2025年度 秋季博物館実習3日目(10月10日)

 こんにちは。博物館実習3日目のブログを担当します。滋賀県立大学のY.O.です。

 本日は石井学芸員のご指導のもと、午前中に一般収蔵庫の棚下の掃除、午後に収蔵庫害虫の顕微鏡観察を行いました。誤解を招かないように先に注意しておきますが、今回扱う「収蔵庫害虫」とはドアブラシなどの物理的防除設備が設置させる以前に侵入した残骸です。ここでの害虫とは死骸なので一般収蔵庫内で跋扈しているわけではありません。また、一般収蔵庫は化石のような虫害を受けにくいものが配置されています。

 まず、5人の実習生を2人・2人・1人の計3チームに分けて各区画の棚下を掃除しました。掃除用具は「スキマキーレー」と箒、塵取りを使いました。「スキマキーレー」で棚下のゴミを通路へ掃き出して箒で集めますが、この時の鬼門は箒の先端にホコリを絡ませないことです。ホコリが先端に絡まると箒の振幅によって逆にホコリを散らしてしまいます。次に、集めたゴミは棚の番号ごとにパッキングしました。これらは午後の顕微鏡観察のサンプルになります。因みに角材やキャプション、梱包資材などの大きな落し物はパッキングしませんでした。

 午後の実習では実体顕微鏡を用いて収蔵庫害虫を探しました。採集したサンプルをトレーに展開し、害虫が含まれていないと判断した大きなゴミは再び袋に戻しました。その後に害虫が含まれていそうな砂粒やホコリをシャーレに移して顕微鏡観察を行いました。ホコリを解いたり砂粒を退かしたりする作業はピンセットを使い、見つけた害虫を別のシャーレに仕分ける際には先端を濡らした爪楊枝を使いました。個人的には1mm前後のサイズで特に爪楊枝が活躍した印象です。集めた害虫は薬包紙で包んだ後、棚の番号が書かれた袋に詰めました。

 ここからは本実習で見つかった害虫を記述します。前述の注意を踏まえた上で読んでください。アカアシホシカムシ(動物の骨や肉を食べる)、タバコシバムシ(乾燥した動植物を食べる)、ヒメマキムシ(カビを食べる)、ホソヒラタムシ(穀粉を食べる)、ヒラタキクイムシ、ゴキブリ(1齢)、シミ、ハエが見つかりました。代表的な収蔵庫害虫であるヒメマルカツオブシムシが見つからなかったという事実は僥倖でした。これらの害虫の生態と標本のターゲット、侵入経路については概ね判明しており、ドアブラシなどの物理的防除効果を石井学芸員に丁寧に説明していただきました。

 本日の実習を通じて、標本にとって物理的防除の効果が絶大であると学びました。標本が虫害を受けた場合は、なぜ被害を受けたのか、どこから来たのかをモニタリングすることが大切であると理解できました。また、これらの考え方がIPMに繋がるのだと身をもって経験しました。収蔵庫の管理に関する作業に携わることができ、大変貴重な経験となりました。