ミニ展示「植物の標本を使って研究する」 令和6年8月は今津浜の植物の研究を紹介します
令和6年6月1日(土)~令和7年6月1日(日)の間、大阪市立自然史博物館 本館1階にて、博物館の植物標本室が所蔵する研究に利用された標本を、月替わりで紹介するミニ展示を開催します。
第3回となる令和6年8月は、阪口・大谷(2020)による、津波対策のために水没する兵庫県西宮市の今津浜の植物を調べた研究を紹介します。今津浜は1996年に形成されたと考えられる大阪湾湾奥の小さな砂浜です。津波対策のための水門が建設中で、これが完成すると、今津浜は水没してなくなってしまいます。阪口さんと大谷さんは、15年にわたる今津浜の植物の観察記録をまとめ、2018-2019年にかけて今津浜に生育している植物をすべて標本にしました。調査の結果、2018-2019年の調査で72種類の草本植物が確認されました。この中にはハマヒルガオ、ハマエンドウ、ハマダイコンといった海浜植物が含まれており、大阪湾の潮流と直接的に接触しない今津浜であっても海浜植物の種子が海流散布されてきたことが示されました。開発が進んだ大阪湾湾奥では、小さな砂浜であっても海辺の生き物の貴重なすみ場所となっています。津波対策のために水没する今津浜の植物相とその変遷を記録したこの論文と、自然史博物館に寄贈された99点の標本は、都市部における海浜環境の保全の基礎資料になります。
8月に紹介する研究:阪口正樹,大谷祥子 2020. 今津浜(西宮市今津西浜町)の現植生と植生の変遷.地域自然史と保全 42(2):85-94.
ミニ展示の概要については過去のWhat‘s new『ミニ展示「植物の標本を使って研究する」を開催します』(https://omnh.jp/archives/11362)をご覧ください。
※なるべく月替わりで展示を入れ替えますが、担当者の都合で入れ替えが数日前後することがあります。ご了承ください。
2024年8月に紹介する今津浜で採られた標本。左:ハマヒルガオ。右:ハマエンドウ。植物相調査の証拠として標本が残されることで、将来にわたって様々な検証が可能になる。
本展示に関する問合せ:植物研究室・横川