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貝班写真 貝班では現在、以下の2つの項目を調査しています。

■淀川水系の貝類の分布
淀川水系の淡水域にすむ巻き貝・二枚貝の分布を調べます。琵琶湖・淀川水系は形成されてからの歴史が長く、貝類にもたくさんの固有種が見られます。特に、
・本流域(三川合流点〜淀川大堰)、特にわんどにはどのような貝が見られるか
・支流の陸水域(河川、ため池、田んぼ)ではどのような貝が見られるか、本流域で見られる琵琶湖・淀川水系固有のカワニナ類やイシガイ類が、支流の上流ではどこまで分布しているか。
・近年増えつつある外来種はどのように分布しているか
などを明らかにしたいと思います。

■イシガイ科貝類のグロキディウム幼生期を中心とした生態学的研究
淀川のワンドでは、特徴的な地形を持つこと、および固有生物を抱える琵琶湖と接続していることから、多様性の高いイシガイ科貝類群集が形成されています。イシガイ類は幼生期に魚類の体表に寄生して変態するという特殊な生活史を持っており、寄生に適した魚類の存在なくしてその個体群を維持することはできません。貝類班では、淀川水系でオオクチバスやブルーギルといった外来魚が増加しているという状況が、イシガイ類の幼生の宿主利用や個体群維持に影響を与えていないかについて、野外調査や室内実験により調査をしています。

※以下では淀川水系で見られる貝類の一部を紹介します。
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ヒメタニシ

Sinotaia quadrata histrica
用水路や河川、ため池などで見られるタニシのなかまです。殻の色は薄茶色〜薄緑色で、周縁が角張ります。淀川のワンドに多く見られるほか、支流の水田の用水路などにもたくさんいます。

図)上:ヒメタニシ 下:ヒメタニシ生態






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マルタニシ

Cipangopaludina chinensis laeta
水田や用水路などで見られるタニシのなかまです。淀川本流域ではほとんど確認されていません。上流域の水田地帯で見られます。全国的に減少しているようです。

図)上:マルタニシ

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オオタニシ

Cipangopaludina japonica
水田やため池、流れのゆるい河川などで見られるタニシのなかまです。名前のとおり成長すると大型になります。淀川本流域ではほとんど確認できていません。

図)上:オオタニシ

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カワニナ

Semisulcospira libertina
全国的にもっとも普通にみられるカワニナのなかまですが、なぜか淀川本流域には見られず、支流域で分布しています。縦肋が発達するものもいますが、多くの場合殻は凹凸の少ない円すい状です。

図)上:カワニナ

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チリメンカワニナ

Semisulcospira reiniana
カワニナのなかまで、縦肋が発達し、殻底肋が6本以上あります。淀川本流域ではワンド内にたくさんいます。

図)上:チリメンカワニナ

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ハベカワニナ

Semisulcospira habei
カワニナのなかまで、殻底肋は2〜3本、縦肋上の顆粒は7〜8個あります。琵琶湖淀川水系固有種で、本流域にたくさん見られます。

図)上:ハベカワニナ

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イボカワニナ

Semisulcospira multigranosa
カワニナのなかまで、殻底肋は2〜3本、縦肋上の顆粒は6個程度です。琵琶湖淀川水系固有種で、本流域で見ることができます。

図)上:イボカワニナ

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スクミリンゴガイ

Pomacea canaliculata
南アメリカ原産の草食性の巻き貝で、1980年代に食用として養殖するために持ち込まれ、その後西日本を中心に河川や水田で繁殖するようになりました。とても目立つピンク色の卵を抽水植物の茎や護岸の水際に産み付けるので、それを手がかりに分布調査を行うことができます。


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図)上:スクミリンゴガイ 下左:スクミリンゴガイ生態 下右:スクミリンゴガイ卵塊

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イシガイ

Unio douglasiae nipponensis
ワンド内でもっともたくさん見られるイシガイのなかまです。浅い砂地を好みます。成貝の殻表は黒色で平滑ですが、幼貝は黄色っぽく顆粒が生じます。イタセンパラが産卵母貝として利用しています。
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図)上:イシガイ 下左:イシガイ幼貝 下右:イシガイ生態

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ドブガイ類

Anodonta spp.
河川やため池、用水路などの泥底にすむイシガイのなかまです。黒色で薄い殻をもち、大きくなると殻長が20センチを超えます。繁殖期や殻の形態で2種に分けることができ、現在ではそれぞれ「タガイ Anodonta japonica」と「ヌマガイ Anodonta lauta」という種名が提唱されています。

図)上:ドブガイ属

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トンガリササノハガイ

Lanceolaria grayana cuspidata
名前のとおり笹の葉のように細長いイシガイのなかまです。トンガリササノハガイは西日本各地に分布していますが、淀川水系には同属固有種のササノハガイ Lanceolaria oxyrhynchaも分布しています。

図)上:トンガリササノハガイ

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メンカラスガイ

Cristaria plicata clessini
琵琶湖淀川水系固有のカラスガイの亜種です。ちょうつがい側の殻の両端が大きく張り出します。本流域のワンドにわずかに生息します。

図)上:メンカラスガイ

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マシジミ

Corbicula leana
淡水域にすむ在来のシジミのなかまで、全国に分布します。淀川本流・支流にすんでいます。市場に出回っているのは汽水域にすむヤマトシジミ Corbicula japonicaで、淀川では大堰より下流の干潟でみることができます。琵琶湖淀川水系では固有種セタシジミ Corbicula sandaiもすんでいますが、淀川本流域ではほとんど確認できていません。また、タイワンシジミの侵入により、淀川本流淡水域のマシジミは大型個体しか確認できておらず、新規加入がほとんどないようです。

図)上:マシジミ

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タイワンシジミ

Corbicula fluminea
中国が原産とみられるマシジミに近縁の種で、全国各地の河川に分布を広げています。淀川水系では1990年代以降に生息が確認されています。典型的な殻色は黄色系で背縁が黒く染まるタイプですが、変異があります。タイワンシジミが侵入すると、在来のマシジミがほとんどいなくなってしまうようです。2009年現在、淀川本流淡水域のシジミはほとんどがタイワンシジミです。

図)上:タイワンシジミ

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カワヒバリガイ

Limnoperna fortunei
アジア大陸原産の淡水性のイガイのなかまで、日本では現在木曽三川、琵琶湖、淀川、利根川水系などで確認されています。水路などで大量発生し、利水活動に悪影響を与えるため、特定外来生物に指定されています。河川でよく似た種にコウロエンカワヒバリガイがありますが、コウロエンカワヒバリガイは汽水域に分布し、カワヒバリガイは淡水域に分布します。 写真

図)上:カワヒバリガイ 下:カワヒバリガイ生態