室内実習「植物の標本を観察する」
2025年2月2日(日)、室内実習「植物の標本を観察する」を実施しました。博物館が所蔵する標本は、展示されているものがすべてではありません。展示室には約6,000点の標本を展示していますが、収蔵庫にはその300倍以上の約200万点の標本を収蔵しており、未整理の標本を含めるとさらに多くなります。それらの標本は、日々研究され、活用されています。そんな標本研究の過程を体験しながら、標本の面白さや大切さを知ってもらうために、今回の「標本の観察会」を開催しました。

(行事開催前夜。奥にたくさん並んでいるのが今回みんなで観察した標本。)
はじめに、行事担当の横川が植物の標本研究によってどのようなことがわかるのかを話しました。皆さんが何気なく呼んでいる植物の名前も、実は標本に基づいた研究の成果であることを伝えたうえで、標本を使った最新の研究成果を紹介しました。

(最初の講義の様子。15分だけ話を聞いてもらいました。)
講義の後は、植物の標本がどのように台紙に貼られるのか、博物館の外来研究員・梅原徹さんによる実演を見ながら、さまざまな話を聞きました。標本を台紙に貼ることを「マウント」と言いますが、マウントには独特の道具や細かなコツがあり、興味深い話で盛り上がりました。

(外来研究員の梅原徹さんによる標本のマウントの実演。)
その後、収蔵庫に保管されている植物の標本を見ながら、標本研究にまつわるさまざまな話をしました。標本を見比べて植物の形態の多様性を実感してもらったり、標本のラベルから読み取れる多様な情報について話したりしました。顕微鏡を覗いて、標本からわかる近縁種の識別点を比べてもらいながら、正確な同定の重要性についても説明しました。また、観察した標本が具体的にどのような研究に利用されているのかも紹介しました。

(みんなで標本を観察している様子。関連する論文も参照しながら、標本の研究を体験しました。)

(顕微鏡を使ってよく似た植物の識別点となる茎の毛を確認している様子。一度しっかりと顕微鏡で観察すると植物の見え方が広がります。)
最後に、収蔵庫ツアーを行い、植物標本の維持管理の方法について説明しました。さらに、山積みになった未整理の標本も見てもらい、博物館が日々標本整理を進めている一方で、新たな標本が次々と寄贈されることも伝えました。途中、横川が「標本棚には分類体系順に規則正しく標本が配架されているので、植物の名前を急に言われても3分以内にその植物を出せます。よく知っている植物なら15秒で出せます」と話したところ、参加者の方から「ウシノケグサは出ますか?」とリクエストがありました。たまたまイネ科の棚の近くで解説していたこともあり、ちゃんと15秒で出すことができました。ウシノケグサの仲間の標本には最近新しい同定ラベルが貼られたため、そのラベルの解説をしながら、標本を使った研究についても話しました。

(収蔵庫ツアーの様子。)
少人数制の行事で、参加者の方には存分に植物標本と向き合ってもらいました。これからも、標本室と標本の面白さ、大切さを伝える企画を考えていきたいと思います。