標本の作り方.
ハチの標本は基本的に展翅や展足を必要としません.これは展翅や展足をすると顕微鏡下で観察するときに見えにくい部分ができてしまうからです.大型種は針をさし,小型種は台紙に貼付けた状態の標本にします.
針さし標本の場合には採集した日のうちに中胸背板のやや右寄り,肩板の内側に針をさします.前脚の付け根に針が刺さると,脚が抜けてしまうことがあるので気をつけます.腹部と脚はだらりと垂れさせておき,翅はやや開き気味にしておきます.後でラベルをつける時に脚が邪魔になりそうであれば,小さく切った紙を標本の下に刺して腹部と脚をその上にのせておきます.この状態で乾燥させます.

sankakushidaishi
小型種は採集から帰ってすぐに三角紙に翅をたたんだ状態で入れ,防虫剤を入れた紙箱などに入れて,1週間ほど乾燥させます.標本は三角台紙に貼りつけ,さらに台紙を3号程度の太い針で刺して作制します.多数の個体が得られたときには三角紙に入れる際にある程度ソーティングをしておくと整理が楽になります.


host
他の生物標本と同様に標本作成の際に最も重要なのはラベル付けで,これを忘れると資料としての価値がなくなってしまいます.最低,いつ,どこで,誰が,飼育の場合はホスト,トラップなどを使ったときには採集法をデータラベルとしてつけるようにします.また飼育個体の場合,ホストやマユなどが得られますが,これもゼラチンカプセルなどに入れて一緒に針に刺しておきます.特に後に幼虫の頭部の形態などを調査する場合もありますので拾い残しがないように気をつけます.


幼虫,サナギは基本的に液浸標本にします.生きた幼虫やサナギをそのままエタノールに入れると体が黒ずんでしまったり,変形したりするので,まず固定液で固定してから,80%エタノール中で保存します.固定液にはカルノア液()やパンプル氏液(氷酢酸440%ホルマリン695%エタノール15+蒸留水30)などがあります