大都市大阪に住んでいても、私たちは自然と離れて生きていくことは出来ません。人類とその文化は自然の影響を受け、同時に自然にも影響を与えながら育まれてきたのです。わたしたちがさまざまな環境問題を乗り越え自然と共存していくためには、そして自然を楽しみながら豊かに生きるためにも、子どもでも大人でも、私たちには自然を理解し、おどろき、その美しさに触れる体験が何よりも必要です。
大阪市立自然史博物館は、展示や観察会などの教育普及活動を行なって市民のみなさんに自然を知り学んでもらうためのきっかけを提供し、自然と人間の調和した未来をともに追求していくための施設です。そして学芸員はこのために絶えず自然について調べ、資料を集め、保管し、その成果を展示・教育普及活動を通じて市民に還元しています。
大阪市立自然史博物館は過去50年以上にわたり、このような目的意識を核に市民とともに活動をしてきました。そして子どもたちの理科離れが進み高齢化社会を背景とした自然志向が高まる今日、自然に触れ、自然環境をみつめ探究心を高めることがこれまで以上に必要とされており、このために自然史博物館は市民のみなさんによりわかりやすく、興味のわく展示を実現するとともに、教育普及活動を充実させていく必要があります。このような展望のもとで、このたび新たなミッション(使命書)と中期的な目標を作成しました。今後、自然史博物館が創り出す新たな活動にご期待ください。
〔ミッション1〕
大阪の「自然の情報拠点」として自然史博物館の機能を発展させていきます
多くの市民が大阪の自然を知る・学ぶことができる場所として博物館の活動を強化していきます。また、自ら大阪の自然環境について情報を集め、研究し、提供していくとともに、人々が自然に関する情報・標本を持ち寄り集積する場所として充実させます。また長居植物園内に立地するという条件をいかして、自然を愛し、自然に興味を持つ人々が集い交流する場所として博物館を活性化させていきます。
(中期的目標)
- よりわかりやすく、自然を多面的に理解できる展示を実現し、長居植物園と連携しつつ情報提供能力の向上を図ります。
- 市民生活に密接に関係する都市の自然に関する基礎情報を、正確にわかりやすく発信します。さらに住みよい街作りに活かすための提言もしていきます。
- オリジナルな情報発信のために収蔵資料の充実、研究の促進、研究成果の公開を進めます。とくに大阪の自然をグローバルな視点から捉えその特色を研究に基づいて発信します。
〔ミッション2〕
社会教育施設として、人々の知的好奇心を刺激し、見つめる学習の援助を行います
自然を見つめることは、自然を理解し保全していく上で大切な一歩です。多くの市民が自然に興味を持ち、自然のたいせつさ、命のたいせつさを感じ取れるよう、学習や自主的活動を援助します。また学校教育と連動した事業も展開し、子どもの科学的探究心や豊かな情操を育てます。
(中期的目標)
- 来館者向けの相談活動・学習支援を充実し、市民の疑問や好奇心に積極的な対応を進めます。
- 魅力のある友の会事業、ボランティア事業などを展開し、大阪自然史センターと連携して博物館を囲む人々の輪を広げていきます。
- 遠足利用者の展示見学体験を改善します。また、学芸員による教育プログラム、教師向け研修など学校教育支援を進めていきます。
- 近隣地域の子供や高齢者が安心して楽しく学び、成長する場とします。
〔ミッション3〕
地域との連携を促進してより広範な市民との交流に努めます
博物館活動のパートナーとなるNPOやアマチュアを大切にし、自然愛好家の層を厚くしていきます。
(中期的目標)
- 学校・地域との連携事業など市民との交流をNPOと協働して進めます。
- アマチュア研究活動や、地域での自然体験活動を支援します。このために博物館も地域で実施する観察会を充実させます。
- 地域の文化財行政・自然保護行政に積極的に貢献します。
〔ミッション4〕
他の機関との連携を進め、ノウハウの交流に努めます。
広域のネットワークや学術連携、協働でのプロモーションにより、より高度な博物館活動を目指します。
(中期的目標)
- 西日本自然史系博物館ネットワークを中心とした他の博物館との連携・交流や共同事業を強めます。
- 研究・教育において大学など高等教育機関との連携を進めます。
- 大阪市の博物館群や長居植物園などとの連携を進めます。
〔ミッション5〕
魅力ある効率的な博物館づくりをめざします。
(中期的目標)
- 厳しい行財政のもと、組織を見直し、経営努力を図ります。
- 行事評価や来館者調査を積極的に進め、利用者のニーズを的確に把握し、より良い博物館づくりに活かしていきます。また、NPOとの協議会などを含め、市民とのパートナーシップを積極的に取り入れることによって博物館としての活動の領域を拡大していきます。
- 広報・プロモーションを充実させ、魅力あるイベントを積極的に開催することによって博物館を利用する人々の増加を図ります。