかになる。わけだが、まあそんな謎解きやスペクタクルは、日常の馬子のパワーの前にはどうでもいいような気がする。とっても楽しく読めるが、当然ながらSFではないわな。
●「蒲公英草紙 常野物語」恩田陸、集英社、2005年6月、ISBN4-08-774770-0、1400円+税
20050729 ★★
「光の帝国」に続く、常野物語第2弾。権力を求めず、日本各地を彷徨いながらひっそりと暮らす超能力をもった一族の物語。東北の小さな村の有力者の一族が、そこに奉公する娘の目から静かに描かれる。聡明なお嬢様、謎の旅人、そして事件。
田舎を舞台に、超能力者の穏やかな生活が描かれるときたら、ヘンダーソンのピープルシリーズ。SF的なアイデアとしては、とくに目新しさはないけれど。展開も十二分に予想の範囲内だけど、久々の常野物語はよかった。好きなものは好きってことで。