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昆虫を採集したら

 蝶や蛾など,鱗粉があるものは,胸を押さえて殺したあと,三角紙に挟み,三角缶に入れて持ち帰ります(図6).トンボなども同様にしますが,腹がくさりやすいので,三角紙に生きたままはさみ,餓死するのを待ちます.そうすると,腹部が空の状態で標本を作ることができ,腐りにくくなります.
 多くの昆虫は毒瓶や毒ツボに入れます.以前はガラス製でコルク栓というものが普通でしたが,割れやすいので,私は遠心分離実験に使う樹脂製の管を愛用しています.フィルムケースやタッパー,インスタントコーヒーの空き瓶なども,密閉性が高いので,代用することができます.
 採集地に着いたら,毒ガスの発生する物質をティッシュなどに浸し,毒瓶の中に入れておいて,採った虫をすぐに殺せるようにしておきます.以前は青酸カリを使っていましたが,人体に非常に危険なので,酢酸エチルなどが使いやすくて便利です.しかし,薬局で取り寄せたりしなくてはならないのと,劇薬なので購入するには制限があります.
 化粧品店で販売されているネイルリムーバーには酢酸エチルが入っており,ほぼ同様の効果があります.また殺虫効果は低いものの,アンモニアなども比較的手に入りやすいと思います.
 薬品がどうしてもない場合などは,甲虫などでは熱湯をかけるだけで簡単に殺すことができます.
 酢酸エチルでは,ハナアブやゲンゴロウなどの黄色く美しい部分がくすんだ色になってしまうため,上級者らの間では亜硫酸ガスを用いた殺虫も行われています.

図6.チョウのしまい方.