ミニ展示「植物の標本を使って研究する」 令和6年9月はカキノハグサの生育立地特性の研究を紹介します

 令和6年6月1日(土)~令和7年6月1日(日)の間、大阪市立自然史博物館 本館1階ナウマンホールにて、博物館が所蔵する植物標本を使った研究を月替わりで紹介するミニ展示を開催中です。
 第4回となる令和6年9月は、黒田・小舘(2019)による、カキノハグサの生育立地特性の研究を紹介します。カキノハグサは近畿および東海地方に生育する日本固有の多年草です。兵庫県立人と自然の博物館の田有寿茂さんと小舘誓治さんは、カキノハグサが生育する場所の立地特性を明らかにするため、野外で植生調査・土壌調査を行いましたが、合わせて各地の標本室に収蔵されているカキノハグサの標本のラベル情報を調べました。標本ラベルに書かれた生育環境に関する記述をチェックし、野外調査の結果と合わせて検討することでカキノハグサの生育立地特性を評価しています。また、標本が採集された場所と標高の情報から、カキノハグサが分布する範囲の気候的な特性も検討しています。黒田さんたちのカキノハグサの研究は、標本の採集地やラベルに書かれた情報をうまく活用ことで、より多角的に植物の生育環境を評価できることを示しています。

9月に紹介する研究:田有寿茂・小舘誓治 2019. 兵庫県南東部のアカマツ・コナラ二次林におけるカキノハグサの生育立地特性.植生学会誌 36(1):1-16.
論文のリンク:https://doi.org/10.15031/vegsci.36.1

ミニ展示の概要については過去のWhat‘s new『ミニ展示「植物の標本を使って研究する」を開催します』(https://omnh.jp/archives/11362)をご覧ください。


※なるべく月替わりで展示を入れ替えますが、担当者の都合で入れ替えが数日前後することがあります。ご了承ください。

2024年9月に紹介するカキノハグサの標本と野外に生える様子。

A:展示するカキノハグサの標本。B:Aのラベルの拡大写真。「明るい二次林林床」という採集地の生育環境についてのメモがある。こういった現地で観察した情報をラベルに残すことも将来の研究に繋がる。C:野外に生えるカキノハグサの様子。

(自生地保全の観点からAとBの標本ラベルの採集地点の詳細はぼかしてある。)

本展示に関する問合せ:植物研究室・横川