【実習記録】地質だけじゃない! 標本を通じて観る自然と人類【第四紀研究室】
秋気さわやかな季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
本記事では10月11日(土)、大阪市立自然史博物館にて行われた博物館実習について記録、紹介させて頂きたいと思います。

(実習生個人撮影)
10月11日午前 ―講義
当日はまず、収蔵庫での講義から開始しました。
私たちが訪問したのは「第四紀研究室」。曰く、生物系と地質系をつなぐ研究室だそうです。
第四紀…約260万年前~現在の、最も新しい地質時代を指す。
地球の歴史上、大陸並の氷床が存在する時代を氷河時代とすると伺いました。つまり、極地やグリーンランドに巨大な氷床が存在する現代は、長い地球の歴史で見れば氷河時代に該当するわけです。10月になっても半袖で過ごしている身としては、あまり腑に落ちない表現ですが、学芸員の方の話によれば、第四紀より以前、直近の氷河時代は数億年前になるそうです。地球史レベルの視点で見れば、現代も寒冷な部類に入る、ということです。
人類が誕生し、現代まで続く最も新しい時代ということで、自然と人類が互いに深く関与している第四紀を研究する第四紀研究室は、他の研究分野と隣接しており、「生物系と地質系をつなぐ」という言葉の通りだと言えるでしょう。
10月11日午前 ―実習
第四紀についての講義の後は、標本データ入力のための標本整理を実習しました。
収蔵庫に番重に簡単なラベルを付けて保存されていた地質標本について、その内容物について、番重外面の記載事項と併せて手書きで紙面上に書き出していきます。

(実習ノートより)
前日には、貝の標本のラベリングとデータ入力も行いましたが、この日の作業はそれ以前の段階。「博物館は何をどれだけ収蔵しているのか?」を明らかにするものでした。展示や企画、収蔵に手が取られ、整理に手が回らない問題は事前実習などで学習した内容ですが、比較的学芸員の数が多い大阪市立自然史博物館においても(当然施設規模が大きいこともありますが)、未整理史料問題の一端を感じることが出来ました。
作業自体は単純なものの、とにかく時間が取られ、人手の問題や、施設の維持管理も踏まえると、とても手の回ったものではない、といった印象です。来館者として博物館を訪れるだけでは、決して体験することのできない、貴重な時間になりました。
10月11日午後 ―講義
標本整理が終わり、午後はまた収蔵庫で砂についてお話を伺いました。大阪市立自然史博物館では、2010年ごろから、日本国内の砂浜の砂を収集しているそうです。
現代において、世界で最も消費されている天然資源は水ですが、それに次ぐのは石油などのエネルギー資源ではなく、なんと砂なのだそうです。
砂…主にコンクリート原料として、建設の現場に大量投入。SiO2(二酸化ケイ素)純度の高いものはガラス、半導体に加工され、現代において非常に需要が高い。
2000年までに人類が消費した砂の量を、2000~2025年の四半世紀において、既に同等量を消費しているのだとか。
砂の価値が暴騰することで、砂の違法収集で儲ける「砂マフィア」が台頭したり、単純労働であることから児童労働の温床となったり、それらで得られた金がマネーロンダリングによって各国に流入するなど、環境問題の枠を超えて、社会問題にも発展しています。
日本の砂浜も、再発達していたとされる明治期に比較すると半分程度に減少しているそうです。博物館が取り扱う「標本」は、自然を切り取ったものだと言えます。大阪市立自然史博物館は、標本≒自然を遺していくというミッションの下、砂の収集を始めたのだとか。
砂に限らず、大阪市立自然史博物館の博物館としての在り方、意義について伺えた一幕でした。
記録者:和歌山大学 M・S



