2024年夏期博物館実習3日目(8/23)

こんにちは!楽しい博物館実習も折り返しの3日目、今回の実習生日誌は京都大学のS・Mが担当させていただきます。

夏期の博物館実習は一般実習コースと題して、学芸員さんの普段の仕事を見学・お手伝いします。大阪市立市自然史博物館には動物・昆虫・植物・地史・第四紀の5つの研究室に各2~3人ずつ学芸員さんが所属され、日々多様な業務をこなされています。中でも本日は第四紀研究室の中条先生のご指導のもと、収蔵庫見学・剥取り標本作成・友の会イベントに利用するクイズの批評・新規作成・意見交換をしました。

・実習の流れ

9:30~9:45 収蔵庫へ移動、自己紹介

②9:45~10:20 剥取り標本についての説明

③10:20~11:30 剥取り標本作成

④11:30~12:30 昼休憩

⑤12:45~14:15 友の会イベントのクイズ評価・作成

⑥14:15~15:30 意見交換

①中条先生は地層研究の傍ら大阪市文化財協会と協力して大阪の古地理についても研究されており、その一環として今回剥取り標本にするのはJR新今宮駅の北側にある恵比寿遺跡の標本です。

②剥取り標本は以前は専ら考古学の分野で使用されてきましたが、阪神淡路大震災後の大規模な活断層調査も寄与して、展示対象として化石を主に扱っていた自然系地学の分野においても地層そのものの構造を展示に活用する流れが広がってきたそうです。水の流れた後の縞模様や粒子の並び方がよく見える剥ぎ取り標本は、コンピューターで画像解析することで現地に行くのと同じくらいの情報量が得られます。特に大阪のような開発の盛んな場所ではアクセスの難しくなる地層を残しておくことに価値があり、さらに現地では気づかない発見を後から検証できるというメリットもあります。ただし、剥取り標本にできる土地は比較的新しいもの且つ岩石状態でないもの、など限りがあることにも留意しなければなりません。一長一短です。剥取り標本の管理方法は担当学芸員に一任されているようで、つくづく責任の多い仕事だなぁと思います。

③作成手順は、下から新聞紙(床に接着剤がつかないように)→パネル→接着剤→剥取り標本(接着力を高めるため寒冷紗や網戸を下に敷く)→新聞紙→おもしを順に載せて、1日待って完成です。接着剤作成が案外骨が折れる作業で、2種の接着剤に粘性を高めるためガラス粉を混ぜるのですがそのガラス粉がなかなかの量。最初はサラサラしていてパネルに塗ってもすぐ流れてしまいそうで、ツノが立つまで混ぜ入れるのにかなり時間を要しました。それにしてもバックヤードでの作業は本当に暑いです。6人でやっても限界でした。

左:接着剤に剥取り標本を置くところ 右:接着剤をパネルに塗るところ(ツノ立ってます^^)

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⑤午後からは小学校低学年の子どもたちを対象にした博物館ナイトウォークで、某イベント会社から提案された既存のクイズについての評価・修正と、実習生一人ずつがクイズの新規作成をしました。クイズを考える上で気を配るべきポイントは2つ!

・小学校1,2年生が解いて理解できるものか?

・参加者の今後の学びにつながるようなものか?

子どもと大人はそもそも目線の高さから違います。内容だけでなく展示の見え方にも注意するのが私にとっては非常に新しい試みでした。作成したクイズの教育的価値を考えつつ展示室を歩き回っていると、一般来館していたファミリーの動きを見て思うことがありました。博物館体験というのは同行者の行動にかなり偏向されますね。子どもは特に。何か興味を引くものがあっても、どうしても親に指差されたものの方に多くの時間を費やしてしまう。心に留めておこうと思います。

⑥意見交換をすることで、広い視野を持って考えたはずの自分の評価に欠点がちらほら見つかり、改めて他人の靴を履くことの難しさを実感しました。個々の志向によっても重点を置く展示が異なり、面白い時間でした。