2018年度 博物館実習冬期一般コース5日目(2019/01/18)
博物館実習の最終日、4班の担当をしてくださったのは、植物研究室のS先生で、植物のなかでも特にキノコを専門に研究なさっている学芸員さんでした。
S先生のもとでの実習は、特別収蔵庫内のキノコおよび植物標本の紹介から始まりました。大阪市立自然史博物館のキノコの場合、乾燥標本として標本が作られているのがほとんどなのだそうですが、最近ではフリーズドライ(真空凍結乾燥技術のこと)した標本も作られているそうです。
収蔵庫には約2万点のキノコ標本が保管されており、その大部分はアマチュアの方々や大学の教授などから寄贈されたものだということでした。所有者がなんらかの事情で手放さなければいけなくなったものも、処分されてしまうならと博物館で引き取ることも多いそうです。その中には本郷次雄さんという滋賀大学名誉教授が生前に残された標本や、同教授がキノコ図鑑を作る際に描かれた、キノコの原画なども収蔵されています。この原画は現在、スキャンしてデジタルデータ化している途中だとおっしゃっていました。
収蔵庫から実習室に移動し、関西菌類談話会というアマチュア団体の方々が斑尾高原(新潟県と長野県の県境にある高原の森)で収集された、キノコ標本のデータ入力作業をしました。
チャック付きポリ袋の中に、キノコと一緒に入れられたラベルを見て、キノコの名前を確認し、その名前をパソコンに入力していくという簡単な作業でした。ただ、ここである問題が…。先生が持ってきてくださったパソコンがMacだったので、Windows慣れしている私たちには操作方法がイマイチ分からなかったのです。Macとしばしの格闘をしなければなりませんでしたが、先生の助けも借りて無事データ入力は終了しました。
作業終了後は、キノコについての少し専門的な知識を教わりました。また、「ハツタケ」というキノコの組織の一部(担子器)を顕微鏡で観察させてもらいました。
お昼休憩のあとは、香川県の高校教師の方が生前に記録なさっていたというキノコの図版を、スキャンしてデジタルデータ化するとともに、図版に書かれた情報をパソコンに入力していくという作業をしました。今度はWindowsの入ったパソコンを用意してくださり、作業は順調に進みました。そうして膨大な量のほんの一部ではありますが、デジタルデータ化を終え実習は終了しました。
学芸員には、「この標本・資料を自分が後世に残していくのだ」という強い意志を持つことがいかに大切かを今回の実習を通して学びました。博物館なのだから、残して当たり前だとおっしゃる人もいるかもしれません。しかし、博物館は常に人手・資金不足と戦っています。学芸員さん達が身を粉にして働いて研究して、そしてあれだけの収蔵庫の中身が出来ているのだと思うと、学芸員の仕事は並大抵の努力で務まるものではないと分かります。
ただ、そんな苦労があるにもかかわらず、学芸員さん達の目は子どものようにキラキラ輝いていて、なにより自分の仕事に誇りを持って働いてらっしゃる姿がとても素敵でした。
座学だけでは決してわからない、学芸員の実際を教えていただき、様々なことを学ばせていただきました。5日間本当にお世話になりました、どうもありがとうございました。
(4班 O阪大学 S.S)