実習3日目3班:ボーリングコア・柱状図 (2026年度博物館実習夏期一般コース)
こんにちは.2026年度博物館実習夏期一般コース(8月19日~23日),3班の3日目を担当します,東京大学のY.T.と申します.大学では地球惑星科学を専攻しております.私からは第四紀研究室石井主任学芸員のご指導の下で行われた実習についてブログを執筆させていただきます.
この日のスケジュールは以下の通りでした.
09:30―10:15 アンケート整理
10:15―11:30 一般収蔵庫見学
11:30―15:30 ボーリング柱状図のデータ化
アンケート整理では,博物館開催のイベント「標本の名前を調べよう」の参加者アンケートの集計を手伝いました.年齢,目的,そして参加者がどのような媒体を経由してイベントに参加したかなどを収集して次に活かすそうです.
一般収蔵庫見学では,収蔵されているボーリングコア試料の紹介をしていただきました.ボーリングコア試料にはオールコアボーリングとノンコアボーリング(+サンプリング)の二種類があります.前者は,地面を筒状にくり貫いて採った,円筒状のコア試料のことで(ボーリングコアと聞いて皆さんが想像するような試料でしょうか.),連続的な地層を保存しています.一方,後者は地層全体を保存するのではなく,必要な部分のみを瓶詰め等でサンプリングしていき,地層情報は柱状図として保存します.
これらのコア試料は元は,大阪周辺の活断層(上町断層)の分布調査や,研究機関による調査,そして建造物の建設時の地盤調査などで採取されたものだそうです.また,大阪市都市整備局が採取したコア試料は大阪市立自然史博物館に自動的に収集・保管される仕組みが整えられており,過去約40年分の資料(通し番号1500件以上,コア数4000本以上)が保管されているそうです.大量の棚に大量の資料が保存されている様子は圧巻でした.
見学の中で,酸化的雰囲気下におけるコア試料保存の困難も知りました.現在の海洋環境は溶存酸素が良く溶け込んでいますが,海底の堆積環境は貧酸素的であることが知られています.そのため,有機物の分解は硫酸還元によって進行し,硫酸は硫化水素へと還元されます.生じた硫化水素は鉄イオンと反応してパイライト(FeS2)と呼ばれる鉱物になり沈殿します.よって,コア試料中にはパイライトが含まれていることがあります.大気酸素から隔離された空間である地面からコア試料を取り出した瞬間から,コア試料は大気に晒されパイライトの酸化が始まります.結果として,硫酸イオンが生成され,硫酸酸性のため保管箱の蝶番を腐食させたり,試料中に二次鉱物を形成してひび割れを起こしたりします.今回観察した試料中にも,貝化石が溶けて黄色い二次鉱物が生成している様子も確認できました.なんと,コアを取り出してから約半年程度で二次鉱物の生成を確認しているそうです.高知コアセンターのような冷蔵・冷凍保管設備があれば,より長期間元の状態を保ったまま資料保存が可能ですが,現実的に難しいところです.とはいえ,資料の劣化が進んだとしても,無いよりはましであることは間違いなく,まずは収集することが基本なのでしょう.
さて,午後からはボーリング柱状図のデータ化作業に取り組みました.ボーリング調査の結果は,プロジェクトに関する情報(調査名,日時,掘削機等)や地層に関する情報(深度,岩石名,色調,N値等)をまとめた柱状図が紙媒体資料で保存されています.この柱状図は手書きではなく,書かれている情報も基本的には統一されていますが,調査会社ごとに異なるシステムで管理されているそうで,データの互換性がありません.そこで,ボーリング柱状図をデジタルアーカイブ化するために,紙媒体資料に書かれた情報を手入力でデータ化する作業を行いました.柱状図は1次元のデータですが,様々な地点の柱状図を統合することで,2次元あるいは3次元の地質図を作成することができます.石井主任学芸員はこれらの資料を活用して,教育活動に活かす取り組みをされています.大阪にある学校周辺の地質図を作成・配布し,教育利用してもらっているそうです.10件/年程度の利用相談があるそうです.日本では地学教育がなかなか普及していないことが指摘されていますが,このような形で教育活動に貢献できるのかと大変興味深かったです.本実習ではご指導賜り,大変お世話になりました.


