長居植物園案内(5月) 報告
5月の植物園案内も3月、4月に引き続き中止となりましたが、現在の植物園の様子をお伝えしたいと思います。4月、5月は1年のうちで植物園案内がもっとも賑わう時期で、多くの花が咲き、植物の変化を知るにもよい季節です。残念ながら、休館・休園が続いていますが、この事態が落ち着いたら、ぜひ植物園案内に来てください!(長谷川)
◆新緑
落葉樹であるケヤキは当然ですが、常緑樹のクスノキもこの時期に葉が入れ替わり、新しい葉を広げます。落葉樹も、常緑樹も新しい葉が出てくるこの季節は葉の色がとてもきれいです。よく見ると、ほんのり赤かったり、白っぽい緑だったり、種類によってもいろいろな「緑色」がありますよ。
◆カナメモチ(レッドロビン)バラ科
カナメモチは照葉樹林に育つ低木ですが、この時期に花を咲かせます。また、公園などには特に新葉が赤く染まり美しいレッドロビンというオオカナメモチとカナメモチの交雑によりできた園芸品が栽培されています。この時期、新しい葉が真っ赤に染まっており、とてもよく目立ちます。
◆ハナミズキ(アメリカヤマボウシ)ミズキ科
日本には近縁種でヤマボウシがありますが、それよりも少し早く花が咲きます。今年は昨年よりも少し開花が遅れましたが、今、そろそろ咲き終わり…というところです。白い花びらのように見えるところは苞と呼ばれる部分で、その上に乗っている緑色の丸いところが花の集まりです。
拡大して見ると…
ちゃんと花弁もありますよ。ハナミズキもヤマボウシもよくコガネムシ科のハナムグリの仲間が花に来ます。水平に伸びた大きな苞は、花を目立たせるだけではなく、花に訪れるため着陸するのにも役に立っているようです。
◆タブノキ(クスノキ科)
照葉樹林を構成する樹木で大木になります。黄緑色の花が咲き始めていました。クスノキ科の花は構造が特徴的です。植物園案内が再開したらぜひ一緒に見てみましょう!
◆バイカウツギ(アジサイ科)
ウツギよりも少し先に開花します。梅花・・という名前の通り、ウメの花のような形をしています。写真では伝わらないですが、花からはとてもさわやかな良い香りがして、5月のこの季節にはぴったりだなあ、と思います。
◆ニセアカシア(マメ科)
マメ科の外来樹木です。この時期白い花が木全体に咲きとても美しいです。養蜂にとっても重要な樹木で、ニセアカシアの蜂蜜はよく売られています(アカシア、として売られていることも多いですが…)。この日は、たくさんのクマバチとニホンミツバチが訪れていました。ハリエンジュともいい、普通トゲがありますが、植物園にはトゲのない品種が植えられています。
◆シラン(ラン科)
美しい花を咲かせるラン科の植物。よく植栽されており、丈夫なランですが日本にも明るい湿地に自生しています。ただ、野生の姿を見かけることは少なくなりました。ラン科にはよくあるのですが、シランは昆虫をだまして花に訪れさせ、花粉を運んでもらっています。昆虫は蜜か花粉を求めて花を訪れますが、シランは蜜がなく、花粉(花粉塊)も取りにくい場所に隠されているのです。植物園ではシロスジヒゲナガハナバチの雄がよく花粉塊をつけて飛んでいます。
◆フジ(マメ科)
そろそろ花も終わりです。去年は植物園のフジは花付きが悪かったですが、今年はよく咲きました。
◆コマユミ(ニシキギ科)
紅葉の時期には、葉が真っ赤に染まりとてもよく目立ちますが、花は緑色であまり目立ちません。目立たない花ですが、ハエの仲間にとても好まれます。この日はハナアブがたくさん来ていました。