2020年度 冬 博物館実習 3日目
こんにちは、博物館実習3日目のブログ担当のK.Tです。本日は植物の標本と標本庫、資料管理・保存への市民参加への説明を受けた後、データラベルの作製実習を行いました。
植物の標本には押し葉標本、液浸標本、封筒包み、果実、種子、木材だけで管理するなどさまざまなものがあり、用途や目的、種類に応じて標本がつくられ、これらの標本は標本庫で管理されています。標本庫に収蔵されるまでの流れは植物の採集、押し葉づくり、同定、ラベル作製、 状態チェック・燻蒸、マウント、データベース登録、ソート・配架となっています。燻蒸とは、標本が虫に食べられないようにすることで、大阪自然史博物館では標本をマイナス30度の冷凍庫に2週間入れて殺虫しています。これらの作業の中で特に重要だと思ったことはラベル作製です。ラベルを伴ってはじめて標本となり、いつ、どこで、だれが採ったかという情報は基本となる絶対に必要な情報となります。加えて、色や生育環境など標本にすると残らないような情報を残すことが大切であることが分かりました。
標本にはさまざまな使われ方があります。植物や動物が新種で見つかったときに基準となるものが標本で、それをもとに外部形態を比較して研究をするというのが標本の最初の基本的な使い方でした。時代が進むにつれて、ある生き物がある時ある場所で生きていた証拠になるという、分布記録や証拠標本としての考え方が生まれました。標本は生き物がその場所に存在していたという記録として残していくためにも使用されています。そして、標本は分析に使う資料としても使用され、DNAを調べたり、化学分析が行われています。標本にもDNAが残っているため、過去の情報を標本から引き出せます。最近では分析技術もあがっており、より詳細な解析ができるようになってきています。
今回の実習ではラベルを実際に読んで、データベースの入力作業を行いました。ラベルにはさまざまな情報が書かれており、どの情報が必要なのかを考えながら入力しました。中には採集場所が曖昧なラベルもあるため、採集場所をデータベースに登録する地点にするべきなのか、もしくは採った植物がどういう場所や環境に生える植物なのかを類推してデータベースに登録するのか、利用目的に応じて入力することが必要だと感じました。また、同じようなところ(場所・タイミング)に似た植物が生えていたときには、それも合わせてラベルに書かれていることがあり、これは形態的な比較の研究をしたいときに役立つということが分かりました。データベースに出す限りは適切な入力をしないといけません。今までその場所に記録がないと思われていたものが、書かれていたり入力されていた場合は、不適切なラベルの記入や読み取りの可能性があります。多くの情報が出るのはいいことですが、もとの標本を細かく検討することが大切であると思いました。そして、標本を採る場合には後の人が分かりやすいようなラベルをなるべく早く作って付けることが重要だと思いました。
自然史資料は多くあり、このような大量の資料をどうやって生かしていくかが問題となります。日本は学芸員で博物館を作り上げていくのが中心ですが、アメリカでは、博物館はみんなの公的なものとして、研究にも使えるようにオープンデータにしています。そして、市民の科学参加を促しています。アメリカの博物館のバックヤードで起きていることをプロジェクトとして、博物館で共同したシステムが出来上がっており、オンラインでの情報入力システムが作られています。具体的には、植物が好きな人、標本に興味がある人を募って市民参加で行うシステムがあります。誰もが均等に参加してくれる訳ではありませんが、博物館のバックヤードで行なっていることを説明する機会となり、博物館は単純に展示室で展示を見せるだけではなく、古い標本があって多くの作業が動いているということを知ってもらえるという考え方です。見えない活動は、存在しない活動になってしまうため、しっかり見せて理解を作ることで、博物館の存続にも繋がります。そして、アメリカでは標本を整理するための論文も出ており、博物館のデジタル化を論文にして発表していく学会があるということにも驚きました。日本でもこういったことは必要であると考えています。全国の博物館で資料のデジタル化を行い、活用していくには、市民の方の理解やサポートが必要になります。われわれも一市民として、市民参加でできる活動をしていきたいです。