皮むき日記
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鳥や哺乳類の死体は、皮を剥いたり、肉を取り除いたり洗ったりして標本にします。面倒な作業ですが、その中でいろんな発見があるのも事実。どんな作業をしたかを記録すると同時に、その際の小さな発見を書いてみることにしました。
(注)ここで行っている皮剥きなどの標本作成は、調査研究目的(及び普及教育目的)で、大阪市立自然史博物館の業務の一環として行っています。またその対象は、この目的で殺したものではなく、事故で死んだ個体や、動物園などで死んだ個体を用いています。動物虐待ではないかとの指摘があったので、念のため。
●2025年8月15日 コガモ、カワウ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き7日目の14種14羽目(内、動物園物はなし)。
・コガモ(OMNH A10579:2025年2月、大阪市東住吉区産)
頭がない。その分、楽ちん。
・カワウ(OMNH A10581:2025年7月、三重県津市産)
とても臭く、なんか汁が出てる。シンクで洗いながら処理。予想通り頭ははげちらかしたけど、あとの羽根は概ね残った。全身洗いをして、ドライヤー当ててると羽根がいっぱい抜けた。おもに下小雨覆が抜けたらしい。
●2025年8月15日 アマツバメ、ノスリ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き6日目の12種12羽目(内、動物園物はなし)。
・アマツバメ(OMNH A10573:2013年9月、愛媛県西条市産)
上腕骨が、超短くて幅広。モグラのよう。同じく短い橈尺骨と脚。前向き4本の足指以外は羽毛が生えてる。で、これまた短く小さな嘴。と思いきや思いっきり開く。一番印象的だったのは鼻孔。思ってた以上に大きくて上向き。
・ノスリ(OMNH A10571:2013年2月、愛媛県西条市産)
気管は首の左側を通っていた。ハトも左側。他の大部分の鳥は右側。そのうがあると左側とか?
●2025年8月14日 アカエリヒレアシシギ、コサギ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き5日目の10種10羽目(内、動物園物はなし)。
・アカエリヒレアシシギ(OMNH A10564:2012年9月、愛媛県四国中央市産)
足のヒレは、半蹼足に弁足が混じった感じ。胴体のサイズ感の割に、頭がとても小さい。スズメ目とプロポーションが違う。嘴の先の方に、上下で隙間があるのは何のためだろう。
・コサギ(OMNH A10568:2014年10月、愛媛県今治市産)
小さめな気がするから幼鳥かなぁ。内臓周りが出欠してるのは、踏まれたかな。糞でとても汚れていたので洗ったけど、まっ白にはならない。
●2025年7月20日 セグロアジサシ、ウトウ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き4日目の8種8羽目(内、動物園物はなし)。
・セグロアジサシ(OMNH A10555:2015年7月、愛媛県愛東町産)
思ったより大きい。ユリカモメくらいある。そして、尾羽の形とカラーリングがとてもキレイ。尾羽は12枚で、外の2枚の外側に白が入り、とても長い。換羽中で内2枚が新しく、T3が生えかけ。
・ウトウ(OMNH A10563:2025年7月、北海道羽幌町産)
死体はいっぱいあったらしいのだけど、皮剥きできそうな新鮮そうな3体が届けられた。先に2人が剥いて苦労していた。どんどん羽根が抜けるらしい。残された1体は、一番綿羽が多くて剥くの難しそう。と思ったら、普通に剥けた。あまり羽根も抜けず。状態が良かったのかな?
ウミスズメ類はあまり経験がないのだけど、小さいのにちゃんと上嘴に角がある。鼻孔が横長の線になってたのが印象的。
●2025年6月14日 フクロウ、トラフズク
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き3日目の6種6羽目(内、動物園物はなし)。
・フクロウ(OMNH A10537:2025年4月、大阪府茨木市産)
フクロウ3羽並んでいて、愛媛県産が一番色が濃い。三重県産が次で、大阪府産が一番白かった。一番大きな大阪府産がメス、一番小さな愛媛県産はオス。で、大阪府産とほぼ同大の三重県産もオス。大きさでは性別判断は無理。
・トラフズク(OMNH A10540:2014年2月、愛媛県松山市産)
一緒に並んでいたアオバズクとは、全長はぜんぜん違うのに、胸骨あるいは胴体の大きさは、ほぼ同じ。口を広げると、下顎が普通に広がってから、下顎が折れ曲がって、さらに口が開いた。驚いた。下顎の根元に、折れ曲がる構造があるっぽく、同じような構造はフクロウやアオバズクにはなかった。
●2025年6月7日 ブチハイエナ
なにわホネホネ団の活動日。
・ブチハイエナ(OMNH M4304:某動物園より)
メス。なので噂の偽陰茎と偽陰嚢があった。それはさておくとしても、肉球が柔らかく、隣同士がひっつく感じ(図鑑のタヌキの足跡みたい)。ヒゲが疎らで、あまり並んでない。タテガミは背中の半分を超えて続く。お尻の穴周辺がとても凹んでる気がする。顔が丸くて平らで可愛い。耳大きくてスティッチのよう。とにかく盛り上がる動物。
●2025年5月5日 キョン
なにわホネホネ団の活動日。
・キョン(OMNH M4301:2025年4月、千葉県御宿町産)
キョン4体の体重は5.4~8.6kg。ほぼアライグマ大。脚が超細く、くくり罠で折れたり、キズが乾燥してたり。副蹄は皮側に残る。駆除個体なので尻尾がないのが残念。下顎切歯の外側に△の出っ張りがあって、下の犬歯かと思った。
4体中唯一のオスを選んだ。オスの角の長さは4cm。長い牙はオスだけだし、目の上の穴も大きくて格好いい。が、他のメスはみんな妊娠していて、この個体だけが妊娠していなくて少し残念。
●2025年5月3日 ツツドリ、サシバ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き2日目の4種4羽目(内、動物園物はなし)。
・ツツドリ(OMNH A8991:2015年8月、愛媛県松山市産)
下尾筒が茶色くてシマ模様付き。小翼羽の下の羽根は、まっ白。ということで、ツツドリと判断。成羽なので、胸から腹の横縞の粗さとサイズ感でも判るけど。
脂肪だらけで、
踵近くや頭の上にまで脂肪を貯め込んでいた。トケン類って脂肪だらけというけど、多いだけでなく、貯め込む部位の広めな気がする。
・サシバ(OMNH A8990:2014年10月、愛媛県西条市産)
ノスリとしてやってきた。たしかに少しノスリっぽい顔つき。でも、腹帯ないし、喉に太い一本線。
ツツドリに負けないくらい脂肪だらけ。ツツドリはピンセットで皮下脂肪が取れたが、こちらはハサミを使った方が上手く行った。ガリガリも使えたかもしれない。
●2025年5月2日 カニクイザル
なにわホネホネ団の活動日。
・カニクイザル(OMNH M4295:某動物園より)
親指は我々と同じような形の平爪だけど、他の指は細長い巻き爪みたいな状態。むしろかぎ爪? 尻ダコの中には少し脂肪、周囲の皮が破れやすくて要注意。尻尾が長いけど、外から触った限りでは、V字骨はなさそうな感じ。鳥と同じように、皮と肉の間に指を突っ込んで剥いていける。皮を剥いたら眼球の周りが黄色い。こんな場所に脂肪? 膝裏の種子骨が大きい気がした。あと耳毛が長い。
眉と目の間がとても白くて(中央だけ濃い色の縦筋があって、左右に分かれてる)、普段はさほど目立たないけど、眉を上げると一気に白が目立つ。なにかのサインなんだろう。怒ったり驚いた徴とか。
●2025年4月20日 ツグミ、アカエリカイツブリ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き1日目の2種2羽目(内、動物園物はなし)。
・ツグミ(OMNH A8979:2004年12月、兵庫県神戸市産)
20年以上前に死んで、冷凍されていた。右翼に骨折治療のピンが刺さっている。最終的には餓死なのか、とても痩せていた。
・アカエリカイツブリ(OMNH A8984:2025年3月、茨城県神栖市産)
首から上がホネになっていて、同定に手間取った。嘴に黄色が残ってなかったら、きっとカンムリカイツブリにしていたと思う。おかげで風切羽での見分け方を知ることをできた。
●2025年4月6日 ジャガー
なにわホネホネ団の活動日。
・ジャガー(OMNH M4289:某動物園より)
2日前に冷凍室から出したけど、まだ少ししか解けていない。口周りから頭を剥いたところで、残りを押しつけた。
●2025年3月20日 スナメリ
なにわホネホネ団の活動日。
・スナメリ(OMNH M4288:2025年3月、大阪府岬町産)
みんなで解体と思ったら、みんな遠慮するので、大部分独りで解体。頭落として、肉取りを押しつける。左前肢(といっても肩甲骨と上腕骨だけだけと)外して、肉取りを押しつける。左半身の皮を剥いて、両側の寛骨確保。左肋骨を外して、順に並べる。尾椎外して、V字骨を触らぬよう、背側だけ肉取りを押しつける。内臓取り出して、右側の肋骨も外しかけたけど、面倒になった。右前肢(こちらも肩甲骨と上腕骨だけ)を外して、残りは全部押しつけた。
●2025年3月1日 トビ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き14日目の22種26羽目(内、動物園物はなし)。
・トビ(OMNH A8966:2003年4月、兵庫県神戸市産)
20年以上前に死んで、ずーっと冷凍されていた。ちゃんと冷凍されていたら、普通に剥けるもんだ。動物病院で保護後死んだ個体で、糞でとても汚れていたが、洗うととても綺麗になった。
●2025年2月1日 トラツグミ、キジバト
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き13日目の21種25羽目(内、動物園物はなし)。
・トラツグミ(OMNH A8951:2025年1月、大阪府交野市産)
3羽並んでいた中で、一番大きく重かった個体。予想通り雄だった。でも、脂肪の量は、小さめの2羽と同じくらい。小さい穴は開けたけど、皮を裂かずに剥けた。かと思ったら、脂肪除去の最中に、背中を約2cm裂いてしまった。
・キジバト(OMNH A8956:2023年12月、大阪市東住吉区産)
トラツグミの後だと、とても簡単。脂肪もなかったし。そのうの中は、クスノキ種子でパンパン。
●2025年1月12日 オオバン、アオバズク、オオタカ
はくぶつかんたんけん隊で鳥の皮剥き。今年度の鳥剥き12日目の20種23羽目(内、動物園物はなし)。
・オオバン(OMNH A8947:2024年12月、兵庫県尼崎市産)
腹腔内が血まみれ。路上で拾われているので、車にひかれたのかも。
・アオバズク(OMNH A8948:2024年10月、大阪市平野区産)
足がトゲトゲが、アオバズクのチャームポイント。普通は、トゲが黒いと思うのだけど、この個体はトゲが白かった。
・オオタカ(OMNH A8949:2024年10月、大阪市東住吉区産)
とても痩せていて、餓死かと思ったが、脳内出血があったので、衝突死かもしれない。
●2025年1月4日 ムクドリ、ハシボソガラス、アオバト
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き11日目の18種20羽目(内、動物園物はなし)。
・ムクドリ(OMNH A8839:2005年7月、兵庫県神戸市産)
メスの幼鳥。古いけど状態はよくて、脂肪がない。翼や尾の先が汚れていたけど、アルコールでふけばすぐに綺麗になった。
・ハシボソガラス(OMNH A8846:2018年5月、奈良県広陵町産)
今日、処理した中では新鮮。状態もよくて、脂肪がない。口の中は、舌先以外真っ赤な巣立ちビナ。頭は簡単に裏返った。まだ頭が小さいように思う。
・アオバト(OMNH A8843:2015年12月、兵庫県豊岡市産)
尾羽をはじめ尻尾がなくなってて、首から胸に大穴、その周辺から頭が血まみれ。最悪な感じだったが、脂肪はなかった。なので、胸から上を洗う以外は、簡単に処理できた。胸に大穴が開いてるので、そのう内容物はなし。洗った後、乾かす時は、羽根をほぐすのが肝要。