2023年度夏季博物館実習3日目(8月25日)
みなさんこんにちは!三重大学のI.R.と申します。
実習3日目になる本日は松井学芸員ご指導の下、魚類の液浸標本の作製と、それらの収蔵庫への配架を行いました。
みなさんは液浸標本とはどんなものかご存じでしょうか?
一般に昆虫などでイメージされるようなカサカサに乾燥した生き物をピンで固定して観察のために保存する乾燥標本とは違って、生き物をホルマリンやエタノールなどの薬品で満たした容器の中に入れて保存する方法です。液体に漬けて置いておくので、魚類などの柔らかい体を持つ生き物の標本を作るのに適しているのです。
ですが、ただ魚類を薬品に漬けるのではありません。その魚類がどこで採れた何という魚なのかをはっきりさせておく必要があります。そうしないと、後でその標本を探そうと思っても、手掛かりが少ないために探しようがなくなってしまうからです。ですので、まずは標本番号を記した布製のタグを魚類に付けなくてはなりません。このときに重要なのが、そのタグをつける場所です、魚類は観察をしやすくするために体表の左側を綺麗な状態にしておかなければなりません。ですから、タグをつける場所はほとんどの場合その反対側、体表右側になります、裁縫針のような針に糸を通して、魚の口からえら口に糸を通し、その糸にタグを通して糸を結ぶことでタグ付けを行います。
そこまで行った後、標本を入れた容器薬品を満たし、蓋に標本の種名とそれの採取場所を記載します。このようにして一つの液浸標本が出来上がるのです。
今回作成した液浸標本の数は体感で少なくとも40から60といったように感じましたが、これらを複数人で分担することで今回はやり遂げることができたものの、もっと大量の標本を作製すると考えると、なかなか果てしない作業だな、と感じました。
液浸標本を作製した後はそれらを収蔵庫へと収める配架作業を行いました。標本の数はかなり多いと感じていたのですが、いざ標本が保存されている収蔵庫へと向かうと、その標本数に驚きました。見渡す壁がすべて標本でできているかと感じるほどでした。標本は等間隔に並べられた収蔵棚に科や種ごとに収められており、作成した標本に記載されている種名や採集地をもとに、その標本が配置されるにふさわしい場所に配架を行います。
配架作業の中で最も印象に残っているのがハゼ科の配架作業を行ったときのことです。ハゼ科は魚類の中でも特に多い種が存在しているとされ、収蔵棚の端から端までハゼ科の標本が並べられていました。ハゼの標本一つをふさわしい場所に配架するのに非常に時間がかかってしまったことはよく覚えています。
今回、このような作業を行ったことで、また一つ博物館を見るときの視点が増えたように感じます。このブログをご覧になっているみなさんも、液浸標本を見たときには上で書いたような作業を想像しながら見てみると普段とは違うことに気づくことができるかもしれません。