<プレスリリース>半世紀ぶりに明らかになったクジラの正体―大阪の地下に眠っていた骨は、縄文時代のカツオクジラだった―

 このたび、大阪市立自然史博物館が取り組んだ「大阪市の完新統(第四紀)から発見されたカツオクジラ」と題した研究論文が、米英の古生物学の学術誌「Palaeontologia Electronica(パレオントロジア・エレクトロニカ)」(2017年10月17日出版)に掲載されました。
 この論文は、ミンククジラとされていた化石を再調査し、カツオクジラであることを明らかにし、まとめたものであり、当館所蔵のクジラ化石の調査による国際的な研究成果です。
研究に使用した標本は、平成29年11月23日(木祝)から大阪市立自然史博物館・第2展示室の常設展示として展示します。


【研究について】
◆概要◆
 1966年、大阪市東成区の地下鉄今里駅周辺の工事中に、地下14メートルの深さから、クジラの骨が発見されました。当時の新聞は「骨がでてきた」「人骨か」「すわ!一大事」「警察官がかけつけて・・・」「ひやっとした」などと書き立てました。当時の大阪市立自然史博物館館長の千地万造(故人)は、「クジラの骨である」とインタビューに答えています。
 その後、1976年に鯨類研究所の大村秀雄博士(故人)によって、「ミンククジラである」と論文で発表されました。
 2017年4月に鯨類化石を専門とする田中嘉寛が大阪市立自然史博物館の学芸員として着任し、元大阪市立自然史博物館学芸員で、現在は同館外来研究員である樽野博幸と共同研究を始め、2000年代に深まったヒゲクジラ類の形態の知見に基づいて、1966年に大阪市東成区で発見された化石の再検討を行いました。その結果、クチバシ(吻部)や頭にある骨の形から、この化石がミンククジラではなく、カツオクジラであると明らかになり、その成果をまとめた論文を国際誌に投稿しました。
 カツオクジラもミンククジラもヒゲクジラの仲間で、カツオクジラはミンククジラよりも稀な種です。日本国内では、生きていたカツオクジラについては過去に12例の報告があり、そのうち6例のみが骨標本として国立科学博物館など国内の研究機関等で保存されています。今回研究したカツオクジラは、化石としては世界で初めての発見です。生きているカツオクジラの発見記録が増えることで、カツオクジラがどこからどこまでのエリアで生きているのか、分布情報を明らかにできます。そして今回のように化石が見つかっていけば、いつからどこにいたのか、という過去の分布も明らかになっていきます。化石によって時間軸も考えることができるようになるのです。本研究のような研究の積み重ねによって、進化や絶滅といった大きな研究テーマにせまることができます。本研究はそのための大切な一歩です。
◆意義◆
 大阪市東成区からクジラが発掘されてから半世紀が経っています。博物館は資料を後世に保存していくことが重要な仕事の一つです。今回の研究は、収蔵されていた標本を時代を越えて研究し、新しい知見をもたらした一例です。
 また、国際誌で研究成果が公開されたことで世界の研究者が本研究のことを知り、将来世界で行われていく自然史研究に大阪のクジラ化石が組み込まれていくことも予想されます。世界で紹介され、比較されることで、このクジラ化石の学術的価値が高まり、当館の収蔵標本の価値も高まります。
◆今後◆
 今回の研究に使用した標本は、平成29年11月23日(木祝)から大阪市立自然史博物館の常設展・第2展示室に追加展示します。大都市大阪が、かつてはクジラが泳ぐ海であった証拠を広く市民の皆さんに見て頂き、大阪の太古に思いを馳せて頂きたいと考えています。
大阪平野の地下からは、地下鉄工事の際に、他にもいくつかのクジラ化石が見つかっています。大都市大阪の地下に眠っているクジラの種類を明らかにし、太古の大阪湾にどのようなクジラが泳いでいたのかを明らかにしたいと考えています。

図1:本研究で扱った大阪の地下から出てきたカツオクジラの化石(頭骨)(本研究で発表した論文Tanaka and Taruno, 2017より改変).jpg
本研究で扱った大阪の地下から出てきたカツオクジラの化石(頭骨)。
(本研究で発表した論文Tanaka and Taruno, 2017より改変)
図2:化石産地の地図。水色で示されているのは完新世に平野に入り込んでいた海。(本研究で発表した論文Tanaka and Taruno, 2017より改変).jpg
化石産地の地図。水色で示されているのは完新世に平野に入り込んでいた海。
(本研究で発表した論文Tanaka and Taruno, 2017より改変)
図3今回の研究で明らかになったカツオクジラ。.JPG
図3:今回の研究で明らかになったカツオクジラ。
(中央の赤いボードに乗っている標本)

プレスリリース

論文の情報

※本論文はクリエイティブコモンズ・継承・商業利用不可です(CC BY-NC-SA 4.0)。

  • 著者 田中嘉寛(大阪市立自然史博物館 学芸員)・樽野博幸(大阪市立自然史博物館 元学芸員・現外来研究員)
  • 出版年 2017年10月17日
  • タイトル Balaenoptera edeni skull from the Holocene (Quaternary) of Osaka City, Japan(大阪市の完新統(第四紀)から発見されたカツオクジラ)
  • 学術誌 Palaeontologia Electronica (パレオントロジア・エレクトロニカ)
  • 論文の番号 20.3.50A
  • webページ http://palaeo-electronica.org/content/2017/2025-a-japanese-holocene-whale
  • pdf版はここからダウンロードできます:http://palaeo-electronica.org/content/pdfs/785.pdf