(2)資料の収集保管
調査研究と並んで、博物館の重要なインプット部分です。博物館は、展示用というよりはむしろ研究用として多くの資料を収集しています。資料を収集して、きちんと保管するのは、博物館の重要な仕事です。でも収集した資料をきちんと標本にして、整理して、長期にわたって保管するというのはたいへんな作業です。私の専門は鳥ですが、人手不足のため哺乳類も担当しています(両生類と爬虫類は、魚類担当に押しつけています)。
●鳥の標本の収集:鳥を捕まえて殺しているわけではなく、いろんな人に呼びかけて死体を届けてもらっています。
●鳥の標本の作製:皮が腐っていなければ、皮を剥いて仮剥製を作り、中身は液浸標本にします。けっこう時間がかかります。お金のある博物館は、標本作製の専門家を雇ったり、専門業者に依頼したりします。1羽の仮剥製は安くても数万円するので、貧乏な当館ではそんな予算はないので、学芸員が標本化します(たとえ、お金があっても担当分野の標本を作れない学芸員はちょっとあり得ないと思います)。冷凍室には仮剥製になるのを待ってる死体が数100点以上たまっています…。
●鳥の標本の整理・保管:鳥の標本はあまり多くないけど、それでも登録されているだけで約9600点(2026年4月現在)。仮剥製・本剥製の多くがどこにあるのかは把握していますが、近年の仮剥製は整理が充分できていません。それどころかラベル作成が追いついていません。液浸標本は、中大型のものはかなり整理が進みましたが、小型の整理はこれから。鳥の巣コレクションは整理は完璧、その他の鳥の巣はまだ未整理。卵と骨格標本は、何が何処にあるかをだいたい把握しているだけ。
長期的に保管するには、虫に食われないように防虫剤を補充したり、液浸標本にはアルコールを補充したり、気を使ってやらなければなりません。
●哺乳類の標本の収集・作製:鳥が専門なのですが、人手不足のため哺乳類も担当です。鳥と同様いろんな人に呼びかけて死体を届けてもらっています。
●哺乳類の標本の作製:皮が腐っていなければ皮をはぐところは鳥と同様です。哺乳類の場合は、骨の標本(特に頭骨)が大切なので、骨格標本も必ず作ります。ただし小さい動物などでは、皮を剥いた中身をとりあえず液浸標本にしていることもあります。剥いた皮はなめしてフラットスキンにします(小型哺乳類は仮剥製にするのが普通)。中身は埋めたり水に浸けたりして肉を除去し骨格標本にします。標本の作製には時間がかかります。とくに皮の処理はとどこおっていて、冷凍室に数100点の皮がたまっています。
●哺乳類の標本の整理・保管:哺乳類の標本もあまり数は多くなく、約4200点(2026年4月現在)しかありません。骨格標本の整理は比較的できているのですが、皮の整理はまったくできていません。登録・整理待ちのまとまった骨格コレクションもあります。
毛皮や剥製の保管は虫に食われないように防虫剤を補充したり、液浸標本にはアルコールを補充したり、気を使ってやらなければなりません。骨の保管は、気楽なもんです。
●両生爬虫類の標本の収集:両生爬虫類も専門ではないけれど、担当です。標本の作製、登録、整理、保管は、魚類担当の学芸員がやってくれるので、生きてる間を担当。つまり、捕まえてくる担当です。
(3)普及教育
博物館のアウトプットの一つ。展示と並ぶ、直接的な市民サービスです。いろんなことがあっておもしろいのですが、結構時間をとられます。
●市民からの質問への対応:電話や電子メール、来館者からの質問に可能な限り答えます。近ごろは、SNSでのやり取りも増えました。意外と単純な質問ほど、答えるのが難しく、調べるのにほとんど1日かかることもあります。鳥の質問はもちろんですが、哺乳類や両生爬虫類の質問もまわってきます。鳥の質問にはそれなりに簡単に答えられるのですが、哺乳類や両生爬虫類の質問の場合は、文献を調べまくって右往左往します。研究者の知り合いにSNSやメールで問い合わせたりもします。
●観察会や実習などの普及行事:それぞれの学芸員が自分で企画して、実施します。案内をだして、申し込みを受け付けて、名簿を作って、下見をして、資料を作って、実施後には報告を書いて、と行事本番の前後にかなりの手間がかかります。でも行事自体は楽しいものです。
鳥類が専門なので、鳥の観察会もしますが、カエルの観察会もしますし、ムササビやシカなどの哺乳類の観察会も企画します。野外に出てしまえば、鳥類を中心に、哺乳類や両生爬虫類も見つけては説明することになります。
行事本番では、専門的な解説だけでなく、受付や安全確認など、観察会リーダーとしての仕事もあります。
学芸員がほぼ個人で企画・運営する行事以外に、複数の学芸員を動員しての行事もあります。近年では、夏休みの教員のための博物館の日、標本同定会、1月の博物館たんけん隊、友の会総会などです。
●講演:オープンセミナー(かつての自然史講座)というのが、ほぼ毎月1回あります。学芸員が交代で(時に外部から講師を招いて)、自分の研究内容に基づいて、市民向けに2時間程度話をします。だいたい一年に一度は担当になります。
その他に、頼まれたりなんやかんやで、講演をする機会が年に数回はあります。
●カウンター当番:博物館本館に入ってすぐ右側にミュージアムサービスセンターがあります。開館日には、ここのカウンターに学芸員が一人座っています。2001年4月に情報センターができてからは、土日祝には情報センターのカウンター当番もあります。
カウンター当番は、基本的には展示などに対する質問に答えるのが仕事です。自分で答えられない質問の場合は、担当学芸員を召喚したり、伝言したりします。その他、コンピュータ端末のトラブルに対処したり、小中学生向けの企画の対応もあります。
●友の会の運営:自然史博物館友の会は、当館の普及教育事業の中心になるもので、学芸員はみなその運営に関わっています。年に1回の総会と年に5回程度の評議員会、および日常的なことは友の会担当学芸員(1年任期で順番に当たります)がおもに担当します。
毎月1回の月例ハイキングは学芸員1人と評議員で担当します(一年に一度程度は担当になります)。総会や秋の集い(月例ハイキングの拡大版のようなもの)のような大きな企画になると、多くの学芸員がかりだされます。また通常夏休みなどに実施される2泊3日程度の合宿には、友の会担当のほかに都合がつく人が何人か行くことになります(コロナ禍があって2024年現在、合宿は休止しています)。
●ミュージアムショップの運営:ミュージアムショップは委託されているのですが、その博物館側の窓口担当です。グッズなどの販売物をチェックするのが主な仕事です。とくに書籍のセレクトには大きく関わります。ショップとはいうものの、商品を通じての普及教育事業の一環という位置づけで、とくに本の販売は普及教育の要素が強くなります。それだけにどんな品揃えにするのかは大切です。
●サークルや研究会などの世話:すべての学芸員が、友の会以外にも、さまざまな自然史関係のサークルや研究会の運営に関わっています。事務局をしたり、例会を世話したり、会報を作ったり、発送作業をしたり、関わり方はいろいろです。
ちなみに現在担当しているサークルは、博物館とのつながりが密接なものだけでも、大阪鳥類研究グループの事務局、友の会読書サークルBooksの世話役、ジュニア自然史クラブの副部長、なにわホネホネ団の事務局長があります。
●フェスティバルなどのイベントの運営:2003年以降、ほぼ毎年、大阪自然史フェスティバル、大阪バードフェスティバル、ホネホネサミットなど、大規模イベントが開かれるようになりました。大阪バードフェスティバルや、ホネホネサミットが開催される場合は必ず主担当になります。大阪自然史フェスティバルの場合も、なにかしら担当になってきました。
●博物館実習の担当:2014年度から2025年度まで担当でした。日程を告知して、大学からの申込みを受け付け、人数を調整して、大学と受入のやり取り。実習生がやってきたら、初日にオリエンテーション、途中に何日か担当して、初日と担当日には実習ノートのチェックとコメント。最後には終わってからは、実習ノートの確認をして、大学向けの書類を整えて、返送。博物館実習を受けても学芸員になる人はまずおらず、そもそも博物館実習を受けても学芸員の能力を保証しない。博物館としては、学芸員や博物館をよく知ってもらう普及教育の機会と考えて対応しています。
●ホームページの作成:博物館全体のウェブサイトは、さまざまな資金を使って、プロにお願いするようになっています。が、学芸員もその更新に関わっています。この「和田の鳥小屋」は私は趣味のようになってきましたが、たぶんこれも普及教育事業の一環です。
●メーリングリストの世話:インターネットへの接続して、ホームページを開設しただけでなく、1998年12月からは博物館のメーリングリストomnhを開設しました。かつては、毎日10通近くのメールが飛び交っていました。現在は、オンラインでのやり取りの中心はSNSに移っていて、静かになってきました。
●SNSでの情報発信:メーリングリストどんどん下火になっている一方で、SNSが拡がってきました。そこで、TwitterやFacebook、Instagramの個人アカウントからの情報発信や交流を行っています。博物館アカウントからは、他にLINEとYoutubeからのまで加わっています。それぞれに博物館の公式アカウントがあります。いずれもこれも普及教育事業や広報の一環です。
●調査研究でも書きましたが、博物館友の会会報Nature Studyなどの普及誌に、普及教育目的の文章を書く機会がけっこうあります。
●出版物の製作:自然史博物館では、研究報告、自然史研究、収蔵資料目録、展示解説orミニガイド、特別展解説書、館報を毎年発行しています。
館報は該当部分の原稿を出すだけ、特別展解説書も編集担当や主担にならなければ、関係部分を執筆するだけ。研究報告と自然史研究を書くかは、各学芸員の自由ですが、できれば2-3年に1本程度は書きたいところ。収蔵資料目録やミニガイドは、自分が作りたいテーマなり材料があれば、手を上げるといった感じ。自分でやると言い出して、後で後悔するというパターンが多いような。
1999年度はミニガイドNo.18「街で繁殖する鳥」を製作しました。収蔵資料目録は、2002年度に「川村多実二鳥類コレクション 旧宝塚昆虫館所蔵鳥類仮剥製標本目録」、2023年度に「小海途銀次郎鳥の巣コレクション ー日本の鳥類の繁殖 巣と営巣環境の記録ー」を製作しました。