冬期博物館実習 (2019/1/17)
館園実習4日目でした。
個人的メインイベント、植物標本に関係する実習でした。植物標本とは、麗しの植物たちの一部をカラカラに乾燥させ、台紙にテープで貼り付け、長期間保存できるようにしたものです。まずは、植物の乾燥方法、マウント (台紙への貼り付け) の方法、標本登録、ソーティング、配架の説明を受けました。植物標本の例として見せていただいたキンショクダモの標本の美しさと言ったら、もう、この世のものとは思えません。アオダモと比べるとその違いは一目瞭然。学術的価値と同時に美しさを兼ね備える標本には、目を見張ります。そのほか、大阪市立自然史博物館にはあらゆる植物の標本が保管されています。
説明の後は、実際に大阪市立自然史博物館に寄贈された植物標本たちの仕分け作業を行いました。植物は乾燥してもなお、虫たちの生命を育みます。ところが、美しい植物の姿を残しておきたい人間としては、虫に食べられた標本は取り除かなくてはなりません。寄贈されたもののうち、多くの植物標本は「虫に食われている」として取り除かれてしまいます。標本を保管できるスペースは有限であり、全てを残すことはできません。もちろん理解はできますが、取り除かれる標本たちを思うと悲しみが募ります…。
生き残りが決まった植物標本たちは、それぞれ採取された場所、日付などのデータを持っています。植物はデータがなくても価値がありますが、博物館としては、データのない標本はただのゴミとして扱います。実習としての作業は、1つ1つの標本に付属するデータをパソコンに入力する作業を行いました。多くの場合、データは植物を挟んでいる新聞紙に書かれています。本来は、台紙に貼り付け、データを記載したラベルを貼り付けておくのが良いのですが、なにぶん面倒な作業です。私もなかなか自分の標本に対してラベル作成を行うことができません。今回は、新聞紙に書かれている文字があまりに芸術的なため、解読できないこともありましたが、なんとか割り当てられた分のデータの入力を終えることができました。
学芸員は、博物館たんけんツアーのガイドなどの華々しいお仕事ばかりではなく、標本の整理といった地道な作業も求められています。どれほどたくさんの物があっても、どこに何があるか分からなければ、利用のしようがないためです。整理し、検索できるようにするためには、標本の数が多ければ多いほど、時間と手間がかかります。植物標本も未整理のものがたくさんあります。気の遠くなるような、果てしない作業を、学芸員はこなさなければなりません。しかしながら、植物という自然の芸術、至高の美に囲まれながら時間を過ごすことができるというのは、学芸員の特権でもある、と感じました。
(G大学 K. H.)