ミニ展示「植物の標本を使って研究する」 令和6年12月はヒツジグサとエゾベニヒツジグサの分布境界に関する論文を紹介します
大阪市立自然史博物館では、所蔵する植物標本を使った研究を月替わりで紹介するミニ展示を開催中です。本展示は、令和6年6月1日(土)から令和7年6月1日(日)まで、本館1階ナウマンホールにてご覧いただけます。第7回となる令和6年12月の展示では、Naito & Shiga(2024)による、水生植物ヒツジグサとエゾベニヒツジグサの分布境界に関する研究を紹介します。
ヒツジグサとエゾベニヒツジグサはスイレン科の水生植物です。ヒツジグサは日本国内では北海道から沖縄まで分布するのに対して、エゾベニヒツジグサは北海道の東部と北部に分布が限られています。新潟大学の内藤さんと志賀さんは、北海道内でのこれら2 種の分布境界に興味を持ち、新潟大学、北海道大学総合博物館、国立科学博物館、大阪市立自然史博物館の植物標本室の標本を再同定してこれら2 種の正確な分布図を作成しました。 その結果、ヒツジグサとエゾベニヒツジグサの明瞭な分布境界が石狩平野にあり、石狩平野より西にヒツジグサが、石狩平野より東にエゾベニヒツジグサが分布することがわかりました。
標本の再同定を通じて、正確な分布図を作成したのは本研究の大きな成果です。今回紹介した論文では、大阪市立自然史博物館が所蔵するヒツジグサとエゾベニヒツジグサの標本が23点引用されており、三木茂コレクションを筆頭に水生植物の標本が充実した当館の植物標本室の特性が活かされています。
12月に紹介する研究: Naito H., Shiga T. 2024. Distribution of Nymphaea pygmaea and N. tetragona (Nymphaeaceae) in Hokkaido, Sakhalin Island, and the Kuril Islands based on herbarium specimen records. Journal of Asia-Pacific Biodiversity 17(1):81-86.
論文のリンク:https://doi.org/10.1016/j.japb.2023.10.010
ミニ展示の概要については過去のWhat‘s new『ミニ展示「植物の標本を使って研究する」を開催します』(https://omnh.jp/archives/11362)をご覧ください。
※なるべく月替わりで展示を入れ替えますが、担当者の都合で入れ替えが数日前後することがあります。ご了承ください。
2024年12月に紹介するヒツジグサとエゾベニヒツジグサの研究紹介の展示の様子。論文で引用されているヒツジグサ(左)とエゾベニヒツジグサ(右)の標本を展示し、論文に掲載された写真や分布図も添えて、研究成果を紹介しています。
本展示に関する問合せ:植物研究室・横川