例外はありますが、研究者の最新の研究成果は、まず学会で発表され、それから学術論文として印刷され、そして本に引用されるというような順番で展開していきます。もちろんいきなり論文として発表されたり、論文にもなっていない情報が本の中で引用されたりもしますし、学会発表されてもさっぱり論文にならない研究も数多くありますが・・・。ともかく本だけをいくら読んでいてもなかなか最新の研究成果にふれることはできません。
そこで比較的新しい雑誌に掲載されている鳥類学や生態学に関する論文の中から、おもしろそうで(もちろん個人的に)、紹介しやすい論文を選んで、紹介したいと思います。基本的には鳥が出てくる論文です。紹介の際には、各論文で紹介したいことを表すような、見出しを勝手に付けています(【】内)。また外国語(まあ英語ですが)で書かれた論文については、タイトルを勝手に和訳したものをそえておきます(「」内)。なお多くの場合、一つの論文にはいろいろな情報が含まれていて、そのすべてを紹介することはできません。紹介したいと思った部分だけを紹介することになりますので、その点をご了解ください。
1997年11月
●「植物の種子生産の周期による植食動物の周期的な個体群変動」【豊作の次の年にライチョウやヤチネズミは増える】(1997/11/26)
●「最適な近隣者選び:ツンドラの鳥による捕食者の防御
」【侵入者を追い払う種類のそばで繁殖すると安全だけど・・・】(1997/12/30)
1997年10月
●「ノドアカモリハタオリによる巣での捕食の回避」【ノドアカモリハタオリは捕食者を避けるためにワニの巣穴のそばで繁殖する】
●「マイマイガが葉を食べるとワキアカトウヒチョウが増える」【マイマイガが大発生するとワキアカトウヒチョウが増える】
1997年9月
●「越冬ユキホオジロのエネルギー蓄積における日周的、季節的、緯度的変異」【ユキホオジロの体重は真冬に重くなる】
●「ハクガンの営巣成功に影響を与える要因−生息環境やシロフクロウの影響」【シロフクロウがいるとハクガンの繁殖はうまくいく】
1997年8月
●「ワシカモメとアメリカオオセグロカモメの交雑とその繁殖成績」【ワシカモメとアメリカオオセグロカモメの交雑個体は、ワシカモメよりもの繁殖成績がいい】
●「北アメリカの陸鳥の秋の渡りの際の果実食と脂肪蓄積」【秋の渡りの際に果実をよく食べる種類の方が、渡りの中継地でエネルギーを効率よく補給している】
●「埋めることのドングリのタンニン量への効果とアオカケスの食性」【ドングリの渋みは一冬埋めておいても抜けない】
●「果実食鳥類の渡りに応じた屋久島の暖温帯林の動物散布植物の果実の熟期」【屋久島の動物散布の樹は、渡り個体がやってきて果実食の鳥が増える時期に、果実の熟期をを合わせている】
1997年7月
●「都市と郊外の林の辺縁部における卵と種子の捕食」【実験の結果、都市よりも郊外の方が、カバーがあるよりもない方が、捕食率が高かった】(1997/11/26)