皮むき日記
2004年
2005年1月、2月、3月、4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月、12月
(注)ここで行っている皮剥きなどの標本作成は、調査研究目的(及び普及教育目的)で、大阪市立自然史博物館の業務の一環として行っています。またその対象は、この目的で殺したものではなく、事故などで死んだものを用いています。動物虐待ではないかとの指摘があったので、念のため。
●2005年12月26日 ハイタカ、キジバト、ミツユビカモメ
なにわホネホネ団の一部と、ジュニア自然史クラブの鳥の皮むき希望者で、鳥の皮むき大会。午前中はハイタカで模範演技。午後は各人にキジバトの皮むきに挑戦してもらい、一緒にキジバトとミツユビカモメの皮むきをしました。
・ハイタカ(OMNH A2877:2005年11月、大阪府吹田市産)
新鮮で、脂肪蓄積は少なく、とっても皮むきしやすい。あまりタカ臭さもなかった。
・キジバト(OMNH A2881:2001年2月、大阪市北区産)
長らく冷凍庫に眠っていた。途中、冷凍庫の故障もあった。そんなわけで、肉は腐ってるし、頭は乾燥している。それでもなんとか仮剥製にはなった。そのうには、クロガネモチ、イヌツゲ、クスノキ、シュロ、ヨウシュヤマゴボウの種子。
・ミツユビカモメ(OMNH A2876:2005年12月、茨城県古河市産)
死因は不明だが、死んでから何かに食べられてる。翼の付け根や、胸から腹にかけての正羽がなく、綿羽のみが残る。腹には穴が開いていて、内臓がなくなっている。おかげで、皮むきはむしろしやすかった。けっこう頭でっかちの感があった。
●2005年11月1日 アカウミガメ
昨日、浜に打ち上がったと連絡のあったアカウミガメを引き取ってきて、さっそく解体。
・アカウミガメ(OMNH R■:大阪府阪南市産)
すでにかなり腐っているので、骨にすべく解体。手足をはずして、頭と頸をはずして、尾椎と寛骨をはずしたら、おおきな杯みたいな、甲羅ができあがり。甲羅だけになるとかなり軽い。上顎と下顎の先のくちばしは、簡単に取れたので、乾かして保存。総排泄口が、えらく尾の先近くに開いているのには吃驚。雄だから? 手足には2本ずつ爪があった。これも雄だから? 甲羅や鱗のあちこちにはフジツボが付いていた。ウミガメフジツボ? 肩の辺りの骨がややこしい。肩胛骨と鎖骨かと思ったら、肩胛骨と烏口骨なのか…。そして何よりの驚きは、喉の中。1cmくらいのトゲが一面に生えていた。
●2005年10月30日 カワウ、アライグマ
なにわホネホネ団の活動日。カワウ、タヌキ2匹、テン、アライグマ、ハクビシンの皮むきが中心。テンは黄色くて美しかった。ハクビシンは腐ってた。
・カワウ(OMNH A2860:■産)
カワウを剥いたのは初めて。他の鳥といろいろ違っていておもしろい。肩の位置が、胴体の前の方ではなく、けっこう真ん中よりに付いている。膝蓋骨がかなり大きくて、膝関節をはずしにくい。これはカイツブリ類に似てると思う。頭骨の背中側の一番後ろに小さな骨が付いていた。あるいは第一頸椎の骨をハズしてしまったのか? ともかくメスで簡単に離れる。そして最大の発見。カワウの嘴を根元で握っても、上嘴を動かして口を開くことができる。上顎の根元の関節の動きがおもしろい。
・アライグマ(OMNH M2015:大阪府堺市産)
今日も一人でアライグマ剥いた。前回指の筒剥きに途中で挫折したので、今回再挑戦。指1本あたり、5分くらいかかる。20本で2時間近く。あー疲れた。
●2005年9月24日 テン、マレーグマ
なにわホネホネ団の活動日。皮を剥いたまま放ってあったテン、タヌキ、フェレットなどを煮て、骨を洗う。また、なめし液に浸けたままになっていたマレーグマ、シカ、アライグマなどの皮を、広げて干す。
・テン(OMNH M980:続き)
煮ても臭い物は臭い。頭骨が割れていたのが残念やけど、他はまったく無傷。
・マレーグマ(OMNH M■:続き)
干してみると、腹の毛がやっぱりけっこうはげてる。残念。
●2005年9月5日 マレーグマ
マレーグマの皮の処理の続き。
・マレーグマ(OMNH M■:続き)
臭くなりそうなので、耳の堅い部分と、口周りの肉を念入りにとった。タヌキのノリで皮をゴシゴシしたら、縁の毛がけっこう抜けてしまった…。マレーグマはゴシゴシしてはダメらしい。
●2005年9月4日 ニホンカモシカ、マレーグマ
なにわホネホネ団の活動日。砂場から、ニホンカモシカ、ニホンザル、オランウータンの骨を回収してきて洗った。剥いたままになっていたタヌキ2匹とテン1匹の皮の脂取りをした。マレーグマの皮むきをした。
・ニホンカモシカ(OMNH M912:続き)
砂場に一夏置いてあったのが、いい頃合いになったので、回収して、骨を洗った。セアカゴケグモを思わせるクモがけっこう出てきて、ちょっとドキドキ。骨はなかなかいい感じ。
・マレーグマ(OMNH M■:■)
先週死んだクマの皮をさっそく剥いた。耳が小さい。以外と手足は大きい。胸にツキノワ。全体に黒くていい毛並み。毛皮はけっこうイヌのような臭い。でも中身はあまり臭いはなく、脂肪も少なめでした。
●2005年8月26日 テン
ジュニア自然史クラブで、タヌキ2頭とテン1頭を剥いた。
・テン(OMNH M980:京都府加茂町産)
一見綺麗だけど、腐ってた。めっちゃ臭い。部屋中臭い。その上、剥いてる間に毛が抜ける。この努力は文字通り不毛なのかも。
●2005年7月18日 アライグマ
今日は、なにわホネホネ団の活動日。だけど、人が少なくアライグマとフェレットを剥いただけ。
・アライグマ(OMNH M975:大阪府堺市産)
一人でアライグマ剥いた。指が長いのでその部分の処理が面倒〜。途中で筒剥きが面倒になり、足ごとに違った剥き方になってしまった…。あとは剥きやすい動物。陰茎骨が長いのが印象的だが、ペニスは長くない。皮に付いた脂は、ゴシゴシしてもなかなかとれない。
●2005年6月6日 ニホンカモシカ、ゴマフアザラシ
どちらもなめし液に浸けた後の皮の処理。
・ニホンカモシカ(OMNH M912:続き)
やや乾いてきたので、少し引っ張ってみた。端っこが少し引っ張れただけ。
・ゴマフアザラシ(OMNH M846:続き)
こちらは脂ギトギト。で、引っ張れるのかどうかよくわからないし、脂臭いので敬遠気味だったけど、試しに引っ張ってみた。意外と引っ張れる。けっこう柔らかい皮になるかも! というわけで、けっこうはまって引っ張り続ける。イヌイットに負けないアザラシ皮にできるかも。
●2005年6月4日 キツネ
今日は、なにわホネホネ団の活動日。でも昼間は用事があったので、夕方から参加。昼間は、カマイルカの骨を掘り出したり、いろんな骨を洗ったりしてたらしい。
・キツネ(OMNH M915:続き)
煮てあったのを骨洗い。隣に並べてみないと、自信はないけど、タヌキとはかなり違う気がする。下顎の一番奥の臼歯がやけに小さい。後脚の指が妙に長い。頸椎の下に妙に取れやすい突起がある。今度、比べてみよう〜。
●2005年5月26日 ニホンカモシカ
ニホンカモシカの皮の処理の続き。
・ニホンカモシカ(OMNH M912:続き)
洗剤液から出して、水洗い。そして、なめし液へ。毛足が長いので、こそげとった脂身が毛に絡んで取れない…。
●2005年5月25日 ニホンカモシカ、オランウータン
今日は夕方から、なにわホネホネ団の活動。皮を剥いたまま冷凍庫に入れたままの物を処理。ニホンカモシカの皮と中身、オランウータンとニホンザルの中身、ゴマフアザラシの皮。中身はいずれも大物なので、肉をできるだけ取って、バラして砂場に設置。皮は脂取りをして洗剤液へ。
・ニホンカモシカ(OMNH M912:続き)
皮の内側の脂と肉をとる。眼下腺の内側にブラウンマッシュルームみたいな肉の塊がついている。肉をそーっと取っていくと、どうやら皮が内側まで張り込んで、毛で裏打ちした小さい袋をつくってる。残した方がいいのか??
・オランウータン(OMNH M■:続き)
上腕の肉を取る。爪が黒いのがちょっと変で、親指には爪がないみたい。あと、肩胛骨の突起がしっかりしてて、筋肉もたくさん付いている。樹にぶら下がるだけあるな〜。
●2005年5月20日 キツネ
キツネの皮の処理の続き。昨日、だいたい脂を取って、洗剤に浸けてあったので、まずは水洗い、それから頭とか足先の脂取りをしてから、なめし液へ浸ける。
・キツネ(OMNH M915:続き)
タヌキよりは少し脂が取りにくい気がする。剥いてる時は気付かなかったけど、腹の皮の裏が少し痛んでいる感じ。でも、全体的にはきれいな皮。
●2005年5月19日 シマハイエナ
今日は夕方から、なにわホネホネ団の活動。2003年11月25日から約1年半、外の砂場に放って置いた骨を回収してきて洗うのが中心。トムソンガゼルが2体、シマハイエナ・オオカミ・ブラックバックが各1体。
・シマハイエナ(OMNH M■:某動物園より)
頭骨にはまだ肉がこびりついていたので、水の中へ。あとはちょうどいいくらいに、虫に食われていて、洗えば綺麗になりました。ハイエナって、とっても頸が太いらしく、第一頸椎の“耳”がとっても大きい。で、頸椎自体とってもごっつい。それに比べると、胸椎はとっても小さい。変な動物。あと、顎がやたら立派だからか、とにかく頭蓋が小さく感じる。脳みそ少なそう〜。
●2005年5月8日 コミミズク、アオサギ、キツネ
今日は、なにわホネホネ団の活動日。鳥2羽とキツネ1匹を一人で剥きました。哺乳類1匹を一人で剥いたのは久しぶり。
・コミミズク(OMNH A2844:2005年3月、大阪府羽曳野市産)
餓死したのか、とても痩せた個体で、とても剥きやすい。ただ、頭の方が傷んでいて、脳は完全に腐っていました。ハジラミがけっこう付いていたので採集。さすがフクロウ類、羽根はフワフワだし、一番外側の初列風切の外弁には櫛状のギザギザが付いています。
・アオサギ(OMNH A2845:2005年1月、兵庫県西宮市産)
なんで死んだのかはわからないけれど、両足の指にベトベトしたものが付いていて、それを取るのが大変だった。ゴミを取って、洗剤で何度も洗った後、粉を振りかけて一段落。
・キツネ(OMNH M915:2005年1月、大阪府枚方市産)
久しぶりに剥いたせいか、3時間近くかかってしまった。きれいで立派な雄でした。臭いは完全にイヌそのものって感じでした。
●2005年5月4日 ミゾゴイ、ハクビシン
今日は、なにわホネホネ団の活動日。でも、自分ではミゾゴイを剥いた他は、ハクビシンの脂取りを少ししただけ。
・ミゾゴイ(OMNH A2840:2005年4月、大阪府堺市産)
やはりサギ類、粉綿羽があり、中指(第三趾)の内側には櫛状の刻み目があります。臭いはサギ臭い。
・ハクビシン(OMNH M913:2005年4月、栃木県馬頭町産)
前足にストッパーみたいなのが付いてるのに、今日初めて気付きました。木登りに便利そうです。
●2005年4月15日 キジバト、ヒヨドリ
ワークショップで使う用の皮むきをした。
・キジバト(OMNH A2837:2005年■月、大阪市東住吉区産)
長居公園産の個体。そのうの中には、クスノキの種子が大量に入っていて、一緒にエノキとムクノキの種子もでてきた。小さな陸貝まで出てきました。
・ヒヨドリ(OMNH A2839:2005年■月、大阪府堺市産)
くちばしに羽根がひっついてるし、頭の上にもなんか付いてるなー。と思ってたら、なんかの蜜を吸った後に死んだらしい。黄色い花粉が残らないのがちょっと残念。
●2005年3月24日 コサギ、キジバト、ニホンカモシカ
今日は、なにわホネホネ団の活動日。午前にコサギ、午後にキジバトと、鳥の皮むきの模範演技を2回。その後、ニホンカモシカの皮むきを少しだけした。
・コサギ(OMNH A2833:2004年12月、兵庫県西宮市産)
白い鳥は羽を汚さないように剥くのに気を使います。それはさておきギャラリーだったMさんに言われて気付きましたが、両足とも中指(第三趾)の内側にだけ櫛状の刻み目があります。アオサギの足でも確認したけど、アオサギにもありました。羽根を櫛けずるための構造でしょうか?
・キジバト(OMNH A2834:2005年2月、大阪市東住吉区産)
説明しながらいそいで剥いたら、羽根がたくさん抜けてしまいました。そのうの中からは、大量のクスノキの種子。それに混じってトウネズミモチ、エノキ、クロガネモチの種子が少々。
・ニホンカモシカ(OMNH M912:2005年3月、滋賀県産)
皮を剥いたあと、胃内容を見ました。ウシ科なので、胃が4つに分かれています。第一胃の中には、緑色の物が大量につまっていて、大部分は粉々やけど、一部原形をとどめているのがある。植物屋に見てもらうとアオキとイヌガヤの葉でした。
●2005年2月11日 ジュウイチ、ゴイサギ、ゴマフアザラシ
今日は、なにわホネホネ団の活動日。今日も午前中は鳥の皮むきの模範演技。午後は挫折したゴイサギの皮むきのフォローをして、あとはゴマフアザラシの骨洗い。
・ジュウイチ(OMNH A2831:2002年9月、大阪市住吉区産)
渡りの途中に落ちた個体。栄養状態はものすごくよくって、中は脂だらけ。脂ののったカモなみの脂。皮むき1時間、脂とり1時間半ってとこ。
・ゴイサギ(OMNH A2832:2005年1月、熊本県三角町産)
車にひかれたらしく、頭はペッタンコに近い。無理矢理目に綿を入れたら、膨らんで、復活したみたいになった。
・ゴマフアザラシ(OMNH M846:1987年5月、北海道釧路市産)
煮た後、水に浸けて腐らせてあったので、頭骨や脊椎骨はけっこうきれいになった。しかし手足は手強い。脂の塊を解剖バサミで切って捨てるって感じ。
●2005年1月29日 ノスリ、イノシシ
今日は、なにわホネホネ団の活動日。午前中は、鳥の皮むきを教えて欲しいとのリクエストに応えて、ノスリの皮むきの模範演技。午後は、煮ておいたイノシシの骨洗い。
・ノスリ(OMNH A2830:2005年5月、奈良県奈良市産)
道端に落ちていたのをカラスがつついていたらしい。背中と頭に大きな傷と思ってたら、頭蓋骨はぐちゃぐちゃに壊れてた。皮剥いてる時間より、血の付いた羽根のクリーニングの方が面倒。ところで、ノスリを剥いたのは初めて、同時に持ったのも初めて。とってもフワフワで触り心地のいい鳥です。ちょっとフクロウみたい。フクロウと同じようにネズミを捕るから、似たような消音装置を持ってるってわけかな?
・イノシシ(OMNH M830:つづき)
骨を洗った。イノシシの骨を洗うのは、なんと初めて。しみじみと見てみると、頭骨の形がけっこうおもしろい。タヌキとは勿論違うけど、シカとも全然違う。変な頭。
●2005年1月28日 カマイルカ
今日は、カマイルカの解体をしました。実のところ少し手伝っただけだけど…。
・カマイルカ(OMNH M884:1992年3月、兵庫県日本海側産)
メスの個体で、体長は約195cm。皮を剥こうにも妙に丈夫で無理。骨格標本にするのを基本にして、皮の一部、背鰭、尾鰭、眼球、内臓などを液浸標本として保存するにとどめました。ちなみに腸の長さは約18mもありました。魚食性のくせにどうしてこんなに長いんだろう?
イルカを解体するのは初めて。ちかくでまじまじと観察すると色々と発見があります。まず目蓋がない。イルカは目をつぶらない? 耳は爪楊枝がささる程度の小さな穴が開いてるだけ。へそは押さえると明らかにへこむのであるようなのですが、穴は開いてない。乳頭は、生殖孔のすぐ横にある一対の切れ目。開いてみると乳首があるけど、どうやって授乳するんだろ? そして頭の上に開いた鼻の穴の中に指を入れてみるとかなり広い袋状になっている。何のため?
イルカやクジラの骨取りをするときに最大の難関となる寛骨は無事に発見できました。長さ6cm程度の割り箸くらいの棒状の骨で、前よりに(少し下方向)内側向けに小さな突起があります。位置は、後ろ端がちょうど肛門あたり。けっこう皮に近い肉の中に埋まっていました。
●2005年1月10日 アオバト
今日は、小学生向けの行事のために、鳥の皮むき。
・アオバト(OMNH A2829:2003年10月、大阪府池田市産)
窓ガラスにでも衝突死したらしく、くちばしが折れています。さらに胸がさけて、そのうの中身が見える。出てきたのは、ドングリが3つ。植物担当に見せるとアラカシらしい。死んで博物館に届くアオバトには大抵ドングリが入っているようです。
●2005年1月9日 オオタカ、バン
今日は、小学生向けの行事のために、鳥2羽の皮むき。
・オオタカ(OMNH A2827:2004年12月、大阪市住吉区産)
近所の小学校に衝突して死んだ個体。雌の成鳥でした(オオタカなので卵巣が左右両方ともあります)。死因は衝突ですが、ものすごくやせていて、胸は尖るし、内蔵は小さくなってる。衝突しなくても死んだんじゃなかろうか? とにかく皮下脂肪がないので、とっても剥きやすい。
・バン(OMNH A2828:2004年1月、徳島県美馬町産)
オオタカとは一転して、皮下脂肪がいっぱい。剥きにくい…。
●2005年1月8日 ゴマフアザラシ
明日は行事なので冷蔵室を空けなくては! と作業をしました。
・ゴマフアザラシ(OMNH M846:1987年5月、北海道釧路市産)
煮てあった骨洗い。前肢の先には脂の層が付いていて、さっぱり骨にならない‥。