2025年度 夏季博物館実習3日目(8月22日)
みなさんこんにちは!実習3日目、3班のブログを担当いたします、摂南大学のO.Sです。
私たちの班は植物研究室の横川学芸員のご指導のもと、植物標本の概要や収蔵過程を学び、収蔵庫を見学した後、寄贈されたコレクションのラベル貼りやコウホネ属の変異の調査を行いました。
みなさんは植物が標本として収蔵されるまでの過程をご存じでしょうか?この過程は非常に多く、様々な作業、たくさんの人々がかかわります。なかでも、管理者(学芸員や標本庫職員)が行うこととして、このような過程が挙げられます。標本を40℃ほどの乾燥機で3日~4日ほど乾燥させ、専用の台紙に標本と同定ラベルを貼ります。植物には陸上で生息しているもの、水辺で生息しているものがいますが、乾燥工程ではどちらがはやく乾くかご存じでしょうか?答えは水辺で生息する植物です。陸上の植物は乾燥に対する耐性がありますが、水中の植物は耐性がないとされているため、はやく乾くのだそうです。
標本を乾燥させるだけでは害虫は完全に除くことはできないため、2週間を目安に冷凍で保存します。ここまでの作業が収蔵前までの過程でありますが、再同定が行われることもあります。そして、デジタルアーカイブ化が進んでいるためデータベース登録を済ませてから収蔵庫へ配架されます。
ラベル貼りでは、水草のコレクションに「○○大学○○○○コレクション」というラベルを1つ1つ丁寧に標本に貼っていきました。一見すると単純に見える作業ですが、大きな発見がありました。
私が担当していたのは「イバラモ」という水辺に生息する植物で、成長した個体には刺がありますが、芽生えたばかりの頃には小さく刺もないということに気づきました。また、標本のラベルには種名、採取者、採取場所、採取日などさまざまな情報が記載されています。その中で「PLANT OF JAPAN」と「FLORA OF JAPAN」という2種のラベルが目に入り、なぜ統一されていないのかという疑問がうまれました。質問をさせていただくと、「PLANT」というのは日本に自生する植物を意味しており、「FLORA」は植物相や植物群を意味する言葉で使い分けられているという事がわかりました。
さらに、標本には種子のついたものもありました。中には種子が落ちてしまっているものがありましたが、捨ててしまうのではなく、台紙に貼りつけられている「フラグメントポケット」というポケットに保管されていました。これは顕微鏡で観察する際などに活用されるそうです。ここでは前日に担当させていただいた甲虫の修復とはまた異なった方法を学ぶことができました。
最後に行ったコウホネ属の変異の調査では、非常に多くの標本の中から様々な地域から採集されたコウホネの標本を1枚1枚目視していき、依頼主が求めている標本を探す作業をしました。この作業には時間や体力が求められますが、地域ごとでの違いを見比べることで新たな発見や植物の多様性を実感することができました。
上記の実習内容を通して、同じ名前の植物であるにしても地域ごとに植物の質感、色や形が違いそれを発見することの楽しさを感じました。また、収蔵されるまでの過程の作業を通して、多くの人の手と時間が加えられることを知り、今を生きている人々にとって大切な資料となることはもちろん、未来に受け継がれていく大切な資料となることも実感しました。


