長居公園の植物案内(3月)
3月の植物園案内も2月に引き続いてコロナウィルス感染症拡大防止の観点から中止です。よい季節なんですが・・・残念です。
6日はとても天気が良く暖かい日で、行事ができたら気持ちよかっただろうなあ・・・と思いながら、見どころを探してみました。
今回も植物園が休園のため長居公園内をうろうろしました。(長谷川匡弘)
1.オオイヌノフグリ(オオバコ科)
春になると小さい青い花を咲かせます。古い図鑑ではゴマノハグサ科となっており、植物歴が長い方はこちらのほうがなじみがあると思いますが、DNAを用いた新しい分類体系ではオオバコ科となっています。姿形はオオバコとは全く異なっていますが・・・。春早くからかわいらしい花をたくさんつけて、草地に散らばる星のようです。この花は一日で落ちてしまいますが、その最後に自分の雄しべをぐぐっとまげて自分の柱頭に、自分の花粉を付けます(自家受粉)。花の拡大写真2枚は時間を変えて同じ花を撮影したものですが、上は午前10時ごろ、下は午後3時30分に撮影したものです。夕方近くになると花が閉じ始め、それと同時に雄しべも曲がってきます。たった一日しか咲かない花ですが、このようにして子孫を残していきます。
(追記)ただ、受粉が何らかの原因でうまくいかなかった場合には、2日目にも花弁が開いてくることもあります。多くの花で調べたわけではありませんが、あきらかに2日目の朝にもう一度開花するものを観察しています。花の寿命は環境や、受粉の有無によっても影響を受けるものがあります。
2.ヒメオドリコソウ(シソ科)
この植物も市内の公園ではよく見かけます。ヨーロッパ原産の外来植物です。重なってついている葉の隙間から花を咲かせますが、個性的ないでたちで、私は大好きです。よく似た種にモミジバヒメオドリコソウというものもありますが、こちらは葉がより深く切れ込んでいます。同じくヨーロッパ原産の外来種ですが、あまり見かけません。
3.ホトケノザ(シソ科)
ホトケノザもどこでもよく見られる植物です。シソ科の花はこういう筒状の花で、先がぱかっと二つに分かれたような形をしたものが多いですが、このような花を唇形花といいます。下向きに開いたハート形の部分を下唇(かしん)、上のカップ状のところを上唇(じょうしん)といいます。雄しべ、雌しべは上唇のところに収まっており、写真ではオレンジ色に見えるのが雄しべの先端につく花粉の入った袋、葯(やく)になります(袋がはじけて花粉は外に出ている状態です)。昆虫(主にハナバチ)が筒の奥にある蜜を飲もうとして頭を花の入り口からつっとこむと、上唇部にある葯に頭が触れて花粉が付き、別の花に花粉が運ばれて行きます。都市部ではまっていても、なかなか昆虫は来ません。もう少し後になると、つぼみのまま花が開かない花(閉鎖花)が目立つようになりますが、都市部では主に閉鎖花で子孫を増やしているのかもしれません。
4.スギ(ヒノキ科)
スギ花粉症に悩まされる時期がやってきました。長居公園にも何本かスギが植えてあるのですが、私も症状がひどくて、この時期はなるべくスギに近づきたくありません。・・・が、花を見るなら今です。咲いているかどうか確認するために近づいてみました。厄介なのは花粉を出す雄花です(上の写真)。いまにも開きそうではありましたが、この木ではまだ開花していないようです。同じ枝に雌花もついていました(下の写真)。暖かい日があと数日続けば開きそうな感じですね・・。花粉症の方はもう症状が出ていると思いますが、お気を付けください。
5.カワヅザクラ(バラ科)
2月のブログではまだつぼみでした。3月6日に同じ株のところに行ってみると、だいぶ開花が進んでいました。5分咲きくらいでしょうか。カンヒザクラとの雑種と考えられており、ソメイヨシノのよりも色が濃く、華やかなサクラです。
6.ジンチョウゲ(ジンチョウゲ科)
ジンチョウゲも2月のブログではまだ全部つぼみでした。行ってみると、すこーしだけ咲いていました。まだ全体で数花くらいしか咲いていなかったのですが、近づくとほんの少し香りが。公園の外周まで香りが漏れ出すのも、もうすぐかなと思います。
7.アセビ(ツツジ科)
アセビは低山地によく見られるツツジ科の樹木です。小さい花をたくさんつけていました。釣鐘型の花を切ってみると、入り口付近まで雌しべが伸びており、その基部に雄しべがあります。その雄しべに囲まれた中に花盤があり、蜜を出しているのですが、口の長いハナバチやハエの仲間、蛾類などが口を入れて蜜をすったときに、口に花粉が付き別の株に運ばれていくと考えられています。