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本の紹介「生命は細部に宿りたまう」

「生命は細部に宿りたまう ミクロハビタットの小宇宙」加藤真著、岩波書店、2010年10月、ISBN978-4-00-006276-3、1800円+税


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【加納康嗣 20110223】【公開用】
●「生命は細部に宿りたまう」加藤真著、岩波書店

 オオカミは森林を、アユは川を生息場所にしているが、行動圏が広い生物や特に環境選考性が高くない生物の生息場所は生態系とほとんど重なる。しかしさらに小さな移動性のない生き物が生息する環境はこれでは大きく荒過ぎる。我々の視点から見落とされる自然の単位、特殊な微環境はミクロハビタット〈微小生息場所〉と呼ばれる。そのようなミクロハビタトの多様性が景観レベルの生物多様性に大きな貢献をしている。オキナグサが茂る半自然草原、ミズトラノオが咲く中池見湿地などの水田生態系、オニノヤガラなどがひっそりと咲くミズナラ森など9つに類型分けされたミクロハビットの生物を取り上げ、生物多様性の陰の主役たちの役割を明らかにして、細部に宿る生き物の保護こそが全体の生態系を守ることに貢献することを訴えている。読みやすく美しい本である。

 お薦め度:★★★★  対象:生態系や失われた自然失われる自然に思いを寄せる人

【中条武司 20110224】
●「生命は細部に宿りたまう」加藤真著、岩波書店

 小さないきものたちが利用する特殊な微環境をマイクロハビタットと呼ぶ。地形・気候・地質などが複雑な日本では、それだけマイクロハビタットも多様なものとなってくる。本書はそのマイクロハビタットにすむいきものに着目し、日本の生物多様性の豊かさを紹介していく。礫浜、砂堆、湿崖、礫河川など普段はあまり扱われないような環境を扱い、そのミクロな環境こそが重要だと説いている。ミクロな環境、または何でもないと思われる環境であるがゆえに、軽視され、破壊されてしまう危機にさらされているこれらの環境に、私たちは目を向けなければと思わされる。

 お薦め度:★★★  対象:日本の自然が好きな人

【萩野哲 20110217】
●「生命は細部に宿りたまう」加藤真著、岩波書店

 小さな生物たちが利用している特殊な「生息場所」は自然の単位としてミクロハビタットと呼ばれている。これらの多様性がより大きな単位である生態系の生物多様性を担っている。本書は日本国内(外国も)に存在する多数のミクロハビタットを列挙し、その成り立ち、そこに生息する代表的な生物を紹介している。豊富な写真と関連情報もあり、楽しく読むことが(見ることが)できる本である。

 お薦め度:★★★  対象:生物多様性に興味がある人

【和田岳 20110224】
●「生命は細部に宿りたまう」加藤真著、岩波書店

 入江、レキ浜、浅海底、氾濫原、半自然草原、水田、原生林の林床、湿崖、地下水や伏流水。ふだん我々があまり顧みることのない、さまざまな小さな生息環境が取り上げられ、そこに生息する生物が紹介される。
 「小さな生物たちの特殊で代替不可能なミクロハビタットに焦点を当てた。彼らの繊細かつ多様なミクロハビタットの偉大なる集合が生態系と生物多様性を形づくっている」
 あとがきにある著者のこの言葉がすべてなんだと思う。

 お薦め度:★★★★  対象:日本の生物多様性が気になる人

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