ジオラボ(6月)「いろいろな火山灰を見比べる」
6月のジオラボは「いろいろな火山灰を見比べる」でした。
去年の友の会合宿「蒜山・大山」で採集した、「キナコ」というニックネームの火山灰と「弥山軽石」の2種類を、じっくり見比べました。
去年の友の会合宿「蒜山・大山」で火山灰を採集した崖の様子(土地の管理者に許可を頂いて採集しました)。
最初に、「弥山軽石層」が観察できる崖の写真を2つ見比べて、大山に近くなると「弥山軽石層」が厚くなる傾向があることや、軽石の粒が大きくなる傾向があることを確かめました。「弥山軽石層」は、大山の噴火でできたということが分かりました。
次に、「弥山軽石」と「キナコ」を肉眼で観察しました。「弥山軽石」にはいろいろな大きさや色の粒が集まっていることが分かるのに対し、「キナコ」はそのニックネームのとおり、粒が細かくてそろっていて、「本当にきなこみたいに見える」という意見も出ました。
そして、参加したみなさんで協力して「弥山軽石」と「キナコ」を洗って乾かし、顕微鏡で観察をしました。
火山灰を洗っているところ。
火山灰を顕微鏡で観察しているところ。
「弥山軽石」を洗ったものには火山岩の破片やいろいろな鉱物の結晶が含まれているのに対し、「キナコ」の粒の大部分が火山ガラスの粒であることが分かりました。
弥山軽石の実体顕微鏡写真。いろいろな種類の鉱物が見える。
蒜山で採集された姶良丹沢火山灰層の実体顕微鏡写真。蒜山周辺では「キナコ」というニックネームで呼ばれていた。写っている粒はいろいろな形をしているが、全て火山ガラス。
大山周辺で「キナコ」と呼ばれていた火山灰層の正体は、実は鹿児島湾にある「姶良(あいら)カルデラ」で約2万9000年前に起きた巨大火砕流を流した噴火でとばされた「姶良丹沢火山灰層」(※)でした。巨大火砕流の噴火でできたシラス台地の崖の写真も紹介しました。姶良丹沢火山灰層はほぼ日本全国に分布しています。大山周辺だけでなく大阪でも見つかるし、厚さ2mmと非常に薄いけれども青森でも見つかっていることを、地層が見える崖の写真や標本の写真を見て確かめました。
今回は、火山の近くで見つかる火山灰と、火山から遥か遠くで見つかる火山灰を見比べました。最近、あちこちで火山の噴火が起きていますが、火山灰が日本列島を覆うような、想像を超えた巨大な噴火が起きることもある、ということを知って、参加者のみなさんは驚いていたようでした。
※ 姶良カルデラの噴火でできた火山灰が、遠い場所では丹沢にあることが最初に分かったので、このように呼ばれます。