2022年度冬季博物館実習3日目(1月9日)
高知大学のS.Fです。2023年冬期博物館実習3日目、1月9日の記録をします。
実習内容は博物館行事「はくぶつかん・たんけん隊」の補助です。普段は公開されていない博物館の裏側部分である研究室や収蔵庫を、学芸員による解説ツアーのもと小学生参加者が「たんけん」する、というプログラムの簡単なサポートを行いました。イベントは、午前と午後で参加者を変えての2セット構成であり、1つの行事の集合(開始)から解散(終了)までの流れを、1日で2回体験するものでした。
午前には小学校高学年を対象とした、博物館館内解説ツアーの補助を行いました。学芸員を先頭に、小学校5,6年生が博物館の一般未公開エリアを見て回るのに同行し、ツアーを滞りなく進めるための順路の確保や簡単な声かけ等が、実習生の役割です。
ツアーは、教員が一方的に話しをして生徒がそれを黙って聞く、といった授業のような形式とは異なり、解説を行う学芸員と参加者の間では頻繁にやり取りがあります。参加者である子どもの年齢が低いほど、学芸員と子どもたちとのコミュニケーションが盛んにおこなわれる印象を受けました。学芸員からの声掛けや問いかけには、はじめて見聞きするものがたくさんある、刺激の多い条件下での子どもたちの視野をぎゅっとしぼる効果があります。その点「なにを見せるか」という意味で学芸員の質問や問いかけの内容には注意が払われる必要がることがわかりました。
午後には、同様の補助を午前と異なる学芸員の小学校低学年向けのツアーにて行いました。午前に見た高学年と比較すると、低学年でのツアーでは学芸員と参加者間のやり取りにおいて、子どもたちが何かアクションを起こし、それに学芸員が応えるという形式の繰り返しで話しがすすめられることが多い様子でした。大人が大人に説明や解説をするときには、聞き手に対して話し手が話題の方向性を決め、解説を行う人間が主体となり話しを進めますが、今回のツアーの様に解説の聞き手が小さな子どもの場合には、子どもたちのアクションや学芸員への投げかけが、話題の出発点になり、解説の構成を決定していました。話題の舵取りを学芸員ではなく、本来は聞き手である子どもたちが行っている点が、午前のやり取りの形式とは異なりおもしろかったです。
本来の話し手が聞き手になっているこのような場合、解説者は話したいこと話さなければならないことに固執し、聞き手をコントロールしようとすることにエネルギーを注ぐのではなく、本来の聞き手である子どもたちによって話題の発起点として選択され得る子どもの目に映るものに、気を配る意識を持つことが重要に思いました。
午前と午後とで別の学芸員の博物館ガイドを聞くことができるという実習プログラムは、学芸員の専門分野によって同じツアーでも切り口が違うため、博物館とはどういった場所なのかを考えてみるうえで、勉強になりました。実習内容は引率学芸員のサポートと参加者の安全管理と伝えられていましたが、行事の補助という立ち位置をさせてもらうことで、主催者である学芸員の視点と、参加者である博物館に来る人の視点、双方から今回の行事のような博物館による普及教育事業について、学び考える機会を与えていただいたように思っています。