2025年度 秋期博物館実習 2班2日目(10月9日)

みなさんこんにちは!秋期博物館実習2日目のブログを担当いたします、北里大学のK.Kです。

2日目は、動物研究室の松井彰子学芸員によるご指導の下、魚類標本に関する実習を行いました。

具体的には、魚類の収集・保管、標本作製に関する説明をしていただいた後、収蔵庫への配架準備および配架を行いました。

 初めに松井学芸員から、「資料を整理し保管するのは、資料を誰でも利用できるようにするため」という博物館の役割を学び、その一端を担うという自覚をもって作業に臨むことができました。

 収集方法については主に採集や寄贈ですが、寄贈のペースが速いため、収蔵庫のスペースが足りないという現状を教えていただきました。解決策として廃校利用があるものの収蔵環境としては不適で利用できず、後世に残したくても残せない標本が生まれることが危惧されます。

 標本作製については、まず収集した資料を麻酔や解凍をしてから洗い、浮袋の空気を抜いて液体に沈みやすくするガス抜きをし、標本番号のタグをつけてホルマリンで2週間ほど固定してから70%エタノールで置換すると教えていただきました。重要な資料においては、遺伝子解析の依頼に備えて組織切片を固定して冷凍保存したり、固定後に色が消えても元の色が分かるように展鰭して写真を撮ったり、体長を測って台帳に記入したりするものの、全ての標本に対して行うことは時間的に難しいとおっしゃっていました。これらに加えて種の仮同定も行うとのことで、標本作製の工程の多さに驚きました。

 魚類標本の配架準備では多数の液浸標本を、標本台帳に書かれた種名・標本番号・採集地名を基に同種ごとに分け、プラスチック瓶に詰める作業を行いました。このプラスチック瓶は地震が来ても落下しないように、収蔵庫の棚の安全バーを通り抜けないサイズのものを使っているそうです。

作業の注意点は以下の3つです。

①省スペース化のため、魚のサイズに合った瓶に、同じ地域、海域、水系で収集された同種をまとめて詰めること。

②液面低下を確認しやすくするため、どのサイズの瓶であっても、70%エタノールを瓶の肩の部分まで必ず入れること。

③瓶の蓋には、標本台帳に記載されている種名・標本番号・採集地名を記入し、番号は小さい順に書くこと。

これらの作業を通して、より多くの標本を収蔵するための工夫や、乾燥チェックを容易にする工夫、今後地震が予想されている地域だからこそ必要な対策など、作業一つ一つを正確かつ丁寧に行う重要性を実感するとともに、標本に関わる方々の膨大な作業量に感服しました。

 最後は自分たちで瓶詰めした標本を収蔵庫で実際に配架しました。作業の前に、配架場所を誤るとその標本は二度と見つけてもらえない可能性があるため、必ずコンテナに同じ種の瓶がすでにあることを確認してから配架するようにという説明がありました。このお話を聞いた瞬間、実習生全員の背筋が伸び、標本を無駄にしないように2人1組でダブルチェックを徹底して配架したことがとても印象深かったです。

 収蔵庫内の魚類の液浸標本は、「魚類検索図鑑第2版」に基づいた順番で並んでおり、種名から科番号を索引で調べ、棚に貼られた科番号を見るだけで、求める種がどこにあるのかわかる仕組みになっていました。自力で瓶に書かれた種の配架場所を見つけたことで、最初に松井学芸員に教わった、「資料を整理し保管するのは、資料を誰でも利用できるようにするため」というお話を、身をもって体験し理解することができました。

1日を通して、多くの貴重な体験をさせていただきました。

 収蔵庫では、大阪の海や川、瀬戸内海で採集した標本の需要の高さに合わせて、同種であっても別のコンテナに分けて収蔵するという工夫がされていたほか、大阪湾で見つかった貴重な種の液浸標本も保管されていました。

このブログを読んでくださった皆様も、ご自身がお住まいの地域にどんな魚がいるのか、この機会に博物館へ足を運び、調べてみてはいかがでしょうか。