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一番大切な二つの条件

 植物標本を作る目的はいろいろあるでしょうが、一般的には「どんなところにどんな植物が生えているか」を調べるためでしょう。標本はこの目的に沿うように作らなければなりません。まず「どんなところに生えているか」を調べるためには、正確なラベルが付いていることが必要です。ラベルには1採集年月日、2採集場所、3採集者氏名の3項目を必ず記入することが何より大切です。よく植物の名前だけを書いて、この3項目を記入していない人がいますが、植物名は書いていなくても、あとで調べることができます。しかし、この3項目は採集した本人が忘れたら永久に分からなくなってしまいます。
 次に「どんな植物が生えているのか」を調べるためには、その植物の名前を調べることのできる標本でなくてはなりません。標本はたくさん生えている植物の中から、その種類の代表として選ぶのですから、代表の選び方が悪いと、その後調べることができなかったり、誤った結果をもたらしたりします。種子植物の特徴が一番よくあらわれるのは花と果実で、図鑑を見ても、みな花か果実の付いた図が描かれています。そこで、採集の時には手当たり次第に採るのではなく、花か果実の付いたものを探して採ることが大切な条件となります。もちろん葉や根も必要ですから、草なら花や果実の付いたものを根から掘りとり、木だったら花や果実の付いた枝を採ればよいのです。どうしても花や果実が見つからないときは、花が咲くのを待って標本にします。若い頃と花の咲く頃とでは葉の形が変わる植物もあります。このようなものには目印を付けておいたり、庭に移植したりして両方をそろえた標本を作ると大変参考になります。逆に言うと、花も実もない若い頃のものだけでは意味がありません。また、標本を押すのに楽だからといって発育の悪い小さなものを採ってもいけません。よく発育した立派なものを選びましょう。良い標本を作るには良い材料を採ることが大切なのです。
 以上のことを要約すると、押し葉標本が備えていなければならない最低の条件は次の二つということになります。

      1.正しく記入されたラベルがついていること

      2.花か果実がついていること