皮むき日記
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鳥や哺乳類の死体は、皮を剥いたり、肉を取り除いたり洗ったりして標本にします。面倒な作業ですが、その中でいろんな発見があるのも事実。どんな作業をしたかを記録すると同時に、その際の小さな発見を書いてみることにしました。
(注)ここで行っている皮剥きなどの標本作成は、調査研究目的(及び普及教育目的)で、大阪市立自然史博物館の業務の一環として行っています。またその対象は、この目的で殺したものではなく、事故で死んだ個体や、動物園などで死んだ個体を用いています。動物虐待ではないかとの指摘があったので、念のため。
●2026年8月15日 クリハラリス
なにわホネホネ団の活動日。リス祭り。
・クリハラリス(OMNH M4408:2025年1月、長崎県五島市産)
ほかのクリハラリスはオスで、この個体だけメス。だからか、前肢の脇から肘のオレンジ色が広い。その上、後肢の付け根や、下腹部の1対の乳頭周辺にもオレンジ色があった。他のオスよりも皮下脂肪が多め。
尻尾は開き、あとは下腹部を横に切って筒剥き。そして皮の裏をクリーニングの後、ホウ酸塗って、綿詰めて、仮剥製に。鳥と一緒だけど、鳥より皮が厚くて簡単かも。
●2026年8月11日 クロエリセイタカシギ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き9日目の12種12羽目(内、動物園物は3種3羽)。
・イワトビペンギン(OMNH A10743:某動物園より)
実質の作業は6時間ほど。ペンギン1羽はこんなもん。洗って血糊を落とす作業にけっこうかかる。あとフリッパーを開く作業がちょっと苦手。片方は少し失敗した。
尾羽は、7本+7本。頭骨の目の後ろのミゾは浅い。足が、上が白っぽく、下が黒い。上嘴に鼻孔がなく、左右に稜が出ている。
●2026年8月10日 イワトビペンギン
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き8日目の11種11羽目(内、動物園物は2種2羽)。
・イワトビペンギン(OMNH A10743:某動物園より)
実質の作業は6時間ほど。ペンギン1羽はこんなもん。洗って血糊を落とす作業にけっこうかかる。あとフリッパーを開く作業がちょっと苦手。片方は少し失敗した。
尾羽は、7本+7本。頭骨の目の後ろのミゾは浅い。足が、上が白っぽく、下が黒い。上嘴に鼻孔がなく、左右に稜が出ている。
●2026年8月9日 フンボルトペンギン
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き7日目の10種10羽目(内、動物園物は1種1羽)。
・フンボルトペンギン(OMNH A10744:某動物園より)
実質の作業は5時間。あとは仕上げだけだけど、1日で終わらなかった(翌日仕上げに1時間)。ギロチン君があると皮下脂肪の処理がはかどる。でも3時間半は脂肪除去をしていた。洗剤つけて歯ブラシで、血の汚れを取るのに30分。
上嘴変形していて、鼻孔が欠けてる個体。上嘴に縦にミゾが何本も走る。尾羽は左右にはっきり分かれていて、3本+3本だけど、これは抜けてるっぽい。頭骨の目の後ろに深い溝があるのが特徴的。第2指の内側にも、水掻きが張り出している。
●2026年7月20日 ハイイロアホウドリ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き6日目の9種9羽目(内、動物園物はなし)。
・ハイイロアホウドリ(OMNH A10706:2005年11月、南氷洋産)
ここまで脂肪の多い個体が続いていたが、ここで初めて脂肪がない個体。なんて楽ちんなんだ! アホウドリ類は大きいので、少し脂肪が付いてるだけで、除去の手間がかなりかかる。まったくないと、こんなに簡単だとは。
それにしても、ミズナギドリ類がとても海鳥臭いのに対して、アホウドリ類はぜんぜん臭わない。当社比だけど。
●2026年7月19日 ハイガシラアホウドリ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き5日目の8種8羽目(内、動物園物はなし)。
・ハイガシラアホウドリ(OMNH A10718:2003年5月、南氷洋産)
かなり脂肪が多い個体。皮剥き3時間半、脂肪除去5時間といったところ。1羽に1日かかるなぁ。ガリガリ君を使ったけど、首取りマシーンを使えばもっと早かったかも。
●2026年7月18日 ナンキョクオオトウゾクカモメ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き4日目の7種7羽目(内、動物園物はなし)。
・ナンキョクオオトウゾクカモメ(OMNH A10720:2003年7月、南氷洋産)
大きなカモメのつもりで剥いて、おおむね間違ってなかったけど、塩腺が特徴的。頭頂にひょうたん形の池があって、前側に水抜きの穴が開いてる感じ。足が真っ黒で、細かいウロコが並んでいて、とても綺麗。
●2026年7月11日 シマスカンク
なにわホネホネ団の活動日。
・シマスカンク(OMNH M4367:2000年1月、大阪市東住吉区産)
謎の動物がいると呼び出されて、行ってみると確かに謎の動物がいる。試しに、おいでおいでと呼ぶと寄ってきた。持ち上げて段ボール箱に放り込んで、連れ帰ってきた。シマスカンクらしい。とりあえず裏の小屋で飼育した。8ヶ月後、とある家に引き取られていった。そして6年後、死亡。標本にすべく引き取った。けど、処理できずに20年間冷凍していたのを、ついに処理。意外と平気だった。
左側の歯を使っていたのか、左の犬歯が磨り減り、右の臼歯には歯石がついている。鼻に長い軟骨が付いていて、鼻が長くなっている。前肢・後肢とも足の裏に全然毛がない。頭骨はテンに似てるが、目がとても小さい。
●2026年6月20日 チョウゲンボウ、アカハラ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き3日目の6種6羽目(内、動物園物はなし)。
・チョウゲンボウ(OMNH A10700:2010年3月、大阪府泉佐野市産)
頭がない。通常なら標本にして残したりしないかもだけど、2010年は大阪府で急激にチョウゲンボウの繁殖が確認されるようになったエポックメイキングな年。それだけに標本は貴重。
・アカハラ(OMNH A10706:2026年4月、大阪市中央区産)
メス幼鳥。ものすごく脂肪を蓄積している。皮下脂肪も内臓脂肪も。首にまで脂肪がつきまくり。とてもいい状態で渡ってる途中だったろうに。脳内出血しまくり。窓ガラスに衝突してしまったらしい。
●2026年5月30日 アカクビワラビー
なにわホネホネ団の活動日。
・アカクビワラビー(OMNH M4367:某動物園より)
2日前に冷凍車から出したのに、まだ丸まった腹が全然解けてなかった。おかげでとても剥きにくい。性別聞いてなくて、そして凍ってたのせいと思いたいが、袋を破ってしまった。
後肢の小さくセットの第1・2趾は普通の爪だけど、デッカイ第3趾と第4趾の爪は完全に蹄。それでいて肉球があって不思議な感じ。草食獣だからさぞかし立派な舌骨があると思いきや、軟骨と一体化した小さな舌骨しかない。有袋類は変。
袋骨あって、カンガルー病で、有袋類は見所いっぱい。お年寄りらしく、上顎に門歯がぜんぜんない。下顎の門歯も1本だけ。
●2026年4月30日 ハイイロウミツバメ、ミゾゴイ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き2日目の4種4羽目(内、動物園物はなし)。
・ハイイロウミツバメ(OMNH A10693:2026年3月、茨城県神栖市産)
外見は綺麗だが、乾燥している。他は普通に剥けたが、翼は乾きすぎていて、上腕骨の取り外しは断念。胸骨が割れまくっていて、剥きにくい。死んでから圧迫されて割れた感じ。溝にはまってるのが拾われたらしいから、そのせいかと。
・ミゾゴイ(OMNH A10696:2026年4月、大阪市福島区産)
メス成鳥。櫛爪が幅広で立派。長い鼻孔が意外と幅があって、両サイドだけ、左右突き抜けてる。後頭から後頚の羽根が長くてカッコいい。下大雨覆は、翼の根元側ほど長くて、次列風切の根元側を下からしっかり支えてる。
●2026年4月29日 トラツグミ、ユリカモメ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き1日目の2種2羽目(内、動物園物はなし)。
・トラツグミ(OMNH A10691:2025年10月、奈良県生駒市産)
頭頂などに元々穴があったが、穴をいくつか追加してしまった。首の穴は少し広げた。トラツグミは少しの油断が失敗につながるので、苦手。
・ユリカモメ(OMNH A10690:2026年1月、大阪府貝塚市産)
新鮮だけど、頭と両翼にしか皮がない。本来なら骨を優先した処理をするのだけど、夏羽に移行し始めの幼鳥なので、頭と翼は剥製風に残すことに下。皮がある部分をバラの皮にして、残りは液浸。翼をクロスして、頭を載せると、何かのシンボルのよう。
●2026年3月15日 オナガ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き17日目の35種38羽目(内、動物園物はなし)。
・オナガ(OMNH A10678:2023年11月、埼玉県春日部市産)
今度のオナガはオス成鳥。とても綺麗なオス。青が渋くていいのだけど、構造色なんだろうねぇ。翼を広げてみると、左右とも、一番内側の次列風切が少し短くて、三列風切との間に凹みができる。換羽中ではなさそうだけど。鼻孔を隠しているのがカラス科っぽい。
●2026年2月7日 キジバト、チョウゲンボウ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き16日目の35種37羽目(内、動物園物はなし)。
・キジバト(OMNH A10663:2025年1月、埼玉県寄居町産)
オスの成鳥。1月はさすがに繁殖モードではないらしく、精巣は小さい。
・チョウゲンボウ(OMNH A10667:2025年4月、大阪市平野区産)
とても綺麗なオス。ほぼ同サイズのとなりのハイタカと比べると、脚が短い。脚の付け根の位置が普通(ハイタカはすごい上に付け根がある)。蝋膜はインコっぽい、鼻孔の穴の真ん中に柱。ハイタカはヒゲがあるけど、チョウゲンボウはない。ハイタカは小顔だけど、チョウゲンボウは割と普通。ハイタカは鷹斑模様だけど、チョウゲンボウは鷹斑の真ん中が膨らみ気味。チョウゲンボウの羽根は、羽軸沿いに斑があることが多い。
●2026年1月24日 オナガ、シロハラ、ミソサザイ
なにわホネホネ団の鳥の日。今年度の鳥剥き15日目の33種35羽目(内、動物園物はなし)。
・オナガ(OMNH A10657:2025年8月、埼玉県春日部市産)
頭霜降りで、あちこち幼羽だらけのオス幼鳥。初めて剥くのでテンション高め。外側ほど短くなる尾羽をたたんだところが格好いい。中央尾羽はR4くらいに短い。尾羽を広げると、扇形で真ん中が凹んでるに違いない。初列風切の根元に下からだけ見える白斑がある。皮や筋が硬め。
・シロハラ(OMNH A10652:2015年11月、大阪府千早赤阪村産)
オナガと同じサイズ感だけど、皮の厚さも肉の硬さも全然違う。
・ミソサザイ(OMNH A10654:2016年4-8月、大阪府千早赤阪村産)
脚や翼や頭はひからび、傷んでもいる。きれいな皮剥きは最初から諦めて、開き前提で剥き始める。が、最初から羽根が抜ける。それでもなんとか胴体取り出し。尻尾と左半身が痛んでて、右側から剥く感じ。頭は濡らしながらなら剥けた。が、舌はとれず。脳はすでに干からびて空洞だった。仮剥製っぽいものはできた。
●2026年1月12日 ミヤマガラス、コジュケイ
今日もはくぶつかんたんけん隊で鳥の皮剥き。今年度の鳥剥き14日目の30種32羽目(内、動物園物はなし)。
・ミヤマガラス(OMNH A8740:2020年12月、佐賀県佐賀市産)
研究した後の死体を引き取ったものなので、内臓がすべて抜かれている。そして腹がすでに切り開かれている。やむなくその開口部から剥いていく。いつもと手順が違うので剥きにくい
ダウンの色は、ハシボソガラスほどではないけど、白っぽい。口の中はまあまあ黒い。1本だけ鼻羽が残ってる。額の羽毛は逆立つようになってて面白い。剥いてみると、背面全体が青の構造色で、とても綺麗な鳥。ハジラミ付き
。
・コジュケイ(OMNH A10640:2025年5月、大阪府千早赤阪村産)
オス。精巣が大きいので成鳥かと思ったけど、SOがはっきりA。季節から言えば成鳥だと思うけど、そういうことあるのかなぁ。
●2026年1月11日 チュウサギ、アカショウビン
はくぶつかんたんけん隊で鳥の皮剥き。今年度の鳥剥き13日目の29種30羽目(内、動物園物はなし)。
・チュウサギ(OMNH A8947:2024年12月、兵庫県尼崎市産)
胸から腹の皮が無く、胸肉が一部食われている。たぶん猛禽が狩った獲物を横取りしてきたんだろう。それ以外は状態がいい。のだけど、右脚と首の付け根にもキズ。状態がいいのか悪いのか。まっ白なのに一部血で汚れてる。洗っても落ちないだろうなぁ。
・アカショウビン(OMNH A10639:2025年8月、滋賀県高島市産)
メスの幼鳥。残念ながら尾羽も上下尾筒もない。鞘羽根が多いせいか、羽根がやたら抜ける。小さいくせに皮は丈夫で、肉も堅い。そして肩が背中寄り。ってことで、最初で手間取る。おかげで開口部が拡がった。残念。