長居植物園案内(8月)

新型コロナウイルス感染症拡大が続いており、2021年8月の長居植物園案内も中止でした。2021年8月11日に植物園の見ごろの植物を観察してきたので紹介したいと思います。
 
8月11日現在、長居植物園は開園していますので、来園されたみなさんの植物観察に役立てていただけると幸いです。また、行事が再開できるようになったら、植物園案内にお越しください!(横川)
 
 
◆ワルナスビ(ナス科)
ナス科の外来植物です。ちょうど花が見頃でした。白い花に大きな黄色い雄しべが5つ付いています。雄しべの葯が袋状になっており、その中に花粉が入っています。葯の先を見ると小さな穴が開いています。ナス科の花は花粉を運ぶハナバチ類が振動を与えて花粉を採集するとされていますが、ハナバチ類がやってきたときにこの穴から花粉が出るのだと思われます。長居植物園や長居公園にはワルナスビがたくさん生えていますが、茎には鋭い刺があり、触ると痛いので観察する際には注意してください。
 
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◆オキナワウラジロガシ(ブナ科)
長居植物園では様々なブナ科の植物が観察でき、秋にはいろんなドングリが拾えます。ハナガガシ、ツクバネガシ、オキナワウラジロガシが加われば、日本産の主要なブナ科が全部見られるのになぁと思っていたら、いつの間にかオキナワウラジロガシが植えられていました!博物館のすぐ東側のところです。まだ小さな木ですが、花を咲かせ、ドングリを付けるようになったら植物園案内で観察してみたいと思います。参考として、沖縄県の西表島で拾ったオキナワウラジロガシのドングリと長居公園で拾ったシラカシ・クヌギのドングリの比較写真を添えておきます。
 
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◆ジャカランダ(ノウゼンカズラ科)
南米原産の樹木です。ヘメロカリス園の近くに植えられた長居植物園のジャカランダはここ何年かで花がよく咲くようになり、低い枝でも花が観察できるようになりました。花盛りは5-6月だと思うのですがまだ咲いていたので少し紹介します。ジャカランダの花には5本の雄しべがあり、うち1本だけが長くブラシ状の毛が付いています。これは仮雄蕊と呼ばれ、花粉を作らない雄しべです。毛の位置は雌しべの柱頭に近く、受粉を助けているのかもしれません。花を観察できる機会があれば見てみてください。残念ながら今回は花が高い位置にしか咲いていなかったので花の細部の写真はありません。
 
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◆ヤブラン(クサスギカズラ科)
シャクナゲ園の近くにたくさん植えられています。花のいい時期は過ぎていますが、まだ花が見られました。紫色の小さな花を付け、6枚の花被片が付いています。未熟な黄緑色の種子がたくさん付いていました。丸くてみずみずしいので果実かと思いますが、これは種子です。秋が深まるころになると黒くなり、鳥などの動物が食べて種子が運ばれるようです。
 
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◆稚樹調査区:エノキやムクノキ
長居植物園の北の端のイチョウが多く植わっているところに稚樹(樹木の子ども)の調査をしているらしい区画があります。普通は草刈りなどの管理がされてたり、人が歩いたりすることで、長居植物園の多くの稚樹は死んでしまっているのですが、草刈りや人の出入りをなくすと何が生えてくるのか実験しているようです。中を見てみると、稚樹の多くはエノキ、その中に少しムクノキが混ざっており、そのほかの樹種はほとんど見られませんでした。区画の上に生えているのはイチョウで、すぐ近くにはエノキやムクノキはありません。エノキやムクノキは鳥が果実を食べて種子を運ぶため、区画の中の稚樹は鳥が運んできた種子に由来するのだと思います。クスノキやセンダンなど、長居植物園にはほかにも鳥が運ぶ種子を付ける樹木はたくさんあります。なぜエノキとムクノキばかりなのかよくわかりませんが気になるところです。そもそも種子が運ばれてこなかったのか、大きなイチョウの真下で少し暗い環境でも生育できる樹種だけ残っているのか、などいろいろ仮説は思いつくのですが・・・。
 
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エノキ
 
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ムクノキ
 
◆ミゾカクシ(キキョウ科)
ハナショウブ園でミゾカクシがたくさん咲いていました。ミゾカクシは田んぼ周りの湿った畔などによく生える植物で、ハナショウブ園の周りもミゾカクシが生える環境としては好適なのでしょう。花は面白い形をしていて、細く5つに分かれた花びらが左右対称の形になっています。花びらの上側についている鎌首のような形をした黒っぽいものが雄しべと雌しべが合着した器官です。観察した花は花粉を出す時期だったようで、花粉を出した後に柱頭を出して受粉できるようになります。ミゾカクシを見る機会があれば、花の状態をよく見てみてください。長居植物園で見られた花色は白色に近い薄いピンクから濃いピンクまで様々でした。
 
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