長居植物園案内(8月)
新型コロナウイルス拡大防止のため、3月から植物園案内を中止していましたが、4ヶ月ぶりに再開しました!参加者同士の距離を保ちながら、暑い中での実施だったため、通常よりも短めに観察しました。(佐久間・横川)
◆サンゴジュ(ガマズミ科)
赤い果実がなっていました。果実だけでなく果実がつく柄も赤くなるようです。サンゴジュの実は完熟すると黒くなり、鳥に食べられますが、今日はまだ黒くなった果実は見つかりませんでした。赤と黒が混ざった二色表示は果実を食べて種子を運ぶ鳥への強いアピールになるようです。よく見ると果実がなっている枝に糸が絡まりついていました。これはマエアカスカシノメイガというガの幼虫が糸で巣を作ったものです。
サンゴジュの葉と果実
マエアカスカシノメイガによる営巣
◆エンジュ(マメ科)
白い花が歩道にたくさん落ちていました。上を見上げてみたら、エンジュの花が咲いていました。落ちている花を拾って花の形を観察してみると、エンジュの花はマメ科に典型的な、旗弁・翼弁・竜骨弁(舟弁)からからできています。竜骨弁を押し下げてみると中から雄しべが出てきます。高いところで咲いている花をよく見るとクマバチなどが訪れていましたが、花に来た昆虫がうまく竜骨弁を押し下げて花粉を体につけるのでしょう。果実はまだなっていませんでしたが、秋以降になるとジューシーな莢をつけて、鳥が食べにやってきます。
地面にたくさん落ちたエンジュの花
エンジュの花。高いところに咲いていた。
落ちていたエンジュの花
◆ユズリハ(ユズリハ科)
ちょうど前年の葉が落ちつつある様子が観察できました。枝の先の今年に出た葉は元気そうですが、その少し下の前年に出たと思われる葉は垂れ下がって元気がありません。このように今年の葉が出たあとに、前年の葉が譲るように落葉することから、家が代々続くと見立てて縁起物とされることがあります。枝をよく観察すると芽鱗痕が残っており、その位置関係から、いつ伸びた枝なのかが推定できます。実際にユズリハの枝を見ながら、何年前の葉まで残っているか観察してみると、昨年の葉はまだ多く残っていましたが、一昨年前の葉は残っていませんでした。枝には葉が落ちた痕も残っており、細かく経時的に観察していけば葉の寿命などが見えてきます。
ユズリハ。まさに譲ろうというタイミング。
芽鱗痕の位置から推定した枝の伸びた年。葉の元気さと枝の伸びた年が一致する。
◆ハマナス(バラ科)
たくさん「実」がなっていました。少しだけ花も残っており、ピンクの花の株と白の花の株が見られました。野生のハマナスの花はピンク色で、北日本の海外に多く生えます。普通、子房が膨らんだものを果実と呼びますが、ハマナスの「実」は子房ではなく花托が膨らんだもので偽果と呼ばれます。割ってみると、中から種子のように見える果実が出てきました。これをさらに割ると中に種子が入っています。割って果実を観察してみると、先に花柱が残っており、これが花の真ん中の雌しべの集まりに繋がっていたのでしょう。花を改めてみてみると、雌しべの数がすごく多いことがわかりました。
よく実ったハマナス
ハマナスの花(ピンク)
ハマナスの花(白)
ハマナスの「実」
ハマナスの「実」の断面
ハマナスの果実
ハマナスの果実の断面。中に種子が入っている
◆ヒメイワダレソウ(クマツヅラ科)
バラ園の中で、地面に這うように生えていました。白くて丸っこく見える花を咲かせていましたが、これはよく見ると小さな花が集まったものです。リッピアなどの名前でも売られている外来植物で、這うように葉をつけるので緑化用の植物として使われます。長居公園でもよく見かけます。
ヒメイワダレソウ。長居公園で撮影
ヒメイワダレソウ
◆タイサンボク(モクレン科)
マグノリア園に入ってみるとタイサンボクの花序がたくさん落ちていました。切り口はきれいなので、どうも、熟さずに落としてしまったようです。落ちている花序を拾って観察してみると、くるりと巻いている雌しべのあとが見られ、雌しべの集まりの下には、赤いうろこ状が雄しべが落ちた痕が見られました。さらにその下には、花被片が落ちた痕がありました。花が咲いていたころの様子を想像しながら結実期の花序を観察すると面白いでしょう。
タイサンボクの葉と果序
落ちていたタイサンボクの果序
◆アラカシ(ブナ科)
ドングリのなる木としてお馴染で、春にはよく花を観察していますが、今年は植物園案内がお休みになったため見ていませんでした。枝先をよく見ると小っちゃいドングリがなっていました。アラカシは、春に枝先に花をつけて、その年の秋にドングリがなるので、ドングリも必ず枝先に付きます。だいたい1つの花序にドングリはよくついて3個までですが、1枝だけドングリが4個付いていました。
アラカシのドングリ