皮むき日記
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鳥や哺乳類の死体は、皮を剥いたり、肉を取り除いたり洗ったりして標本にします。面倒な作業ですが、その中でいろんな発見があるのも事実。どんな作業をしたかを記録すると同時に、その際の小さな発見を書いてみることにしました。
(注)ここで行っている皮剥きなどの標本作成は、調査研究目的(及び普及教育目的)で、大阪市立自然史博物館の業務の一環として行っています。またその対象は、この目的で殺したものではなく、事故で死んだ個体や、動物園などで死んだ個体を用いています。動物虐待ではないかとの指摘があったので、念のため。
●2024年11月3日 モズ、カケス、アオバト
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き9日目の15種16羽目(内、動物園物はなし)。
・モズ(OMNH A8924:2016年3月、大阪市住吉区産)
尾羽が1枚しか残っていないので、想定すべきだった。尻尾周りが傷だらけで、内臓ぐちゃぐちゃ。襲われて、逃げたけど、力尽きた感じ?
・カケス(OMNH A8922:2016年5月、大阪府泉佐野市産)
谷筋の地上で拾った巣立ちビナ。拾った時は生きていたけど、待っても周囲に親鳥の姿はなく、誘拐にならないか悩んだ末に連れ帰った。翌日には死んでいた。剥いてみると、左脚が折れていて、とても痩せてる。まだ風切羽は生える途中で、飛べない。そして、脚が折れてるので歩けない。どうりで拾われた訳。直接の死因は餓死っぽい。すでに親から見放されてたんじゃないかと思う。
・アオバト(OMNH A8928:2024年10月、大阪市東住吉区産)
とてもきれいな雄。雄の特徴の小雨覆の紫色がしっかりある。下部に2本の緑の帯が残ってる感じ。
●2024年10月27日 トラツグミ、スズメ、ヒレンジャク
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き8日目の12種13羽目(内、動物園物はなし)。
・トラツグミ(OMNH A8917:1996年11月、大阪府大東市産)
頭が乾燥しまくりな上に、下半身を中心に皮がとても傷んでいる。皮が破れまくり、羽根が抜けまくる。頭を裏返すのは断念。脳も取れなかった。脂肪が少なめなのが唯一の救い。それっぽい物はできたけど、たぶん腹の羽根は遠からず、ほぼ抜けそう。
・スズメ(OMNH A8918:1997年6月、大阪府交野市産)
頭は乾き気味だけど、他は問題なし。頭も裏返せた。普通に剥けたのが、とても嬉しい。
・ヒレンジャク(OMNH A8915:1993年3月、大阪府交野市産)
全身完全なミイラ状態。やむなく全身水漬け。6時間浸けたら、剥ける感じになった。が、剥いてみると、皮がとても傷んでいた。羽根が抜けまくる。右翼、尾羽、頭頂部は残ったけど、あとはボロボロ。それっぽくはなったような、ならなかったような。水漬けしたので、ドライヤーで風を当てて乾かさざるを得ず、羽根が飛んで行く…。
●2024年10月15日 ヒツジ、カリフォルニアアシカ
急遽、大物が2体到着したので、3人で処理。
・ヒツジ(OMNH M4229:某動物園より)
いつものコリデール。尻尾は切られてる。残念ながら、毛は刈られていない。2日間冷蔵だったので、内臓は少し傷んでいる。前肢付け根と首に皮下出血が多数。
・カリフォルニアアシカ(OMNH M4230:某動物園より)
若いオス。とても痩せてるけど、膜が筋っぽくて、剥きにくい。一番手間取ってたのは後肢担当。後ろに投げ出した後肢は爪が背側に付いている。つまり我々と後肢の向きが逆。
●2024年9月23日 ドバト
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き7日目の10種10羽目(内、動物園物はなし)。
・ドバト(OMNH A8904:2021年6月、三重県松阪市産)
そのうが、ムギでパンパン。ネットで見ると、松阪市は“あやのひかり”という小麦の生産が盛んなんだそう。時期から言うと、収穫が終わった後。ということで、落ち穂拾いをしていたっぽい。
そのうは一杯だったけど、脂肪の蓄積はない。精巣は大きいけど、そのうにピジョンミルクの気配なし。
●2024年8月10日 カラスバト
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き6日目の9種9羽目(内、動物園物はなし)。
・カラスバト(OMNH A8897:2024年3月、鹿児島県屋久島町産)
成鳥メスっぽい。が、卵巣はぜんぜん繁殖モードではなかった。年中繁殖するわけではないんだな。
●2024年7月13日 ヤマシギ、コルリ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き5日目の8種8羽目(内、動物園物はなし)。
・ヤマシギ(OMNH A8894:2024年2月、大阪府八尾市産)
頭骨割れまくり。とくに上嘴付け根は、剥く前から壊れてるのが判ってた。剥いてみると、頭の前がパカッと開いてしまい、寄生獣みたいな鳥に。
・コルリ(OMNH A8893:2023年5月、長野県軽井沢町産)
綺麗なオス成鳥。脂肪多かったけど簡単。精巣大きく、繁殖中だったんだろう。
●2024年6月30日 イソヒヨドリ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き4日目の6種6羽目(内、動物園物はなし)。
・イソヒヨドリ(OMNH A8888:2024年5月、大阪府堺市産)
全体に青味のある羽根が混じり、翼の下小雨覆には茶色い羽も混じってる。てっきりオス幼鳥と思って剥いていたけど、メスだった。季節もあるけど、まあまあSOは完成してるし、卵巣もまあまあ大きめ(産卵直前ではないけど)。メス成鳥ってことになると思う。こんなに青いのか。腹まで青いのか。
●2024年6月1日 アオゲラ、オオムシクイ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き3日目の5種5羽目(内、動物園物はなし)。
・アオゲラ(OMNH A8871:2024年7月、京都府宮津市産)
綺麗なオス。尾端骨を外したが、先を折った。下顎の関節の筋肉がないとか、スズメ目と改めて筋肉系が違うと思った。
・オオムシクイ(OMNH A8874:2023年6月、京都府宮津市産)
けっこう傷んでいて、内臓が腐り、腹の皮を裂きそうになった。
●2024年5月5日 オオバン、トラツグミ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き2日目の3種3羽目(内、動物園物はなし)。
・カワウ(OMNH A8864:2024年2月、大阪府阪南市産)
そもそもミイラ。腹に大穴開いてて、腐った臭いするし、ウジもいっぱい入ってた。水に浸けたら、羽根が大量に抜けて、全身骨格にするしかない。と思ったら、さほど羽根は抜けず、剥くことができて、洗ってしまえば、けっこう可愛い仮剥製になってしまって驚いた。
・トラツグミ(OMNH A8868:2020年10月、大阪市天王寺区産)
オス幼鳥。新鮮だけど、めっちゃ血を吐いた。が、かろうじてガードに成功。喉にティッシュを詰めて、さらに外からティッシュをはさんで、頭剥いたら、すぐに内側からもティッシュを追加で突っ込んだ。中を見せようと、右腹裂いたのが悔やまれる。
●2024年4月7日 カワウ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き1日目の1種1羽目(内、動物園物はなし)。本当はホシハジロも処理したのだけど、ホネがメインになってしまった。
・カワウ(OMNH A8858:2024年1月、大阪府貝塚市産)
腹の皮はなかったが、他の状態はいいので、仮剥製に。全身、粗い砂だらけ。羽根は洗った方が良かったかなぁ。そして、死因は魚を喉に詰めたこと。魚担当さんによると、ロウニンアジらしい。口から出てる部分はほぼホネになってて、口の中の部分は綺麗なまま。
●2024年3月20日 オオコノハズク、カワウ、カイツブリ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き17日目の31種36羽目(内、動物園物は2種2羽)。
・オオコノハズク(OMNH A8852:2024年3月、大阪市北区産)
綺麗なメス個体。脂肪を大量にため込んでいるけど、すべて引っ張って除去できるので、簡単だった。気管と食道は右側を走る。
・カワウ(OMNH A8853:2024年3月、兵庫県西宮市産)
頭と脚の付け根がまっ白。繁殖モードに見えるけど、精巣は小さいまま。気管と食道は右側を走る。
・カイツブリ(OMNH A8852:2024年3月、奈良県天理市産)
顔が赤くて綺麗。精巣の長径9mmと、完全に繁殖モード。正羽の尾羽はないのだけど、尾羽っぽい綿羽(半綿羽かな?)があった。今まであまり気付かなかったけど、けっこう尾羽っぽかった。あと脚が縦に平べったく、その後ろ側は、トゲトゲが2列に並んでる。気管と食道は右側を走る。
●2024年2月25日 アオバト、ヤマシギ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き16日目の28種33羽目(内、動物園物は2種2羽)。
・ヤマシギ(OMNH A8844:2024年1月、大阪市中央区産)
脂肪がないので、剥きやすかった。気管と食道は右側を走る。鳥の剥き方を説明していたのだけど、耳の位置や首の付け根の位置が普通と違うので、あまりいい例ではなかった。
・アオバト(OMNH A8845:2024年1月、大阪市北区産)
もともと喉の羽毛が抜けまくり。脂肪がないのだけが救い。そのうは空。空だけど、そのうは膨らみ気味で、気管がよく判らなかった。でもたぶん左側を走ってる。中は血まみれ。背中から血が出ていたけど、キズはなかった。へんなの。
●2024年1月13日 ドバト、クロサギ、アオゲラ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き15日目の27種31羽目(内、動物園物は2種2羽)。
・ドバト(OMNH A8836:2023年9月、大阪市東住吉区産)
弱ってるのを保護した個体。剥いてみると、胴体にいっぱい穴が開いていた。カラスか何かに突き殺されたってところだろうか。
・クロサギ(OMNH A8830:2023年12月、大阪府岬町産)
頭はないけど、貴重な大阪府産のクロサギ。が、剥いてみると、頭無いだけでなく、皮は破れまくりだし、腐ってるし、脂肪をいっぱい蓄積してるし。考えられる最悪な素材であった。でも、大阪府産のクロサギだから。腰回りの粉綿羽が、他のサギ類より発達してる気がする。
・アオゲラ(OMNH A8834:2024年1月、富山県立山町産)
新鮮で、脂肪がない個体。クロサギの後では、いやされる。舌のホネの長さもそれを動かすっぽい肉も気になるけど、尾端骨がしっかりしていて、底面が広い。尾脂腺が左右に分かれてる。頸椎が頭骨にいやにしっかり付いていて、外すのに苦労した。
●2024年1月8日 ノスリ
今日もはくぶつかんたんけん隊で鳥の皮剥き。今年度の鳥剥き14日目の25種28羽目(内、動物園物は2種2羽)。
・ノスリ(OMNH A8831:2023年2月、和歌山県かづらぎ町産)
一見綺麗な個体だったが、両方の大腿骨が折れており、腹腔内に出血があり、腸の一部が総排泄口からはみ出していた。車に轢かれたのかなという感じ。
●2024年1月7日 オオタカ
はくぶつかんたんけん隊で鳥の皮剥き。今年度の鳥剥き13日目の24種27羽目(内、動物園物は2種2羽)。
・オオタカ(OMNH A8828:2023年112月、大阪府豊中市産)
ものすごく痩せていて、内臓は萎縮して、腹腔内は隙間だらけ。ケガや出血はない。おそらく餓死。シラミバエが1匹、ハジラミが少なくとも2種採れた。