2016年秋期学芸員実習 2日目
アフリカヘラサギとクロトキの属間交雑個体、国内の記録が少ないカワリシロハラミズナギドリ、希少種のミゾゴイ。
これらは、本日の学芸員実習で触れた仮剥製の面々です。大阪市立自然史博物館には多種多様な資料が持ち込まれますが、まさしくそれを印象付けるような強烈なラインナップでした。
学芸員実習2日目は班に分かれ、学芸員の指導に従い専門分野ごとの作業に従事します。我々の班は、動物研究室の和田学芸員の指導のもと鳥の仮剝製整理、及びザトウクジラの骨のラベリング作業を行いました。
仮剥製の整理とは、既に完成した仮剥製のふしょに標本カードを結わえる作業です。
カードは、博物館資料と台帳を番号を介して結びつける重要なものであり、脱落しないように結ぶことが肝要です。標本カードを見ていて、大阪市立自然史博物館に持ち込まれる資料はさまざまな地域から送られたものである、ということに気づきます。例えば、大阪府内で拾得されたハシブトガラスやドバトの死体、南西諸島で拾得されたシロハラの死体、天王寺動物園で死去したペリカンの死体など、その来歴は実に多様です。
収蔵スペースや仮剥作成にかけられる時間は有限であることから、収集努力量をどのように振り分けるべきか、という点に興味を持ちました。
博物館周辺で拾得された資料は、その他の資料と比較して「地域の自然史を代表する資料」としての側面を持ちます。例えば、対象地域にどのような生物が生息しているかを知る際には、あるいは対象地域の保全活動を推進する上でのレファレンスや普及活動のツールとしての価値を持ちえます。
一方で、遠方で採集された資料を大規模な博物館が集約的に管理することは、分類学や系統地理学の礎となりえます。博物館資料から隠蔽種候補を抽出したい、計測値を得て形態的特徴を比較したい、DNAサンプルがほしい、といった場合には複数地域の資料を同時に比較検討できる環境が望ましいでしょう。
ただし、どちらについても博物館資料としての価値にトレードオフの関係があるように思えます。立山で採集されたカヤクグリの死体は、立山周辺の博物館、あるいは都市の大規模博物館、どちらに寄贈されることが博物館資料としての価値を最大化できるのでしょうか…?
ここでまた議論すべきであるのが、仮剥製作成技術を持つ学芸員が少ない、ということです。
寄贈された死体を適切な方法で資料化、長期管理できないようであるならば博物館資料としての価値を損なうでしょう。
私の結論として、各博物館で、仮剥製技術を持つ学芸員や収蔵スペースの有無、地域の自然史資料の収蔵数、論文化/普及啓発活動実績などの情報を共有し、それに見合った管理を行うことが博物館資料としての価値を広域的に最大化できるのではないか、と考えました。
同時に、鳥類の計測値情報は非常に貴重であるので何かしらの形(データペーパーや博物館紀要など)で公開されるのが望ましいと思いました。